↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
559/587

第五百五十九話 大人達の結末

下では決着がつく。千夏さんは少し心配だが、楓達がいるのなら間違いが起こることは無い。



「・・・・・・・・・・。」


少し気になっていたことがある。奴の水が多くある中で空気の操作が聞かず

詳細な情報が取れないのが大前提にあるとして、”情報が取れない所か音一つ聞こえてこない”。


「・・どうみる?」


何が行われているのかこちら側に伝わっていない以上、上手く立ち回るなど不可能。

情報を大事にしている白の長達が自ら断つ理由は無い。こちらから情報を取る必要がある。


『クトゥルフの奴が指示を送ったのだろうな。まずは厄介な方を叩くと。』


人数不利に置いて常套策の分断。それをさせないためにこれだけの大人数で仕掛けていたが、

白達は疲弊し、俺達を壁で阻んだ。支配下に置いているとはいえ、狭い戦場でよく

部隊を阻んだと言えるだろう。


「・・・・・・・・・・・・・。」


情報を取るにしてもあの壁の中に入り込むのは自作行為。俺であっても操作を奪われる

水の壁の中は入った者の命を奪う地獄そのものだ。


「・・早速やるしかないな。」


このまま突っ込むか、それとも壁に対して何かを打ち込むか。

少し前であれば何とか小細工をして中に入り込むしか選択肢は無かったが、今の俺は違う。


五行陣ごぎょうじん。」


千夏さん達の決着を見届けた後、この戦場を一望できる上空に陣を築き上げる。

下で陣を練ってしまえば水で支配される危険性があるので視界が広い上空の選択をしたが

当然奴の捕捉され破壊される可能性も十分にある。

だがそこは必至に戦っているであろう兼兄達を信頼するしかない。

俺達が今持っている中で一番信頼できる情報は兼兄達の存在のみなのだから。


「・・終わりました。」


先祖達を全て倒した千夏さんは俺の方へ寄ってくる。

戦闘終了の報告だけではなく、陣をひいている俺への援護を兼ねての接近だ。


「これが龍穂君が作り上げた陣ですか・・・。私の封印術とは比較になりませんね。」


「・・何を言いますか。あの封印術に触れる機会が無ければ俺はこの術式を練り上げる事さえ

出来ませんでした。」


今まで見せてこなかった術式をここで使ってくれた。高等技術ではあるが千夏さんであれば

使えるだろうが、術式を的確に狙うものとなると恐らく青さんの入れ知恵なのかもしれない。

俺にはそんなこと一切教えてくれはしなかったが、あの人は俺の便利な術式は一切教えては

来なかった。


(まあ・・・そのおかげで基礎が出来たんだけどな。)


あれが無ければこの術式を練ることが出来なかっただろう。バタフライ効果の範疇だが

そのおかげで陣は難なく完成を迎えようとしている。


「・・千夏さん。全体に次いで下さい。」


陣が完成すれば水の壁が全て無くなる。となれば正真正銘絶好の好機。

だがこの瞬間の判断が一番難しい。重要なのは俺の陣が奴に通用するかどうか。

一番都合がいいのは兼兄達が奮闘している最中に俺の陣が効果を発揮する事。

水が使えないとなると頼らなければならないのは落とし子のみ。

その瞬間、俺達との挟撃で一気に攻め立てられれば勝利まで見える。

だがそれには全体で奴相手に接近しなければならず、壁の中のどの位置にいるか分からない以上

全体で距離を詰める前提で動かなければならない。

となれば退く事は難しいが一番最悪なのはその決断を下した上で兼兄達が倒れている且つ

俺の術式が奴に効果を成さなかった時だ。


「・・どうしますか?」


その二つが重なれば全てが終わる。風でいくらなんとかしようと奴の水が全てを乗っ取り

全滅するだろう。もし、猛やヌトス=カアンブルが何とかしてくれたとしても

殆どの仲間達が命を落とす。


「・・・・・下に来てくれ。離れた位置からの援護は必要ないと伝えてください。」


もう中途半端はいらない。ここまで来たらリスクを取り切る。

敵に対する効果的な術式をせっかく練り上げたのにここに来ての逃げ腰こそ死を意味する。


「承知しました。」


俺の指示に文句ひとつ言わず、千夏さんはヘッドセットから全体に指示を送ると

次々とした降りてこちら側へやってくる。


(白は・・・動けないか。)


