表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/33

第1章-2 左右から何かが来てる

 目が覚めた時、僕はだだっ広い平原の草むらに大の字で寝ていた。


 中や小の字で寝るのは一人では物理的に不可能だからだ。他に出来るとしたら上向きの矢印の形くらいだろう。


 そんなことよりなんだかさっきから呼吸が苦しい。まさかこんなよくわからない所で死んでしまうのだろうか……。


 こんなことならクラスで前の席に座っている風紀委員の山中さんに、ポニーテールがいつも僕の鼻の辺りをユラユラしていてたまにくしゃみが出るんですけどなんとかなりませんかとハッキリ伝えておけばよかった。


「……あっ、苦しいと思ったらさっきの分厚い本がお腹の上にあったのか」


 重いわけだよと、ツアー本とやらを両手でどかして起き上がる。


 どうやら風紀委員の山中さんに伝えておかなくても大丈夫だったようだ。危うくポニーテールビンタを喰らうところだった。ポニーテールビンタがどんなものかはよく知らないが、おそらく叩かれたらビターンとかではなくピシャッという効果音が出るのだろう。


 さて、と声を出しながら立ち上がって周りをキョロキョロと見回すと確かにここは異世界なんだなと感じる風景が広がっていた。


 右を見るといわゆるゲヘヘという声が似合いそうな盗賊のような集団に襲われている高級そうな馬車が走っており、左を見るといわゆるギャヒヒという声が似合いそうなモンスターとしか言い様のない角の生えた猿みたいな集団に襲われている同じく高級そうな馬車が走っているので、ここが地球ではないことは一目瞭然だった。


 ……にしてもさ、こういうのは仮に遭遇するとしても最初は普通どっちか片方なんじゃないのかなぁ。


 なんとかしてあげたいけど、そもそも一般人の僕にあんな連中の相手が出来るとは思えない。こっそり逃げたらダメかな?


 代わりに助けを呼んでくるようにするから。


「そこの少年、危ないから逃げるんだ!」


「そこのキミ、危ないから逃げなさい!」


 あっ、はい、出来ればこっそり逃げたいなぁと思ってました!


 それぞれの馬車の御者をしている男女がほぼ同時に僕に気付いたようで、ほぼ同時に僕に向かって逃げるように叫んだ。


 ……その声に反応した盗賊と角猿(と仮に呼ぶ)が半数ずつくらいこっちに来るんですけど。

 

 あれ、これはまさかわざとなのかな?


 あの2人に押し付けられてないよね?


「小僧、お前も仲間だな!」


 人違いです!


「ウキキンウッキー!(ちょっとあんたいい雄じゃない!)」


 種族違いです!


 右から来る盗賊達には馬車の仲間だと何故か思われ、左から来る角猿達には欲情した視線を何故か向けられている。


(ど、どうする……? まともに喧嘩なんてしたことないし、格闘技なんかも経験がない。武器だって何も持っては……あっ!)


 ふと手元を見ると、羽毛さんからもらったツアー本と羽毛さんからむしりとった羽毛が数枚あった。


 何度も羽毛羽毛言っていると牛かな?と思われてしまわないだろうか。思わないか。ウモー。


「羽毛か……さすがにこれでは無理じゃない?」


 迫り来る脅威に対して呟きはするも、もうすぐそこまで迫って来ている焦りと混乱から少しでも何かヒントがあることを祈りつつ「ええいままよ!」とツアー本を開く。


 役に立たなそうな羽毛さんの羽毛はポケットにしまっておいた。


 その時不思議なことが起こった。ちなみに、昔の黒い仮面の戦士のように怒りや悲しみでフォームチェンジしたわけではない。


 何のページとか意識したわけではないのだが何故だかこのページを開いたほうがいいのではないかという意識がはたらき、僕の手が勝手にツアー本の25ページを開いていたのだ。


「異世界に来たらいきなり襲われている馬車と出会った時の対処法……?」


 なんというピンポイントな内容なんだ!

 こういう状況は渋谷で待ち合わせるならハチ公前にするくらい異世界ではよくあることなのかもしれない。


 なになに、「助けると1/2の確率で良い出会いがあります」。


 えっ、今回の場合同時に来てるから、どっちかは良くない出会いなのかな!?


 えっと続きは……右手か左手を開いた状態で襲っている対象に向け、「バインドアーム」と叫ぶのがオススメ。


 どんな盗賊やモンスターも一網打尽です、やったね……だって?


 誰が喜んでいるのだろうか。


 左右同時に来ている場合は両手でやってもいいのかな。時間もないし、やるだけやってみよう!


 叫ぶの恥ずかしいけど。


「……(バインドアーム)」


 詠唱することに恥ずかしさを抱きながらも盗賊と角猿それぞれに左右の手の平を向けてボソッと叫んでみると、ビームみたいな光で出来ているかのような巨大な網が手の平から飛び出した。


 ちなみにツアー本は汚れたら困るかなと思い脚の間に挟んでいる。


 そこ、ちょっと遠目から見るとダサいとか言わないの。


「なにぃぃ!?」


「ウッキィ!?(なにこれ!?)」


 勢いよく走ってきていた盗賊達と角猿達はバインドアームによってなす術なく捕縛された。


 どうやら当たった対象を絡めとると自動でサイズを縮めて身動き出来なくしてしまうようだ。


 これならハリウッドに行ってリアル蜘蛛男として映画俳優デビューも夢では……いや、やっぱりそういうのはいいか。ビックリ人間として紹介されるのがオチだろうし。


少しでも面白い、これなら続きを読んでやってもいいかなと思われた方はポチっとポイントをいただけるととんでもないくらい励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