第四百七十一話 舐めた者の末路
千夏さん達が突っ込んだ事で吹き飛ばされた晴明。
俺からの追撃を恐れたのかすぐさま立て直すが、奴の目の前に広がっていたのは
攻撃態勢を整えていた桃子達の姿だった。
「・・行きましょう。」
指揮を執るのは千夏さん。俺はその補助だ。
「・・・・・なるほど。そういう魂胆か。」
俺が攻めてこない意味を察した晴明は俺の方を向きながら苛立ちを露わにする。
「俺の意識を逸らせ、仲間達に仕留めさせる気だな?食えない奴だ。」
「なんとでも言ってください。ですが・・・仲間達を舐めてもらっちゃ困ります。」
日ノ本でも屈指の実力の持ち主達だ。簡単に負けるわけがない。
奴には神術操作に慣れるための時間稼ぎの様に見えたかもしれないが・・・
それは違うとみんなに証明してもらうしかない。
「そうか・・・。あまりしたくはなかったんだがな。」
臨戦態勢の布陣を見た晴明。その表情は暗く、そして先ほどまで俺に向けられていた殺気を
千夏さん達に向ける。
「弱い者いじめ。させてもらおうか。」
視線を落とし強く踏み出す。太古の時代に作られた精巧な遺跡の床がひび割れる所か
大きく割れるとそこに清明の姿は無い。
「ッ・・・!!!」
姿を現したのは桃子の目の前。すさまじい勢いで突き出された拳は桃子に命中している。
「桃子!!!」
この場にいる誰もが反応できなかった音速の一撃。
だが、警戒していた桃子は何とか得物で防ぐが勢いを抑えきる事など到底できず
そのまま吹き飛ばされる。
「ふぅ・・・・・。」
たった一撃。その強大な一撃はこれから戦おうとしている木星達の心に大きな衝撃を
与えるのは十分。遺跡の壁に当たった桃子を眺めながら、晴明はため息をつく。
「分かったか?これがお前の選択だ賀茂龍穂。お前が前に出なきゃ仲間達がこうなる。」
一人消された。次はだれをやって欲しい?そう言いたげな晴明は俺の早く来いと
強い視線で訴えてきている。
「お前が俺と戦えば全て済むんだよ。それだけでいい。さあ・・・早く来い。」
静かに、そして強く口調で訴えかけてきている。
今の一撃で実力差は見えた。確かに・・・俺が行かなければ仲間が傷つく。
「・・アンタは勘違いをしているよ。」
だが、それでも。俺は前に出る事を拒む。
「勘違い?それはお前だろう。」
晴明は俺ではなく、この場にいる全員に問いかける。
「共に戦う仲間達を蔑ろにする長など、間違い以外の何者でもない!!
そうだろう!!なあ!!!」
諭すように、苛立ちを周りにぶつけていく。俺たちに仲違いをさせようとしているには
あまりに本気の怒号がその口から飛び出している。
「・・・・・間違っているのはアンタやで。」
だが、その言葉に強い反発を見せたのは俺ではない。
石に塗れながらも立ち上がり、ボロボロと音を立てながら立ち上がった桃子だった。
「・・何?」
「舐め腐りやがって・・・。私らがアンタに歯が立たんと勝ち誇っとるやんか・・・。」
そうだ。奴は俺以外を舐め腐っている。勝てるはずがない。負けるはずがない。
そう言い放っている奴に対して・・・怒るのは俺の役目じゃない。
「たった一撃で倒せるなんて思うなよ・・・!!私はまだ負けてない・・・!!!」
怒りの炎を燃え上がらせる桃子。神融和をしている騰蛇の影響を受けてるのだろう。
「・・正気か?今の一撃はかなり効いているはずだ。」
「効いてるのが戦わない理由になるんかこの阿保・・・!!
そんなに私達を侮辱したいんか!!!」
怒りのまま、晴明に向かって踏み込む。兎歩で敵の意識を削ごうと試みるが
速度で劣る兎歩では奴の視界から逃れることはできない。
「足掻くのは良いが・・・火傷じゃ済まんぞ。」
一撃をもらった桃子が実力差など分からないはずがない。だが、格上との戦いを
幾度も乗り越えてきた桃子は知っている。実力差だけが勝敗を分けることは決してない事を。
もう一度喰らわせ、体に教えてやれば今度は分かるはず。
そう構えた晴明だったが、その瞬間に全てを察しただろう。
「・・やらせるかよ。」
その身にかかる重力。先ほどの魔術での空気の圧迫とは程遠い本物の木星のような
空気による重力を浴びた晴明の表情は固まる。
「やるぞ!!!」
桃子と合わせる様に踏み出した陽菜と光。そして拓郎と火嶽も晴明の元へ踏み込んでいく。
この場にいる全員が接近戦以外もこなせるオールラウンダーだが、
それでも踏み込む決断をつけたのは各々の役割をはっきりとさせるため。
これだけの相手に全てをこなしては隙が生まれる。それなら戦う距離を決めて
集中して戦うための選択だ。
(頼むぞ・・・!!)
だが、集中すると言っても実力が上がるわけではない。あの剛腕をその身に受ける恐怖。
そしてプレッシャーは計り知れない。それの恐怖を少しでも軟げるために
重力で奴を縛り上げる。
「フッ・・・!!!」
怒りのまま得物を振るう桃子。いつもの型にはまった綺麗な太刀筋ではなく、
荒々しく断ち切る事だけを考えた一撃を晴明は何とか避ける。
「クソッ・・・!!」
奴であっても当たればただでは済まない一撃を避けたが、追撃を凶刃が晴明を狙う。
体重みは反撃の選択肢を塞ぎ、必死に足を動かし避けることし出来ない。
「・・桃子の言う通りだな。アンタが間違っている。
俺がわざわざ出なくても、みんながアンタを倒してくれるよ。」
千夏さんと合流した純恋達やちーさん達も動き出す。この場にいる全員が
晴明を倒すためだけに動いている。
「強いだけじゃ・・・・・俺達は倒せねぇよ。」
思い返してみれば・・・今までと何も変わらない。俺が止めを刺すことが多かったが、
それまでの過程はみんなと共に戦ってきたじゃないか。
これなら戦える。確かに奴は強大だが・・・押し込める。
「・・・・・想像以上だな。」
そう確信したその時。この状況を打破するために奴が動き始める。
必死に攻撃を避ける奴の肌には無数の傷が付いており、このままいけば深い傷や
致命傷を与えられる。
考え方、そして力の合わせ方でこうも簡単に状況が変わることを奴は知らなかったのだろう。
だが、それが俺達の勝利を決定づける事ではない事も俺達はよく知っている。
「このままではマズイ。奥の手を使わせてもらおう。」
迅速な判断をつけた晴明は取り出した札を胸に張り付けると爆発的なまでの神力が
辺りに放たれる。俺が生み出した神力での空気操作に負けないほどのすさまじい力。
それは再び桃子達を吹き飛ばすが、今度はしっかりと着地を成功し、
再び晴明へと視線を向けるが捕らえた視界には二つの影。
「陰陽師らしく、式神を使わせてもらおうか。」
奴が取り出したのは式神。それがこの神力の正体なのかはわからない。
だが、すさまじい力を持った奴を呼び出したのは間違いない。
それを証明する様に、すさまじい力と見た目をした何かが晴明の隣に立っている。
「”道長”殿。頼みます。」
道長と呼ばれた何かは大きな雄たけびを上げる。
ナメクジのような体に棘を生やした巨体。それが・・・クトゥルフの神々であることを
俺達が察するには十分な姿形だった。
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