この通信はちーさん達にも聞こえているはず。ここが仕掛け所なのは分かっているが

それでも動かないとなると白達は十分な回復が出来ていない。

ここまで耐えてくれたんだ。これ以上を望むのはあまりに酷であり頼りにしてはいけないが、

ここぞという時には直接指示を出し、前線に出てもらうしかない。


『・・いつでも行けるぞ。』


全体が俺の背後に到着したことを確認し、出来上がった陣の上に二つの柱を作り上げる。

一つは当然水の上。これが届けば奴の海は全て意味を成さない。

もう一つは禁。奴の深海に込められた宇宙の力を阻むことで完全なる機能停止を狙う。

この二つを完全に封じることが出来れば勝利を掴むことができる。


「俺があの柱を打ち込めば水の壁が降りる。中がどうなっている分からないが、

あの兼兄達が負けているとは考えにくい。」


壁が降りる瞬間を狙い突っ込むと指示を送ると魔術や神術を得意とする仲間達が

術式を練り上げ始める。


「猛達やヌトス=カアンブルは安心してくれ。俺が作り上げた陣の対象にお前達は

入っていない。奴だけの力を抑え、俺達は暴れられるようにして見せる。」


結界術に対しての操作も先ほどの先祖達に向けた陣でコツを掴んでいる。

敵に突っ込むなんて言われればどうしても緊張が出てくるが、何とかして和らげようと

声をかける。決して振り向くことはしないが、全員の視線が俺の背中、一挙手一投足に

集まっている事が分かる。振り落とし、壁が落ちれば今まで以上に何が起こるか分からない。

今現在以上に情報がない戦いは何時振りか。それこそ・・・俺がまだ何も知らなかった

仙蔵さんや平さんとの戦いぐらい前まで遡るだろうか?


「・・・・・・・・・・・・。」


気が付けば・・・ここまで戦いの日々だった。その戦いに終止符を打つため、

俺は柱を空に刻み込んだ陣の文字に向けて撃ち放つ。柱が文字を打ち抜いた瞬間、

この戦場の水と金の力に抑制がかかり始める。先程より範囲が広く、そしてより力強く抑制を

強いるためどうしても完全な発動に時間がかかってしまう。

徐々に、だが確実に。この場全体に抑制がかかっていくこの時間が全体の緊張感を高め、

徐々に操作を失っていく水の壁を見た瞬間、それが弾け駆け出す俺の背中を追って

全員が駆け出す。


(・・・・・どうだ?)


落ちていく壁の先をじっと見つめ壁の中の現状を確認しつつ、足を動かす。

きっと・・・兼兄達は善戦してくれている。挟撃を行うタイミングを逃してはならない。


「・・・・・・・・やっとだ。」


水の壁が落ち、視界がはっきりと確保される。そこには勝利への道筋が隠されているはず。

・・そのはずだった。挟撃を予想し、駆けだしていた俺の足は止まってしまう。

誰も超すことなく、邪魔一つない俺の視界には残酷な結末が待ち受けている。

膝を突く者、黄金の床に伏せる者。いつも頼りになる大人達。この人達が負ける事など

あり得ないと思っていた。勝つことは出来ずとも、必ず何かを残してくれる人達。

そんな認識を・・・目の前の光景が全て否定する。

頭の位置が高いのはただ一人。忠行以外におらず、他の五人はひどく傷つき全員が

戦闘不能に陥っていた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

少しでも興味を持っていただけたのなら評価やブックマーク等を付けていただけると

励みになりますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。