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第1章-22 姉御の帰還

 メイドさんに連れられて入ってきたのは、腰までの赤髪を少しゆるふわな三つ編みに結んで肩に流している大人のお姉さん。


 室内にいるからか武器は持っていないが、狩人とか傭兵とかそんな単語が似合うであろう強そうなクール系美人だった。


 近所に住んでいたら姉御とか呼んでしまうかもしれない。


「えぇ、最高レベルの非常事態でしたので。

……あなたがたまたま戻って来ている時で助かりましたよ」


「最高レベルとは……何があった。

お嬢さん達が見当たらないが、まさか関係あるのかい?」


「実は……かくかくしかじかで」


 その言い回しって異世界にもあるんだ……。


 忍者の卵達が勉強する学園の漫画でしか見たことが無い気がする。


「なっ、これこれうまうまだって!?

……それで二人ともいないのか」


 その返しする人初めて見た!


 そう、実は『かくかくしかじか』に対しての答えは『これこれうまうま』らしいよ。本当なのかな?


「なるほど、じゃあこの坊やを帝国まで連れて行けばいいんだね?」


「そうです。あなたなら可能ですよね?」


「そうだね、一日もあれば十分だよ。だが……」


 お姉さんがチラッとこちらを見た。

 

 そういえばまだお互いに名乗ってなかったんでした。


 ワイルド系の美人お姉さんに挨拶するのは緊張するけど、がんばるぞ!


「初めまして、僕はあさ……アーサーです」


 僕の名前を聞いた後に一瞬考える素振りを見せてから口を開く美人お姉さん。


「アサアーサーか、アタシはミランだ」


「いえ、アサアーサーではなくアーサーです。えっと、ミランダさん?」


「アーサーか。アタシはミランダじゃない。ミランだ、ミラン」


「えっと……ランダミランさん?」


「誰だそれは」


 なんだかややこしくなってきたが、とりあえず僕がアーサーというのには納得してくれたようだ。


 そして彼女はラにアクセントが付くミランダではなく、ミにアクセントが付くミランというのが名前みたい。


 でもこの人の雰囲気的には、なんとなく姉御って呼んじゃいそうだからなぁ……。


「ミラン姉さんでいいですか?」


「ふぐっ!?」


「フグ……?」


 高級魚の名前を急に叫んでどうしたのだろうか。


 そしてどうしてセレスさんとシャリアさんを呼んで円陣みたいなのを始めるの?



「(おい、なんだあの坊やは。なぜだか無性に撫で回したくなるんだが)」


「(わかります、私もギュッとしてあげたくなるんですよね。自分だけ姉さん呼びはずるいです。私もシャリアお姉ちゃんと呼ばれたいです)」


「(あんたの場合お姉ちゃんじゃなくて)」


「(……何か?)」


「(いや、別に)」


「(ちょっとお二人とも、彼はお嬢様達のお気に入りですよ。誘惑は避けてくださいね)」


「(ゆうわっ!? そんなことするか!?)」


「(う〜ん、お嬢様達が許していただけるなら私も考えるかもです)」


「(シャリア!?)」



「あの……どうかしましたか?」


 円陣を組むようにして何かを相談している三人に声をかけてみた。


 すると、女性陣に背中を押される形でセレスさんが前に出て気まずそうにしている。


「ごほん、失礼しました。改めて、彼女はミラン。先代侯爵様の頃から付き合いのある冒険者です」


「冒険者! ……もしかしてそれは依頼を受けて色んな仕事をこなすっていうやつですかセレスさん!」


「そ、その通りです」


 異世界で冒険者といえば、必ずと言っていいほど出てくるパワーワードの1つ。


 自由に生きていく象徴のようなものだ!


 僕も異世界に来たからにはなりたいと思っていた職業の筆頭でもある。


 ちなみに次点は魔法学校の学生ね。そういう学校あるといいなぁ……。


 ほえーと憧れの眼差しでミラン姉さんを見つめる。


「……そんなにアタシを見るな」


「あっ、ごめんなさい! 冒険者に憧れていたのでつい」


「憧れ……アタシに?」


「はい。(ミラン姉さんにというか)冒険者の自由な生き方はかっこいいなと思います」


「……そうか……かっこいいのか……(にへへ)」


 ミラン姉さんが照れた様子になりながらちょっとだけ笑っている。


 クールな第一印象とのギャップから少し可愛く見えた。


 「それで、どうやって遠い帝国まで一日で行けるんですか?」


 そろそろ本題に入ろうと話を戻すと、ミラン姉さんはクールな表情に戻った。


 逆に、珍しいものが見られたと言わんばかりに他の二人がニヤニヤしている。


「あぁ、アタシの背中に乗せてやればすぐさ」


「ミラン姉さんの……背中」


 僕がワイルド&クール系美人お姉さんの背中に乗る?


 それなんてラブコメ?


 背中と言われて、ミラン姉さんの服装をじっと見る。


 動きやすさを重視しているのか、全体的に布地は少なめ。


 腕は半袖より少し短めで、胸元はけっこう開いてるから大きめのあれが谷間を作っているのがはっきり見えてしまっている。


 腰巻きみたいなパレオみたいな物をしているので膝くらいまでは隠れているものの、こちらも動きやすいようにかスリットは大きめ。


 そして肝心の背中は……半分以上露出している。


「こういうのはもう少しお互いをよく知ってからがよいのではないかと思うのですがいや別にミラン姉さんの背中がイヤとかむしろいい匂いがしそうで緊張するとかご褒美ありがとうございますという気持ちのほうが強いと言えなくもないこともなく」


 混乱してよく分からないことを早口で口走ってしまった。


 既に僕のライフは半分を切った。


「ふふふ、ミランさんの格好はアーサー様にはまだ刺激が強かったですよね」


「たしかに彼女の格好は目のやり場に困るかもしれません」


 シャリアさんとセレスさんが追い打ちをかけてくる。


 温かい目でこちらを見るの止めて!?


 僕のライフは残り二割だ。


「なんか誤解があるようだが、そこまで言うならこのままアタシの背中に乗るか?」


 僕がどこまで何を言ってしまったのか分からないけどもう止めて!


 僕のライフはもうゼロよ!



少しでも面白い、これなら続きを読んでやってもいいかなと思われた方はポチっとポイントをいただけるととんでもないくらい励みになります!

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