第五百四十八話 修羅場を超えた仲間達
姿を現した新手。忠行が呼び出したであろうクトゥルフの落とし子。
複数いる落とし子の中でもエリート、突出した才能を持った一体を呼び出してきた。
しかもその中でも忠行が直接何かを教えた可能性のある奴だ。
今まで戦ってきた神々とも引けを取らないと考えた方がいい。
「さあ・・・見せてくれ。」
忠行が声をかけると厚い氷の中から姿を現した落とし子が触手を触手を伸ばしながら
周りの瓦礫を動かしこちらに向けて放ってくる。
中国の山々の中に姿を潜ませていたと言われている通り、岩や土などを扱うのに
長けている様だ。こいつだけを相手するなら俺達だけで十分。だが、その隣には忠行がいる。
瓦礫を黄金に変えたノエルさんや後方で援護を続けるアルさん達のリソースを割きつつ、
隙をついて俺達の首を狙ってくるのは分かり切っていた。
誰が戦うか。俺達の中の誰が落とし子と戦うかで動きが多く変わってくる。
「次はどれや!!!」
その思考を頭が咲こうとしたその時。先ほど浴びた光の主の声が後ろから響いてくる。
後ろを振り向くことなく、みんなの足元に乾いた風の道を敷く。
見る必要はない。みんなが深き者ども達を倒し、俺達の元へ来てくれた事は既に分かっている。
「さて・・・・・。」
飛んでくる瓦礫を乗っ取られない速度で瞬発的に作り上げた風で対処しながらみんなの
到着を待つ。すでに立て直している兼兄達も向かってきている瓦礫に対し対応を
済ませており、既に戦う準備は整っている。
『・・どう立ち回る?』
何処に誰を割くか。俺の決断は既に決まっている。
「・・・・・純恋達に落とし子を任せる。当然さっきみたいに放置はしない。」
苦戦していた純恋達にその上位個体を任せるのは荷が重いのは分かっている。
だが、援護に徹させるほどの余裕は俺達にはない。
『大丈夫か?あいつらには荷が・・・。』
「重いだろうな。だがやってもらうしかない。」
猛や真奈美という新戦力が入ったが、あの二人も自身が契約している神々の力を全て
引き出しているとは言い切れない。その中でその他全員が一皮二皮むけてくれたのだろう。
「誰がどこをやるなんて事を決めてしまえば奴に隙を突かれる。
今までの状況をなるべく変えないためにも純恋達にやってもらう必要がある。」
純恋が近くにいるとなると乾いた空気を確保できる。俺が援護をしつつ出来るだけ
早急に倒して合流してもらうのがベストだが・・・それは奴も分かっている。
恐らく隣におきながら戦うはずだ。
「狙いが違うだけで結局は隣で戦う事になると思う。だが、それでも倒すべき敵を
明確にしておくだけでも立ち回りが楽になるはずだ。」
兼兄達も俺に対して明確な指示所か連絡さえも取ってこない。
純恋達は俺に任せると言う事なのだろう。
「・・龍穂!!」
空を飛ぶ者、道を駆ける者。それぞれの方法で俺の元へ追いついてきた純恋。
「遅くなったわ・・・。」
「・・遅くなんてない。」
たったそれだけ伝え、純恋達と合流する。
「合流してすぐで申し訳ないが策を伝える。まあ、策って程じゃないけどな。」
先程ハスター達に語った内容を純恋達に伝える。
誰一人として異論を唱えることなく、不安を見せる素振りさえ見せない。
「・・いけるか?」
「行けるも何も、やるしかないやろ。」
「ですがあの巨体にあの触手と力。近づくのは難しいでしょうね・・・。」
あの図体で近づきにくい。まるで少し前のクトゥルフのような立ち回りが出来る奴相手である
事に対し、楓は立ち回りの難しさを訴えてくる。
桃子や楓はまだ離れた位置での戦いは出来る。だが沖田の様な完全な近距離専用の
仲間がいる限り、持ち腐れ所か敵からすれば狙われるだろう。
「そこはうまくやって欲しい。俺も出来る限りみんなへの攻撃の対処をするつもりでいる。」
「うまくやれですか・・・・・。難しいことをおっしゃいますね。」
一番最初に文句を言ってきたのは千夏さん。もしかすると青さんとの神融和の影響を
強く受けているのかもしれない。
「ですがやるしかありません。龍穂さんは我々以上の敵と戦わなければならない。
