第四百七十話 真の力の効果
辺りの空気操作を始めた瞬間。全員の意識がこちらに向く。
「・・・・・・!?」
戦いの最中だ。敵から視線を離す事は無い。だが、俺の空気操作に対して
明らかな警戒を向けている事だけは肌で感じることができる。
(なんだ・・・?)
いつもの感覚。いつもの空気操作。辺りの俺の力を感じれば何かをしようとしていることぐらいは
ここにいる実力者であれば簡単に気が付くことができるだろう。
「・・・・・龍穂。」
俺の隣に立つ純恋が声をかけてくる。その表情は不安に満ちており、
一体何をしているのかと言わんばかりの視線を俺に突き立てていた。
「何を・・・・するつもりや?」
「何って、俺も戦うつもりだよ。そのために空気操作を———————————」
話しかけてきた瞬間。何かがこちらに向けて撃ち放たれる。
空気を裂きながらすさまじい勢いで向かってくる何かを防ぐために空気を固めると、
それはピタリと動きを止める。
「・・・・・・・・・・・・・。」
飛ばしてきたのはもちろん安倍晴明。手には札が持たれており、注連縄が巻かれている
白い大きな岩が宙に停まっていた。
手に持っていた札から出していた様だが、すさまじい殺気がこちらに向けられている。
「・・正体を現したな。」
正体・・・。別に俺は何も隠していない。
「・・・・・何がですか?」
「何がじゃない。これが本当の実力だな?神の力をその身に宿した本当の力。
それを隠すなんて無粋以外の何者でもないぞ。」
無粋か・・・。さっきハスターに言われたことが現実になってしまった。
本当に隠していた訳ではないと言い訳するには遅いだろう。
「・・貴方の相手は俺だけじゃない。今は目の前に集中したほうがいいのでは?」
こうなればこの状況を生かして立ち回るしか選択肢が残されていない。
この力を加減して扱う事でこの力を慣れていくしかない。
俺の言葉を聞いた全員が晴明に向けて攻撃を放つ。
『お前が力を使うだけで敵にとっては大きな存在感を与える。
今までの戦いより遥かに味方は戦いやすくなるだろうな。』
明らかに俺に対しての警戒に意識を奪われ迫る桃子達への対応がおろそかになっている。
力を持っている。それを相手に伝えるだけでもこれだけの効果があるとは
思わなかった。
『・・・・・龍穂君。』
押し込むまでにはいかないが、鍔迫り合いが出来るほどまで晴明の集中力を削いでいる中。
千夏さんからの念話が届く。
『どうしました?』
『何が起きたのですか?そちらの様子がここからでは分からないのです。』
神力での空気操作に異変を感じた千夏さんが思わず連絡をして来た。
仕掛けようとして来たタイミングでの体に伝わってくる異変。
俺達のみに何が起きたのかと心配になってしまったのだろう。
『細かい説明は省きますが・・・俺の空気操作を魔術から神術に変えました。
誰も怪我をしていませんし、俺達は千夏さん達を待っている状況です。』
俺の仕掛け。こちらに致命的なダメージは無い。
それを聞いた千夏さんは安堵のため息を吐いた後、不機嫌そうな言葉を送ってくる。
『・・念話を簡単に遅れない相手であることはわしも身をもって知っている。
だが、お前の強大な力は周りにいるわしらにも大きな影響を与えることぐらい
お前は知っているだろうが。』
・・声は千夏さんだが、この口調は完全に青さんのもの。
どうやら神融和を行い、何かを仕掛ける算段なのだろう。
『それに・・・わしが遠ざけていた力を簡単に使いおって・・・。』
ぶつくさ言っている青さんの様子を確認したハスターが俺の声をかけてくる。
『そのおかげで、ここまでの道のりが険しくなったと言い返してやれ。』
『・・その声はハスターだな?まったく・・・貴様の力は強大だが、
それゆえに技術に対しての繊細さが全くない事が欠点だ。それを突かれ————————』
強大だからこその弱点。それに対して青さんが不満を露わにしており、
ネチネチ言っていると、ハスターが俺の念話を通して口を挟む。
『そこまでだ。龍穂には神術での空気操作で仲間を支援しろと命じてある。
龍穂の性格上、大切な仲間を傷つける事だけは避ける。
その上であの男を倒すことで繊細な感覚を習得できるはずだ。それで構わないな?』
青さんの話しを都合の悪い様に遮るハスター。
『・・分かった。だが、一つだけ忠告しておく。これはお前だけではなく、
ハスターも含めておる。奴はわしらの力だけでは決して倒せる相手ではない。
被害を出したくなければお前が決めろ。もちろん、純恋達の支援をしつつじゃ。』
火嶽や桃子達と互角の戦いをしている晴明だが、俺の空気操作への警戒を解いていない。
それすなわち前方向への警戒をししつ、目の前にいる敵をいなしている事になる。
いつ何が起きて良い準備を整えつつ、相手を出来る様な実力差がある証拠であり
いずれは俺が決着をつけに来ると既に予想している。
『・・分かりました。』
青さんの言う通り、誰一人として失いようにするには俺が決めるのが一番。
だが、みんなが舐められているこの状況もいただけない。
『俺が支援しますから千夏さん達の仕掛けてください。必ず守ります。』
俺達は部隊。決して俺単体で成果を上げてきたわけじゃない。
晴明からの評価を覆させるのが俺への成長にもつながるはず。
ここは・・・申し訳ないが、屈辱を受けてもらおう。
「・・・・・・・・・・・!!」
辺りの空気を動かし始めると、晴明が反応を見せ懐から札を取り出すと
すさまじい空気を辺りに放ち、楓達を引きはがす。
「来るなら来い!!!」
一向に仕掛けてこない俺に痺れを切らしそうになっている晴明は今にもこちらに
踏み込もうとしている。だが・・・俺は決して戦いを仕掛ける気はない。
空気を動かしたのはフェイク。俺に意識を向けさせるための動き。
「・・いいでしょう。」
俺はわざとらしく手を伸ばす。今か今かと俺の攻撃を待つ晴明だったが、
仕掛けてこない俺にとうとう痺れを切らせて飛びかかってくるが、俺の拳が届くことは無い。
「!!!」
目の前で吹き飛ばされた晴明。あの巨体の勢いを全て殺すほどの一撃。
体の側面を狙った鋭い牙は晴明の首を狙うが、牙を手で掴み窮地を脱する。
「行きましょう!!!」
その一撃を放った正体である千夏さんが残りの仲間達を引き入れてこの部屋に入ってくる。
打ち合わせをしたであろう規則正しい動きによって配置された木星達の反撃が
始まろうとしていた。
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