表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
551/574

第五百五十一話 頼もしい仲間達

やっと対等近くまで立ち回れる可能性が出てきたが、忠行は明確に距離を取り

接近戦への警戒を敷いてくる。


「・・冷静だな。」


少しでも相手に優位が渡るのならすぐさま自分が有利な場所へと身を移す。

リスクを冒さない勝利への筋が通った立ち回りであり、今度は俺達が踏み込まなければ

ならない時間となった。


(さて・・・・・。)


純恋の太陽の光が差し込む以外の場所の空気は水分に満ちている。

先程の体液の様にすぐさま操作を奪われることは無いだろうが、神術の使いかたには

気を付けなければならない。


『文句を言うつもりはないが、純恋の太陽によって吹雪が仕えなくなってしまったな。』


水と風を使い起こす吹雪をこの場で使おうとすればたちまち空気中の水分の操作を奪われ

反撃されるのは目に見えている。となれば遠方からの吹雪で全てを凍らせたいが、

純恋が放つ日の光が辺りを温めており、吹雪が雨に変わってしまう。

これが複合術式の弱点。力そのものを操れないデメリットを考えつつの立ち回りは

使用者に大きな制限をもたらす。


「距離を取られちゃったな・・・。」


ここからどうすると尋ねてくる桃子だが、次なる一手はなかなか思い浮かばない。

楓の長所を生かすためには踏み込むしかないが、奴が取った距離を例え縮地で駆けたとしても

その道中で敷かれた海が俺達を必ず狙ってくる。


「・・どうします?」


何とかする必要があるが、その道中を楓は何とかできるとして後ろの二人を狙われれば

俺の援護に向かわなければならず足並みが揃えられない。

となれば忠行は真っ先に楓を潰しに来るだろう。そこまでの未来が見えてしまっていれば

簡単に踏み込むことはできない。


「・・・・・踏み込もう。」


誘われているのは分かっている。それでも、踏み込むしかない。


「龍穂、分かっているのか?」


後ろか異論を唱えた陽菜は俺と同じ未来を見ているのだろう。俺抜きで必死に戦い、

手に入れた切り札をそんな簡単に失ってしまうのはあまりに軽率だ。


「分かっているよ。それでも今踏み込まなきゃ意味がない。」


時間は待ってくれない。勝負時で持っている手札を有効に使えなければ何になる。

時間をかけていまだ欠けている情報を取りながら戦う。

石橋を叩いて渡るのが定石だが、今頃兼兄達が落とし子と戦っている最中で

奴を一秒でも足止めするのが俺達の仕事。仕掛けるのは今しかない。


「ここから先は茨の道だ。一歩でも踏み込めば地獄。俺のなるべき援護する。

何とか踏み込んで奴の足を止めよう。」


「止めると言うのは簡単だが・・・。」


それでも異論を唱え続けようとする陽菜に構わず、乾いた風で道を作りかける準備を

あからさまに行う。その姿を見た陽菜は諦めたように口を閉ざし、共に駆ける体勢を整えた。


「・・勝算が無いわけじゃないよ。」


陽菜からすれば確かに無謀な選択に見えたのかもしれない。

だがわずかに経験が勝る俺の方が視野が広く、そして陽菜が焦っている証だ。


「頼むぞ、みんな。」


ヘッドセットのマイクに向かって呟き、足並みをそろえて道を駆けていく。


「愚かだな。」


走る体勢は上半身が多少自由が利くが、駆けるために動かした下半身は踏ん張りがきかない。

そして個人差はあるがブレる視界は不意打ちや多段攻撃を視界にとらえる何度を上げるため、

移動中の攻撃は非常に有効。奴は俺達が駆けたことを確認してすぐさま海の形を

変えて俺達に打ち放ってくる。


『来たぞ。』


瞬発的に生み出した風で鋭く形を変えた水柱を吹き飛ばしながら駆けていく。

やはり深海は奴の領域とはいえ体液ほどの力が込められているわけではなく、

水に触れても操作を奪われずに破壊されていく。

だがこれは囮。本命は今まさに打ち上げられようとしている巨大な水柱。

あれを壊すには俺もそれなりの術式を練る必要があるが、そんなことはお構いなしに

距離を詰めていく。


「おい!!!」


後ろから聞こえてくる陽菜の声を無視しつつ、必死に足を動かす。

対処しなければ全てが終わってしまうという警告だが、既に手は打たれていた。


