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第四百七十二話 開けた視界

化け物を召喚した晴明。それはどこからどう見ても日ノ本の神ではない。

ナメクジのような姿をした巨体。その体からは棘が生えている。


「・・・・・グラーキ。」


その姿は資料の中で出てきた旧支配者の一柱。まさしくその姿。

だが・・・その巨体にかけられた名は神道を進む者であれば誰しもが知る名だ。


(藤原・・・道長。)


安倍晴明が仕えていたとされる藤原道長。彼がいなければ晴明は地位を築くことが出来ず、

そしてそれは道長も同じ。互いが互いを支え、日ノ本を支えてきた偉人の名が

何故あの化け物にかけられているのか。ここまでの戦いで・・・察することはできる。


「その体・・・どうだ?師匠に頼んでまで手に入れた体なんだろ?」


師匠・・・という事は恐らくそうだ。蘆屋道満と同じく死体に魂を入れたのだろう。

それかもしくは北条実朝の様に亡霊との神融和を行ったのか・・・だ。


『・・・龍穂。』


どちらにせよ、奴にとってしてみれば強力な加勢であり、

俺達からしてみれば厄介極まりない存在であることに違いない。

ここからどうやって戦うか。必死に頭を回していると、純恋が念話を送ってくる。


『八咫烏からの報告や。遺跡の中には召喚陣が敷かれていた。』


『・・・・・”数”は?』


『十個ほどあったらしい。その中で使われたのは二つや。』


二つ・・・か。他の神を召喚し、東京へ放つ話は確かに本当だったって訳だ。

だが、二体の神を放ったと言っていたにも関わらず、道長と呼ばれた神を含めれば

クトゥルフの神々は三体になる。どこかで嘘をついていたのか・・・・・。

いや、今はそんな事どうでもいい。


「・・分かっている。俺はアンタの手助けをするためにここにいる。

あの時の様に安心して背中を預けてくれ。」


晴明はクトゥルフの神々を召喚した。今現実で起きている事に集中しなければならない。


「さあ、これで俺にも余裕が出る。お前達に袋叩きにされることは無い。」


早い判断。流石だ。追い込まれる前に切り札を切るより、余裕がある内に切った方が

戦いは有利に進められる。出し惜しみなど不要。切るタイミングも抜群。

歴戦の風格を感じさせられる。


「・・一つ聞かせてもらいたい。」


晴明と道長。どちらを俺が相手にした方が良いのか。それとも分断などせず

全員で戦うべきなのか。答えが出せず、時間稼ぎのために口を開く。


「その神・・・グラーキと呼ばれる神を、何故藤原道長の名で呼ぶんだ?」


「分からないか?いや、分かっているんだろうな。お前がグラーキと呼んだ神と

道長殿は式神契約を結んだ。命亡きあとにな。」


「その理由が知りたい。前にも同じ奴を見たが・・・碌な理由じゃなかった。

藤原道長は何故宇宙の神との契約を結んだ?」


「理由か・・・。まあ、お前達に言った所で鼻で笑われるだけ。

くだらない理由だ。聞いてやるな。」


晩年、道長は病に伏せてこの世を立ったと言われている。

恨みつらみ、後悔などが無い人生など数えるほどしかいないだろう。それが権威ある者達で

あればなおさらだ。だがこれだけ名が通った人物が溜まった恨みの末に怨霊となれば、

何かしらの逸話が残っていてもおかしくはない。

それこそ日ノ本三大怨霊の一柱であり、藤原家の策略によって陰謀によって失脚した

菅原道真の様に有名になっているはずだ。


「・・鼻で笑われる理由でも、人によっちゃ大義になる。

否定する気はさらさらないが・・・死ぬわけにはいかない。」


理由があるならそれでいい。大義の無い奴と戦うほど、無意味なものはない。


「・・・・・そうか。」


不用意に触れない俺に向けて、晴明は満足気に頷く。


「だから・・・死んでくれ。」


