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第1章-19 僕の人生の方程式にモテ期という文字はない……はず

 そうだ、ミニマムってめちゃくちゃ小さい的なやつだった。


 異世界道具っていうのが僕のいた世界の物を指すのなら、もしかしてスマホもいけるのかも。


「異世界道具召喚 ーミニマムー」


 シュオンと目の前に十センチくらいの穴が空いた。


 ちっさ。


 ……あっ、めちゃくちゃ小さい穴からなんか出てきた。


 これ僕以外には何をしているか分かりにくいし、この状況でなんて地味な絵面なんだと思ったのは僕だけだろうか。


「えっと、スマホが……出た。しかも部屋にあるはずの自分のやつだ」


 僕のスマホの裏には幕末に人斬りだった抜刀斎さんのような十字傷が付いているのですぐに分かった。


 これさえあれば……。


 僕はすぐさまスマホのカメラを起動して子鹿勇者を撮影した。


「おい、なんだそりゃあ」


 スマホを見ても驚かないどころか何か分かっていないってことは、もしかしたら子鹿は僕とは違い現代の日本人ではなかったのかも。


 なら好都合、ハッタリをかまし放題だ。


「これは僕の……魔道具さ。

空間を絵として切り取って保存することが出来るんだ。

こんなふうにね!」


 子鹿がぷるぷるしている様子を撮影した写真を見せた。


 これが科学の力だ!


 決して僕の力ではない!


 ……うん、自信満々に言うとちょっと虚しいね。


「なっ、その薄さでカメラだったのか!?

テメエ……そいつをよこせ!」


 カメラは知っているならスマホが出来るより前の時代の人かな?


「そんなぷるぷるしながら言われても嫌だよ」


 ついでに侯爵家の窓を割って押し入った様子とかも証拠として残しておこう。


「さぁ、この写真をばらまかれたくなければ僕との決闘を受けろ!」


「ちっ……」


 自分でやっておいてあれだけど、写真を撮って脅すってけっこうゲスなやり方なような……。


(アーサーすごい……。

けど、あの魔道具が知られたらこれから大変になるじゃない。

まったく、私がいないとダメだなんだから……しょうがないわねぇ)


(……駆け引き上手なアーサー……恐るべし)


 僕の所に駆け寄ったシャルとエリーが僕の腕に抱き着いてきた。

 

 二人とも……震えてる?


「あの……二人とも。なんかすごく距離感が近くない?」


 僕がそう言うと、シャルとエリーは花が咲いたようにニコッと笑った。


 いや待て、この例えだと笑うまでにめちゃくちゃ時間かけてることになりそうじゃない?


 花が一瞬で咲くわけないものね。


 う~ん、クシャミが出そうになった時に咄嗟に手で防ぐ速度でニコッと笑ったとかならいいか?


 うん、全然よくないことだけは分かるな。


「あら、だって私達は(婚約者として)大切な人なんでしょ?」


「……私もアーサーは(婚約者として)大切な人だから……これで合ってる」


「えっと、そうなの……かな?」


「「絶対そう!」」


 そうそう言いながら左右から更に二人が抱き着いてきた。


 ちょっと力が入りすぎて圧死しそうなんですけど……ぐぇぇ。


「アーサー……私達の為にあんまり自分を苦しめるような無茶はしないで」


「……アーサーが傷ついたら……悲しい」


 今まさに君達が苦しめて傷付けていることにどうか気付いてほしい。


「「あっ、ごめん(ね)」」


 顔色が青くなってきたところで気付いてくれたようだ。


 それにしてもシャルとエリーがすごくウルウルした瞳で僕を見つめているけど、これじゃまるで恋してるみたいじゃ……いやそんなはずないって。


 だって僕だよ?


 自慢じゃないけど、彼女いない歴=僕の人生=0になるExcelの二次関数みたいな方程式が成り立つのが僕だよ?


 たぶん子鹿への怒りやら悔しさとか、僕が子鹿にケンカを売ったから心配とか巻き込んで後悔してるとか色んな感情が混ざってるんだよ、きっと。


 僕は変な誤解とかはしない冷静な心の持ち主だからなんとか気付けたものの、他の人に対しては誤解される言い方だから止めておいたほうがいいと今度話しておこう。


 昔これでひどい目にあったことがあるからね。


 同じ失敗は繰り返さないように頑張るのが僕のモットーだ。


 ちなみにセレスさんとシャリアさんはといえば、「お嬢様……幸せになってくださいね」と謎の呟きをしつつ娘が嫁入りの挨拶に来た日の夜に昔を思い出しながらお酒を飲んで泣いているかのように目をウルウルとさせている。


「俺を無視して仲良く内緒話してんじゃねぇぇぇ!」


 多少回復したのか、すっかり存在を忘れられていた子鹿勇者が急に大声で叫ぶ。


 何この人、情緒不安定すぎない?


 さっきまでぷるぷる震えてたのに。


「ガキ!

アーサーとかいったな!

俺の嫁を乙女の顔にしやがって、絶対に許さん!」


「誰がアンタの嫁よ!

わわわたし達はアアササーサーのこんにゃくしゃなんだからアンタなんかお呼びじゃないのよ!」


 めちゃくちゃ噛んでる。


 こんにゃくしゃ……蒟蒻者とは、蒟蒻の第一人者みたいなものだろうか。


 群馬にある蒟蒻施設の責任者になれそうだ。


 「……私達はもうアーサーのもの……なの」


 エリーのセリフは中学生男子には効果バツグンだ。


 僕は心臓をズキュンされた。


 そして子鹿勇者にも効果バツグンだったようで、雰囲気が憤怒のオーラでいっぱいになってきているようだ。


「だぁぁあ! 

どいつもこいつもなめた真似しやがって! 

アーサー……貴様は必ず殺す!! 

それも絶対的な屈辱を与えた上でだ!」


「それは困る!」


「困るな!!

……おい奴隷、あれをやるぞ!」


 ここまでほとんど沈黙していた美少女魔法使いが子鹿勇者の指示で何かを詠唱し始めた。


 奴隷っていうのはあの少女のことだろうか?


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