第五百十九話 まさかの合流
此方に向かってくる猛達。一体何があったのかと近寄りたいが、
逃してはいけない好機に対し、指示を送らなければならないとすぐさま頭の回転させる。
「・・・・・他には伊達さんと藤野さん。それに雑賀さんと・・・ゆーさん。
お願いできますか?」
奴のタフさを謙太郎さんが貫く。確実性はないが俺を抜かした中で最大の人選。
ここで求められるのは単純な火力ではなく、瞬発力が求められる。
瞬発力とは詠唱時間。時間のかかる神術ではなく、魔術での高火力が必要。
それに加え目立ちやすい神融和下ではなく、生身で放つことができる
謙太郎さんが一番初めに候補に挙がった。
「分かったけど・・・なんで私?」
選抜されたメンバーのゆーさんが尋ねてくる。
恐らくちーさんと自らを比較しての疑問だろう。
「この不意打ちに関しては成功を第一目標としていません。
離れている俺達が奴に一撃を入れられる事を分からせるだけでいい。」
俺の存在感だけを感じていればいいと割り切られてしまえば白達に意識のほとんどを
向けるだろう。
「じゃあ、第一目標は何?」
「帰還。誰も死なずに俺の元へ帰ってくる事です。
奴に一撃食らわせる事は出来るが、誰かが帰ってくる事が出来ないと察したら
すぐに帰ってきて欲しい。
ゆーさんの言う通り、その場に合わせた策を練ることができるちーさんの方が
作戦遂行能力は高いでしょう。ですが戦場における嗅覚はゆーさんの方が格段に上。
少しでも危ない匂いがしたら帰ってくる決断を下して欲しいのです。」
ちーさんが戦場でも冷静な判断が出来ないとは言わない。むしろ頭の回転は速く、
広い視野を持った策は俺達の強みの一端を担っている。
だが、だからこそ打算的な動きをしてしまう。不意を打つにはあまりに過酷な環境に
どう動けばいいかあらゆる可能性を考え動けなくなることは容易に想像できる。
「匂いね・・・・・。なるほど、確かに私向きだ。」
「道を嗅ぎ分け、戦場駆ける。楓はゆーさんの補助だ。帰還のために全力を尽くしてくれ。
他の皆さんは謙太郎さんの補助。危ない場所での任務ですが、よろしくお願いします。」
俺は送り出す事しか出来ない。苦しいが・・・やってもらうしかない。
楓やゆーさん、そして藤野さんは快く引き受けてくれるが、伊達さん達は不安を隠せない。
はっきり逃げていいと言ったのは出来るだけ責任を重みを感じて欲しくはなかったから
でもあるが、それ以上に死が身近にある戦場に向かう事が伊達さん達の足に枷をはめている。
伊達さん達の実力は本物だ。それなりの修羅場も超えてきているだろう。
それでも、賀茂忠行という化け物を前にすれば怖気づくのは仕方がない。
「おう!やってやるぞ!!」
足に枷をはめたまま戦場に向かわせるのはマズいとメンバーの再編成を考え始めた所で、
元気な謙太郎さんが戻ってくる。
「大切な後輩の頼みだ!!先輩として、いい報告を持って帰ってこないとな!!!」
不安そうな表情を浮かべる伊達さんと雑賀さんの背中を強く叩き、
大声で笑い飛ばす。
「いっ・・・!お前な!!」
背中を痛みを感じ、言い返そうとした二人は謙太郎さんを見つめるが、
帰ってきたのは悪気の素振りさえ見せない笑顔。
「安心しろ!!危なかったらすぐに逃げろと龍穂が言ってくれているんだ!!
ダメだったらそれまで!!何も怖い事は無いだろう!!!」
「・・割に合わん仕事はしない主義や。商売をするには金が必要やが、
金で自分の命は買えん。」
「なんだ誠吾お前らしくない!!これは大きな貸しだ!!!
この戦いで功績を上げた龍穂に後々補填してもらえばいいだろう!!!」
寮にいた頃の謙太郎さんは比較的おとなしいと言うか・・・
ここまで笑顔を見せる事は無かった。明らかに変わったのは進学し、大学生になってからだが
もしかすると大変になった俺を励ますため、明るい素振りを見せていたのかもしれない。
突き抜けた笑顔で二人を励ます姿を見て、今更ながらそう思う。
「まあ・・・そうやけど・・・・・。」
「吹っかけるのはお前の十八番だろう!!それに卓也!!
お前の母さんが戦場に出てきたのにここで足踏みするのか!?
