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第1章-21 有能は度が過ぎるとホラーになりかねない

 子鹿勇者達の襲撃後、僕達はすぐに屋敷へと戻って来た。


 もちろん今後の対策について話し合いをするためだ。


 場所は毎度おなじみの部屋でするらしい。もう食堂って呼んでいいかな。


 食堂へ向かう廊下を歩きながら、僕は気になっていたことがあるので隣を歩くセレスさんに先に聞いてみることにした。


 なおシャリアさんは僕らの後ろをわざとなのか少し遅れながら歩いている。


「ちなみに……国を頼ることは出来るんでしょうか?」


 そう聞くと、セレスさんは非常に言いにくそうにしながら口を開いた。


「それは……難しいかと。

屋敷へ戻る前に陛下へ状況の報せを送ってはあります。

しかし、最悪の腐れ外道とはいえ相手は勇者と帝国。

お嬢様達が政略結婚として勇者に嫁ぐか国同士の戦争かであれば、おそらく選ばれるのは……」


 さり気なく腐れ外道に降格している勇者であった。


「そう……ですか」


 王としての判断というやつか。


 1を取るか99を取るか。 

 

 王なら数の多い方を取っても不思議ではないだろう。


 ……王としてなら正しいのかもしれないけど、その選択は僕には分からないし分かりたくもない。


「ですが……アーサー様のおかげで第三の選択肢が生まれました」


「えっ」


「腐れ外道勇者は近隣国からの招待客を呼ぶ式の余興にアーサー様と決闘するつもりだと言っていました。

これは、アーサー様が勝てば腐れ外道勇者と帝国の面子を潰すことが出来る上に、近隣国へお嬢様達は被害者であり勇者が危険な思考の持ち主であると訴えることも可能なはず。

決闘に負けた腐れ外道勇者がやはり戦争だと訴えても、衆人環視の前での決闘で負けた腐れ外道勇者の勝手を近隣国は許さないでしょう」


「なるほど。僕が勝てば……ですね」


「はい。責任を押し付けてしまい申し訳ありませんが……どうかよろしくお願い致します」


「……はい。必ず二人を取り戻してみせます」


 僕の答えに満足したのか、セレスさんは柔らかい笑みを浮かべた。


 そんな話をしていたらそろそろ食堂だ。


 中に入ると、ついさっきまで後ろにいたはずのシャリアさんが既にいてテーブルに紅茶とお菓子を用意していた。


 しかも壊れたはずの部屋がほとんど元に戻っている。


 もう驚かないよ。


 ちなみに破片とか瓦礫をどうしたかというと、アイテムボックスを使ったんだ。


 シャリアさんと壊された食堂でひどい惨状の片付けをどうするか話をしている時にツアー本が開いたんだよね。


『6ページ』


 アイテムボックス


 これは荷物を持ちきれなくて困る時に使うと最高なんだよ。


 試しに使ってみたら空間が歪んで穴が現れて、その穴に食堂の中にある物を瓦礫や破片以外にも家具やらカーテンなんかも全て収納された。


 シャリアさんにアイテムボックスのことを話したらめちゃくちゃ驚かれたけど、テーブルとか椅子も破片が当たっていたら危険だからそのまま収納しておいて欲しいってことで預かることになったんだ。


 だから食堂はガランと何も置かれていない状況だったはずなんだけど、何故かこうして戻ってきたら家具とか窓とか最初と同じになってるんだよ?


 模様替えしたいと思っておりましたのでちょうどよかったですとかシャリアさんは言ってたけど。


 ……もはやシャリアさんの有能ぶりはホラーの領域では?


 促されるまま最初に来た時と同じ席に着く。セレスさんは少し離れた席に座った。シャリアさんは座る気はないのか僕の横に来て紅茶を淹れていく。


 なんか落ち着かないけど、とにかく話し合いの開始だ。


「早速ですが、まずは帝国への行き方を教えてもらえますか?」


 シャリアさんは紅茶を淹れ終わったのに何故か僕の横に控える形になっているので、視線の合う位置に座るセレスさんに聞くことにした。


「そうですね、通常の行き方で帝国へ行こうとしたら早くても馬車で八日といったところです」


「えっ、それならこんなのんびりしている時間は無いじゃないですか!」


「セレスさん、それではアーサー様が焦るのも当然ですよ。

あの方に協力していただくんですよね?」


「あの方?」


 慌てた僕をなだめるように、シャリアさんが紅茶を淹れてくれた。


 紅茶から漂う良い香りに、なんとなく心がスッキリしていくような気がする。


「前置きとしてお伝えしたのですが、かえって混乱させてしまったようで申し訳ありません。

もう一つの移動手段として、実は……」


 話の途中で、食堂のドアがこんこんこんとノックされた。


 たしか二回ノックするのはトイレの時だった気がするけど、この世界ではそんなルールはあるのかなと唐突にどうでもいいことを考えてしまった。


「どうやら来たようですね。入ってください」


 セレスさんが返事をすると、メイドさんの1人が見覚えのない人を連れて入ってきた。


「久しいな、セレス。急にアタシを呼ぶとは、何かトラブルでもあったのかい?」


 部屋に入って来たのは、日本ではお目にかかれないレベルのすごい美人さん。



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