表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
473/479

第四百七十三話 咄嗟の連携

新たな力。そして見えた勝利への道筋。その道を全員で歩むため、全体に指示を送る。


『前衛後衛を分けて隊列を組む。念話が聞ける四人には俺の指示を全体に伝える

役目を担ってもらう。』


砂埃を尻目に、全員の元へとゆっくり移動する。


『桃子、楓は変わらず前。純恋は後衛を頼む。』


俺の指示を聞いた三人は周りの味方達に簡潔に指示を送り、隊列を組み始める。


『・・私は如何しますか?』


『千夏さんは前後衛の中間にいて欲しい。そしてここに来るまでの策を

実行していただきたい。』


『私の策より、龍穂君の指示の方がいいのではありませんか?

貴方なら私達を勝利へと導ける。私はそう思います。』


それは確かにそうだろう。ここまで苦戦していた・・・いや、勝負を仕掛けられなかったのは

晴明に有効打を与えるビジョンが一切湧かなかった事が一番の要因。


『それはそうなのかもしれません。ですが、俺としては千夏さんの策を実行することこそ

勝利への道に繋がる最短の道だと思っています。』


それが俺の手によって払拭された今、全員の指揮が上がっている。

そして、有効打を見つけられない相手に対して打ち出した策こそ、この戦いに勝利をもたらす

新たな風だと直感が訴えかけている。


『ですが・・・・・。』


『不安なのは重々承知の上です。でも・・・俺があいつらを圧倒するだけじゃダメなんです。』


『ダメ・・・?』


『嫌なんですよ。千夏さん達が舐められたままじゃ。このまま俺が倒せば

あいつらは俺に負けたと認識して再びこの世を去ることになる。

こんな言いかたをすれば怒るでしょうが・・・俺と言う化け物に負けたと認識するより、

現代の陰陽師や魔術師達に負けたと認識させてこの世を去らせたい。

だから・・・あなた方に一矢報いて欲しいんです。』


神力操作なんて言い訳はもういい。俺はみんなに勝ってほしい。

奴に舐められたままじゃ気が済まない。命の保証など出来ない戦いに身を投じた者達への

敬意を勝ち取って欲しかった。


『不安なら俺が隣に立ちましょう。共に戦うのは当然、背中を押します。

だから——————————」


俺の説得に、言葉を遮った千夏さんは一言で答えてくれる。


『・・分かりました。』


打開策の見えない相手と戦う場合。一番厄介なのは敵ではなく、自らとの戦いに打ち勝つ事。

何をしても無駄。そう頭が理解してしまうと振るわなければならない腕や

駆けなければならない足の動きがピタリと止まってしまう。

打開できなければ俺が前に立つ。だから自信を持ってくれ。俺の必死の説得に、

千夏さんは首を縦に振ってくれた。


『では、前後衛から何人かお借りします。本来であれば安倍晴明単体に仕掛ける策でしたが、

グラーキ相手の方が効果がある。目標を変えますがよろしいですか?』


道長を呼び出した晴明。それには意味や事情が必ずある。

何故グラーキと一体になる選択肢を取ったのかは未だ分からないが、その結果は

晴明を認めさせるには十分だろう。


『ええ。では、残りのメンバーは晴明に当たります。

俺はそのどちらもカバーしますので、千夏さんは策に集中してください。』


全てをカバーする。それはかなり難しい事だが、今の俺ならできる。


「では・・・行きましょう。」


俺達の元へやってくる時より静かに、それでいて強い決意が込められた一言を呟くと

選抜されたメンバーは道長の方向へ駆けていく。


「策に固執するか・・・。だが、それもいい。」


先頭を駆けたのは陽菜。その後ろに光と拓郎が続く。

先程は千夏さんの龍の一撃が先陣を駆けたが、それはあくまで晴明の邪魔を行うため。

本来の策に含まれていなかったアドリブだったのだろう。


「グラーキの棘に気を付けてください!!あれに刺されば廃人になり、

奴の配下とされてしまいます!!!」


グラーキはとある汚染された湖に住んでいると言われている旧支配者。

その棘に刺された者は体液を注入されてアンデットにされると伝えられている。

その湖には酸の霧が張られているらしいが、遺跡に召喚されたグラーキは

環境を生かすことができないまま立ち回る事しか出来ず、

俺の一撃を喰らった状況はかなりの攻め時と言えた。


「拓郎!!まずはお前からだ!!!」


本来であれば後衛で指示を出す役目であるはずの陽菜を前線に置いた理由。

指揮官として咄嗟の指示を送ることができる判断力は高い事だ。

共にしっかりと戦うのは今日が初めてだが、さすが大阪校を率いていただけはある。


「悟空・・・!!行くぞ!!!」


拓郎が神融和を行い、道長に突っ込んでいく。策を把握した上で

柔軟な指示を出せる陽菜の存在は大きい。千夏さんもそれを加味して

拓郎と共に突っ込ませたのだろう。その存在を確認した道長は体から生えている棘を

打ち放つが、陽菜がすぐさまカバーに入る。


一切方焦熱処いっさいほうしょうねつしょ!!!」


第六天魔王を神融和を行った陽菜はすさまじい炎を打ち放ち、

飛んできた棘を燃やし尽くしていく。その勢いは留まることを知らず、

巨体に向かっていく。


「蟠桃園の桃樹ばんとうえんのとうじゅ!!!」


迎撃用の一撃を抑え込んだ隙を見て、拓郎は地面に手を付ける。

すると地面から根を生やした大樹が奴の巨体に巻き付き束縛する。

辺りに甘い香りを漂わせている所を見ると、孫悟空の逸話の中に出てくる

蟠桃園の桃の木を模した技なのだろう。そして・・・陽菜が放った炎が大樹に火をつけると、

その体に火をつけていく。


「ほお・・・・・。やるな。」


短い時間で生み出した策にしてはかなり連携の取れた動きだ。

その光景を見て、俺や敵である晴明も感心してしまう。


「第六天魔王。そして・・・天照の化身である玉藻と八咫烏か・・・。

面白いな。それぞれが強力な式神を従えているな。」


各々が強みを出し、敵を攻め立てる。奇襲を前提にした策にしては

かなり大胆な攻勢だが、初見殺しに近い連携に道長は手も足も出ない。


「だが・・・・・炎は悪手だ。あの人が使役している神の事を

知っているんじゃなかったのか?」


燃やされる巨体。このまま灰になってくれればいいが・・・そうはいかないだろう。

水分を多く含んだ巨体からは大量の水蒸気が舞うが、黒く濁った煙となって

こちらにやってきている。


「・・いったん退け!!そいつを吸い込むな!!!」


グラーキが住みかとしている湖。汚染された血に出来た湖畔は強い酸性を含んでいる。


「五月雨の歌合せ(さみだれのうたあわせ)だ。溶けてなくなるといい。」


それは雲となり、遺跡の天井近くに浮かんでいる。

それは今にも俺達に降り注ごうとしており、策への反撃が俺達に飛んで来ようとしていた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

少しでも興味を持っていただけたのなら評価やブックマーク等を付けていただけると

励みになりますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