後で何を言われるのか分かったもんじゃないぞ!?」
「・・痛いとこ付くな、お前。」
「まあ、そういう事だ!!俺達に任せろ龍穂!!!」
二人を上手く丸め込み、戦場に向かっていく。
『・・楓。』
『分かっています。皆さんは死なせません。』
影に沈む楓に向けて念を送る。
『それもあるが・・・違うぞ。』
『違う?』
『楓もだ。みんなを無事に連れて帰るのも大事だが、自分を犠牲になんて考えるなよ。』
これだけの姿を見てしまえば、生きて帰さなければならないと楓は思う事だろう。
大切な人の中に楓も含まれているんだぞと釘を刺しておかねばならない。
『・・分かっています。』
覚悟を決めたみんなが頭の先まで影に沈み、戦場に向かうみんなを見送る。
『そちらも頑張ってくださいね。』
俺への激励。その意味が成す所は立ち回りではなく、重要な会話だと察して
姿を隠した二人に対しての事だろう。
『・・うまいことやる。こっちの事は任せて楓は戦いに集中してくれ。』
猛と真奈美の二人が何故ここにいるのか。白達と行動していたという事は
兼兄の指示を受けているのは間違いない。
「・・・・・・・・・・・。」
まだ罪の意識があるのだろう。俺達は共に戦う仲間であるはずなのに俺達の行動を見て
おどおどされては困る。
「・・おい!!そこにいるんだろ!!!」
楓が知っていたという事は、共にいた仲間達にもその姿は見えていた事だろう。
もう話は終わったと声をかけると瓦礫の影から姿を現す。
「よ・・・よう・・・・・。」
「様子を探っている暇はないぞ!!状況を聞かせてくれ!!!」
俺の声を聴いた二人はゆっくりと歩いてこちらに向かってくる。
どうやら俺に何かを伝えに来たわけではなく、俺とであること自体に意味がある様だ。
「兼兄からの指示か?」
「・・ああ。合流して戦えって・・・・・。」
「合流か・・・・・。その意図について、何か話しを聞いていないか?」
「ここは俺達に任せろとだけしか聞いていないわ。それと、龍穂ならうまく使ってくれると
私達はこっちに来たの。」
ふむ・・・。二人が何か誇張して話していなければ、俺が起きたことを前提に
兼兄は指示を出している。忠行相手に戦っていたとは聞いていたが、白が前線を張りだしたのは
俺が目覚めていない時間帯だ。
目覚める前に指示を出しているのなら戦力温存の意図もあるかもしれない。
「そうか・・・・・。」
八海で犠牲になった人達には一生をかけて罪を償わないと思うが、
俺に対しての禊は済んでいる。忠行相手に戦ってくれた事、そしてこれから戦ってくれる事。
それだけで免罪符となっていると俺は思っており、仲間達からの警戒も薄い。
「・・連れていくんやろ。」
唯一警戒をしている純恋がこちらに近づき口を開く。
俺の考えを既に察している様な口ぶりに、俺はただ首を頷いて返した。
「俺達がここにいる意味は分かるか?」
「陽動。離れている俺達からでも分かるほどに存在感のある龍穂の動きで
敵の集中を散らすつもりだろ?」
・・真奈美が答えるとてっきり思っていたが、猛がはっきりと答える。
三道をまともに扱う事さえ出来なかった猛がここまで考えられるようになるとは
夢にも思わなかった。
「・・・・・そうだ。」
そこまで分かっているのなら安心だと二人を部隊に引き入れるが、
近くにいた千夏さんが声をかけてくる。
「龍穂君。」
「・・どうしました?」
「もう少しだけでいい。兼定さんが龍穂君に二人を預けた理由を考えて欲しいのです。」
ただ俺達に援軍を送った。たったそれだけだと思っていたが千夏さんには別の景色が
見えている様で俺に察させるために声をかけてきたんだ。
「わざわざ二人を預ける理由・・・。」
「決してお二人を疑っているわけではありません。ですがお二人の仲にいる神は
龍穂君と比べれば劣るとはいえ強力。切り札となりうる神を何故易々と
戦場から切り離したのか気になりませんか?」
眠っていた俺を護るためなど色々あるが、それにしてはタイミングがおかしい。
であればもっと早くに援軍として派遣したはず。
そもそも俺が起きている前提での援軍だ。俺の勘違いは疑念へと変わっていく。
「確かに・・・何故なんでしょうか・・・・・。」
意図が掴めず悩んでしまう。ここに長くとどまれば企みを察した忠行が
楓達の奇襲を警戒してしまう。
『・・・・・龍穂。』
どうしようもないと合流を行い、再び駆け出す木星達。
そんな中、ハスターが俺に声をかけてくる。一体なんだと返すと一つの答えを導き出していた。
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