第1章-23 異世界の空気は美味しい気がする
「ミラン姉さんのスキル?」
僕が勘違いしているだろうと、ミラン姉さんが背中に乗せると言ったことの真意を教えてくれた。
「そう、アタシのスキルに獣化ってのがあってね。
獣人の中でも極稀に発現するものらしい。
アタシは先祖に獣人がいて、その先祖返りが強く出たんだとかなんとか」
「感情が昂ぶると耳とか尻尾が出てますもんね~」
「余計なことを言うなシャリア」
これだけ強烈なキャラクターとしての戦闘力を持ちながら、まさかの獣耳属性までお持ちの方だったとは。
それにしても獣人か……。
いつかは色々な種族にも会ってみたいかも。
あっ、違うよ?
別に異世界で奴隷の獣人を集めてキャッキャウフフしたいとかじゃないからね?
なおこの言い訳は、先ほどからこちらに「私は全て分かって(理解して的な)おりますよ獣耳いいですよね」な視線を向けてくるシャリアさんに対してのものだ。
「話を戻しますが、彼女の協力があれば帝国までの移動時間と手段は解決です。
問題があるとすれば、あの腐れ外道勇者についてですね」
子鹿勇者のことだと思われる話が出ると、先ほどまでの明るかった空気が一変してピリピリと緊張感が伝わってきた。
聞き流しそうになったが、セレスさんの中では勇者は腐れ外道で確定しているようだ。
ロリコンで変態で誘拐犯……か。
おっと、これは腐れ外道で間違い無いですな。
しかし僕達三人はともかく、ミラン姉さんもかなり苛ついている。
「……ん? アタシが怒ってるのが気になるかい?」
チラッと見たことで何を言いたいのか察したようだ。
「あの子達とは幼い頃からの付き合いだからね。
慕ってくれたし、アタシも妹みたいには思ってるのさ」
「そうなんですね……」
皆に大事に思われているシャルとエリーをみすみす目の前で拐われたことが悔しくてたまらない。
「そんな顔をすんな、アーサー。
これから二人を取り戻しに行くんだろう?
アタシも協力を惜しまない。
だから大丈夫さ、な?」
「ぐすっ……ミラン姉さん」
かっけー!
この人かっけーよ、正にこの人こそ姉御だよ!
「ななな泣くな! そういうのは苦手なんだよ!」
姉御の言葉に二人が拐われた時の不甲斐なさを思い出して泣きそうになった。
そんな僕を見てオロオロとしながらミラン姉さんは僕の頭を強めに撫でてくれた。
「ミランさん……実は歳下好きだったんですね。
成人ばかりの冒険者達からいくらアプローチされてもなびかないわけです」
「……お嬢様達になんと報告するべきか。
そして私は執事として誰を応援したらいいと思います?」
「お前ら空気読めよ!?」
異世界でも空気を読む必要があるらしい。
そういえば異世界の空気は澄んでいて美味しいな。
異世界の空気缶詰として売り出したら秋葉原あたりで売れないだろうか。
『異世界ワイルド系クールビューティ獣人お姉さんが慰めてくれた時の周囲の空気』に変えたらもっと缶詰が売れそうだなと思ったのは内緒だ。
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