「やるで千夏さん!!!」


「・・はい。」


ヘッドセットから聞こえてきた純恋の声。そしてその隣で覚悟を秘めた返事を呟いたのは

千夏さんだ。踏み込んだのは俺達四人だが、木星は部隊であり先ほど決めた役割を

各々が持っている。俺達が最短で距離を詰めるため、純恋達は後方に控えてくれているのだから

その力を借りない選択肢は無い。


竜樹鏡りゅうじゅきょう。」


ヘッドセットから聞こえてきた千夏さんの術式。これは恐らく青さん共に放った神術。

ここからではよく見えないが、おそらくは木の神術を使って何かを仕掛けている。

そして・・・俺達を避ける様に差し込まれた強い陽の光が打ち上げられようとしている

海水を急激に温め始めた。


八咫鏡やたのかがみ!!!」


空気で辺りを確認するとどうやら青さんと木の力を使い何かを生やしている。

術式の名を聞けば青さんが好む龍血が取れると言われているその名の通り竜血樹だろう。

大西洋の島に生える高木は赤い樹液を出し、それが名前の由来となっている。


『・・俺の吹雪を上手く使ったな。』


太陽から距離を取った場所に不規則に生えた龍血樹には多くの樹液が流れており、

俺の吹雪に晒されて凍り付いてしまっている。


(・・なるほど。)


固まった龍血樹を鏡として使い、太陽の光を屈折させ俺達の足元を照らしてくれてる。

俺達を焼かない様に工夫された援護。流石だ。


「・・陽菜!!」


沸騰するほどの高温に温められた海水だが、阻むほどの蒸発は出来ずにいる。

ここまでくればあと一押し。後ろにいる陽菜に指示を出し奴の仕掛けを阻みにかかる。


「弾正忠のだんじょうちゅうのごう!!!」


陽菜は体に秘めた第六天魔王波旬の力を開放すると、俺達の周りにすさまじい炎が

巻き上がる。その姿はまるで炎上する本能寺。天下布武を野望とし、

日ノ本の中心に位置する尾張から進行を続けていた信長が命を落とした本能寺の変。

日ノ本の歴史が変わった瞬間であり、信長は光秀の裏切りに身を焼いたのだろうが

その炎は俺達を守ってくれている。


「突っ込むぞ!!!」


沸騰したまま打ち上げられた水柱は陽菜の神術に触れると簡単に水蒸気へと変わる。

その隙を逃さず、俺達は風の道を駆けた。


「小癪な・・・!!」


水柱で俺達が退くと思っていたのか、忠行は顔をしかめながら俺達の方を向く。

俺達と戦っていたはずの忠行が体を別の方向へ向けていた理由は容易に予想できる。

すぐ近くまで兼兄達が迫っている。俺達が距離を取った隙に援護に向かうつもりだったのだろう。ここに来てまたとない好機。流れを変えると踏んで呼び寄せた味方が足を引っ張っている。

接近戦でも戦えることを証明し、そして可能な限りの援護を向けてくれる楓や純恋達とは

正反対。また、こちらに流れが来ている。

だが、今まで流れを何度断ち切られた事だろう。これ以上は手放せない。


「フッ・・・・・!!」


翼を羽ばたかせ、向かっていく楓の後ろに付きながら奴の懐に飛び込む。

牽制など一切考えず、流れに身を任せた踏み込みだがそれでは安直すぎる。

楓の影の中に隠れ、いつ何が起きてもいい様に六華を握りしめる。

結局援護をすることになってしまったが、仲間の隙を突かれない様に構える事と

自身ある姿で突っ込む味方の脇を固めるとでは訳が違う。


(もう一つ・・・もらうぞ。)


奴の体の中に封じられた子孫達の力。つい先ほど一つ取り除くことが出来たが

それでもまだ多くの魂が封じられている。先ほどは腕から脳が出てきたが残り数を

考えると少なくとも残りの四肢にもあるのは確実。

もう一度四肢を断ち切る覚悟でいつでも影から飛び出せるように体勢を整える。

影から見る楓は蛭を最短で振り抜こうと動き出し、後にいる二人も術式を唱えながら

得物を振り上げる。このままいけば忠行はまともに喰らう。だが、

影から見る忠行は受け止める素振りを見せず、何かを仕掛けようとしているように見えた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

少しでも興味を持っていただけたのなら評価やブックマーク等を付けていただけると

励みになりますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