第1章-12 ステータスオープンとかっこよく言ってみた
まさかあなたの才能はツアー本ですよなんて言われる日がくるとは思わなかった。
異世界に来るとも思わなかったけど。
才能といえば、子どもの頃に幼稚園の先生から朝陽君はなんとかたらしの才能があるねって言われたっけ。
なんとかの部分がよく聞き取れなかったけど、ちょうどその日の家のおやつがみたらし団子だって母親から聞いてたから先生に家に来る?とか言ったなぁ。
才能がみたらし団子だとしたら和菓子屋になれるかもしれない。
「ところで、羽毛さんからはこの世界の危機の元凶を小突いてとか言われてるんだけど、具体的にはどうしたらいいかわかる?」
「元凶の正体まではわかりませんが、アーサー様が強くなり頼れるお仲間を増やされるのがよろしいかと」
「強くって言われても、僕は見ての通りモヤ……水菜っ子だよ」
モヤシより水菜が好きなのでなんとなく言い方を変えてみた。
「大丈夫です。アーサー様の持つスキルがあればきっと強くなれますよ」
「本当に? 水菜な僕もムキムキマッチョになれる?」
「……菜の花くらいまでなら……おそらくは」
「どうして視線を逸らしながら言うの?」
水菜よりはややボリュームが増したようだけど、ムキムキマッチョにはなれなさそうだ。
「既にお気づきでしょうが、ツアー本はアーサー様の知りたいと思うことに答えてくれます。
ただし、今のアーサー様の実力に合わせて内容が変化する場合がありますのでお気をつけください」
「内容が変化……まさか!?」
まだ内容を見ていなかった先ほどの女性関係の時に出た69ページを開いてみた。
「まずは異性と手を繋ぐ姿をイメージしましょう……だと!?」
「……アーサー様」
「残念なものを見る目はやめて!?」
くそぅ、今の僕の実力ではイメージするのが限界なのか!
「よろしければ、私と手を繋がれますか?」
「そんな虚しくなるような施しなんて……でもよろしくお願いします!」
迷うことなくクルネの手を握った。
「はぅっ!? お上手……なのですね」
「手を繋ぐ上手ってなに?」
謎の反応をするクルネの手がとても暖かったので、そのまま手を繋いで話を続けてもらうことにした。
「あっ、さっきのページの内容が変わってる
なになに、連絡先を交換出来た自分の姿をイメージしましょう!?」
またイメージかよっ!
「……アーサー様」
「だから残念なものを見る目はやめて!?」
そもそも異世界でどうやって連絡先を交換するのか。
「連絡先の交換というのは、おそらくこの世界でいうところのステータスプレートの共有のことだと思います。
……ハレンチですね」
「ハレンチなの!?」
「ちなみに私と交換する場合はアーサー様もステータスプレートを出して互いに契約するだけです。
お互いの情報が筒抜けになるので真に信頼している者同士でなければ難しく、主に夫婦の誓いの代わりにする場合が多いですね。
あるいは……奴隷など。ハレンチですね」
「ハレンチと言いながら詳しく説明された!?」
ハレンチと言いつつステータスプレートと思われる物を見せつけるようにしながら説明してくる。
クルネは本当にぐいぐいくるね。
「それで、ステータスプレートって?」
「現在の能力値等を表示するものです。試しにステータスオープンとかっこよく言ってみてください」
「シュティタャスオーペン」
ポーズをキメながら英語の発音っぽく言ってみたが何も出なかった。
「認識されなかったようですね。もう少しシンプルな発音にしてみてください」
仕方がない、普通に言ってみるか。
「ステータスオープン」
ぶおん。
「かっこよく言わなくても出るじゃん!」
「かっこよく言われるほうがアーサー様の気分がよいかと思いまして」
「否定はしない」
こういうのはロマンが大事なのである。クルネはそこのところをよく理解しているようだ。ガイドは伊達じゃない。
目の前に表示されたステータスプレートはA3くらいのサイズだった。
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アーサー・A(朝田)・ペンシルゴン
レベル14
筋力 500
知力 400
体力 400
速力 500
魔力 900
運力 8000
エクストラスキル:ツアー本
称号:たらしの権化、クルネの主、羽毛の加護
――――――――――――――――――
「なんかツッコミどころが多いな!?」
「どこか変でしたでしょうか?」
僕のステータスをクルネが覗く。
「……アーサー様」
「ホントに残念なものを見る目はやめて!?」
やれやれ仕方がない方ですねと言わんばかりに首を振るクルネ。
「これ、ステータス的には具体的にどういう状態?
僕はこの世界でなんとか生きていけそうなくらいなのかな?
あとペンシルゴンって?」
「……運以外の能力値は成人男性の平均値より十倍くらい多いかと」
「そんなに!?」
じゃあ運は半端じゃなく高いってことか。
「この世界の人はもしかして日本人より弱いの?」
「いえ、そうではありません。……どういうことでしょうか。まるで羽毛様の加護が上乗せされているかのようです。ツアー本以外に何か渡されましたか?」
「えっ、これといって別に……あっ!」
ごそごそとポケットに入れていたあれを取り出す。
「もしかして羽毛さんの羽毛が原因?」
「そ、それは!」
クルネに羽毛さんからむしり取った羽毛を見せると、ひどく驚かれた。
「あっ、読めなかった称号の所に羽毛の加護ってのが追加された」
「……アーサー様、ここからは自由時間にしましょう。私は所用ができましたのでこれで失礼させていただきますね」
「えっ!? まだ色々と聞きたいことがあるんだけど……行っちゃった」
窓を開けて飛び降りたクルネは、そのままどこかへ走り去ってしまった。
「さっきの自由時間ってツアー的な意味で言ったのかな」
気になることは多いはずなのに、真っ先に浮かんだのはそんなことだった。ペンシルゴンのこととか聞きたかったのになぁ。
まぁとにかくクルネのおかげで分かったこともあるから、ツアー本を色々試してみよう。
そう思った時、コンコンとドアがノックされた。どうぞと答えると、失礼致しますという声の後にセレスさんが部屋へ入ってきた。
「お風呂の用意が出来ましたので、ご案内致します」
「あっ、はい。お願いします」
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