そしてその中で援護をするのですから文句は言えないですよ。」
いつも以上に頼りになる言葉を楓は言い放つ。やはり・・・あの力を完全に
制御している様だ。
「じゃあ・・・まずは俺から行かせてもらおうか!!」
戦況の変わった戦場の中、互いが若干の様子をしている中。
まるで狼煙の様に痛烈な攻撃を打ち放ったのは謙太郎さん。
「狼王!!!」
いつも通り打ち放った青い炎。だが込められている力が俺と同じく神力へと変わっている。
そして飛び出した狼の大きさも段違いであり、アメリカで伝説と呼ばれる狼であり、
多くの被害をもたらした群れの王であるロボを模した一撃を落とし子に向けて駆けていく。
「ロボか・・・。人間に恨みを持つ狼がまさかあのような奴に力を貸すとはな。」
非情に賢い狼であったロボの死因は人間が作り出した罠。しかも妻であるブランカと呼ばれた
狼を捕らえて作られた罠に使った後、飲まず食わずでそのまま亡くなったとされている。
青い炎との完成性が一切ないロボの力をどうやって使えるようになったのかは分からないが、
強力な一撃を前に落とし子だけの力ではいなせないと判断した忠行は
深海を動かし援護に行った。
「やはりそれが大事のようですね・・・!!」
その姿を見たノエルさんは蓋にせずにいた黄金を動員し、深海の水を防ぎにかかる。
今の所瓦礫と触手の力のみしか見せていない奴はノエルさんの言う通り
忠行から重宝されている様であり、まずは奴を倒すべきだと判断した様だ。
「・・・・・・・・・・・・。」
今の所忠行が守るほどの力を有しているとは思えない。だが、現実として
忠行は落とし子の事をかなり大切な存在だと思っている様だ。
まずはそこを引き出してからが本番。それまでは深く踏み込むのは避けた方がいい。
「小癪だな。」
未だ止むことの無い吹雪の中。反撃の糸口が掴めなかった忠行は再び自ら仕掛けるために
動き出す。狙いは吹雪を発生させている俺。仕留める事は出来なくとも
まずは吹雪を止ませるためにこちらに水を差し向ける。
「・・龍穂!!どけ!!!」
このまま吹雪を吹かせ続ければ忠行の体と落とし子にも影響を与えることができる。
何をしようとしているのか分からないが、黙って受け入れるつもりはないと
風を作り出そうとするがそんな俺の横に立った純恋は謙太郎さんと同じ様に神力を使い
凄まじい太陽の力を打ち放つ。
「明けの明星!!!」
練り上げた術式が生み出したのは二つの大きな球体。
明けの明星と言えば恐ろしい力を持ったとある悪魔が天使であった時の二つ名として有名だが、
今回純恋が使ったのは太陽の光を反射した金星が日の出前の空で最も輝く現象模した
術式だろう。
眩い光を放つ大きな球体と、それを反射した小さな球体。太陽と金星を模した二つの光は
飛び込んでくる水流を挟み込むように配置され、俺達に近づく前に全て蒸発していく。
今まで魔術で太陽を作り出していた時であってもかなりを力を打ち放っていたが、
さらなる飛翔を成した純恋の一撃はやはり忠行であっても有効。
(やるな・・・・・)
これだけ大きく変わったのは予想外。期待以上の働きをしてくれた純恋には感謝しかない。
他のみんなもすでに攻撃態勢を整えているが、少しでも負担を減らすために俺も術式を
練り上げる。明けの明星ではないが、日没後に光る金星である一番星を宵の明星と言い、
その隣には木星や月が並ぶと言われている。
「月の女神。」
木星は光を反射しない。だが、月は太陽の輝きを反射し自らの光へと変えることができる。
ディアーナに地位を奪われ影が薄いが、ローマ神話の突きの女神であるルナを月の形として
呼び出し金星と同じ様に近くへ配置する。
そして・・・太陽の光を吸収した月はその光をため込み忠行と落とし子達に向けて撃ち放った。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
少しでも興味を持っていただけたのなら評価やブックマーク等を付けていただけると
励みになりますのでよろしくお願いします!