理由が聞けなかったのは残念だ。仲間達を戦わせるにはあまりに厄介。

純恋達には晴明に集中してもらいたいとグラーキ改め道長に対して空弾をぶつけようと試みる。

空気操作を行い、風の塊を作り上げる。いつもと変わらない風の作り方。

だが・・・・・なんと表現するのが正解なのか分からないが、

空気に弾力を感じる。


『・・風で仕留める気か?』


指先で操る風。一つ一つの分子が俺の指先によって動きを変える。

・・そうか。弾力ではなく、さらに密度が高くなっているんだ。


『お前は今まで大気という大きな括りで動かしていたな?

それ以上に細かい分子単位で動かせるようにもなっていたが、それでもまだ完全な操作は

出来ていなかった。』


酸素、二酸化炭素、窒素、水素・・・。それらが全て俺の支配下で動いていく。

今までも出来ていた事だが、ここまで鮮明に認識したのは初めてだ。


『大気とは、分子とは何か。脳で理解しようとするな。感じろ。』


頭に響く言葉と共に、ハスターの力が強く感じる。

後ろから伸びてきた触手が俺の腕を伝い、分子を操る俺の指へと添えられた。


「・・・・・!!!」


強い殺気を二つ感じるが、今はそんな事どうでもいい。

ハスターの言葉に耳を傾け、分子を回転させて一つの弾丸へと変えていく。


『・・お前の母親でもここまでは出来なかった。これは青の教育の賜物だな。』


『青さんが・・・?』


『水の魔力操作は大気の操作に繋げる事が出来る。大気とは程遠いが、

水分もまた細かい操作を求められる。常人が行えば確実に脳が焼き切れていただろうな。』


鋭い殺気の一つが、俺に向けて攻撃を仕掛けようとしている。

体から生えた棘を・・・こちらに打ち放つつもりだ。


『加減をしろ。仲間達が巻き込まれるぞ。』


それを防ごうと動いてくれる仲間達も空気から感じ取ることができる。

俺のために動く仲間達を・・・これ以上失う訳にはいかない。


「・・銀色の弾丸シルバーバレット。」


小さな弾丸を打ち放つ。俺を助けてくれようとしている仲間達を狙い、打ち放たれた

棘を全て破壊するために縦横無尽に駆けた弾丸は全てを貫き、

おぞましい体を持つ化け物の体を貫く。


「○!※□◇#△!!?」


その瞬間。声にもならない耳をつんざく叫び声が辺りに響いた。

それは俺の一撃が道長に対して有効である証。


「させねぇよ!!!!」


このまま追い込んでやると再び弾丸を作り上げようとした俺の向かって

空気を裂いて迫る一つの影の存在に気が付く。

必死の形相で迫る晴明の前に空気の壁を作り上げるが、奴が打ち放った拳は

俺の空気の壁を破壊し、俺の指をへし折ろうと迫ってきた。


『・・俺の力を強く込めた空気の壁だぞ。本当に人間か?』


空気の弾丸では間に合わないが、体を逸らすことや逃げる事で対応は出来る。

弾丸を打ち放つために宙に浮いた俺の体を支える空気を動かそうとするが、

背後から伸びてきた触手は晴明に向けられると、勢いよく叩き落した。


「グッ・・・!!」


ハスターの触手をまともに喰らった晴明は、遺跡に叩きつけられる。

すさまじい勢いで迫ってきた筋肉の塊を叩き落とした威力は強力であり、

石畳みは割れ、砂煙が辺りに舞う。


『感覚はつかめたな?』


その姿を見たハスターは俺の尋ねる。感覚はつかめた。その威力も。

そして・・・勝利への道筋も。


『仲間達を勝利に導け。それが・・・新たな世界への扉になる。』


視界が鮮明に開ける。不安などない。俺達は・・・晴明に勝てる。


『・・・聞いてくれ。』


念話を使い、指示を送る。俺が・・・みんなを勝利に導くために。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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