第四百六十九話 魔術と神術の違い
日ノ本でも有数の力を持つ神。古代の神の力を上回るには相当な力が
必要になってくる。
『・・龍穂。』
それだけの力を打ち放つにはどうすればいいか。思考を巡らせていると
ハスターが声をかけてきた。
『どうした?』
『先ほど風を吹き飛ばされたな?あの力が何なのか深くは分からないが、
あれを上回るにはそれなりの力が必要だぞ?』
今まで発破をかけられることは無かった。志那都比古神の力は俺の想像を
ゆうに超えてきている証拠だ。
『分かっているよ。』
『それならいいんだが・・・一応言っておく。あれは超えるには魔術では厳しい。』
魔術では・・・厳しい?それは俺の実力不足という事か?
『そうじゃない。お前の魔術は本物だ。だが・・・・・魔力という力には
どうしても限界がある。』
『・・限界?』
『要は出力に限界があると言う事だ。魔力という力は結局の所人間が使うための力であり、
それに合わせた技術が魔術だ。それに対して、奴は神本来の力をそのまま扱えるほどの
技術や力をその身に宿している。』
『それはそうなのかもしれないけど、魔術は極めていくと
神術近づいていくと俺は聞いたぞ?質や出力の高い魔術じゃだめなのか?』
『その言葉こそ、魔術の限界を現しているではないか。
どれだけ高めても魔術は所詮魔術。これからは神術を使っていけ。』
魔術は所詮魔術・・・か。決してハスターの考えが理解できない訳じゃない。
その名の通り、神術というのは神の力を扱う技術。高位存在である神の力に
俺達人類が使う力など敵うはずがない。
『・・分かった。』
これは賀茂忠行との戦いを見据えた指摘なのだろう。拒否する理由は何一つなく、
そのまま素直に受け入れるが、ハスターの力を神術で放った経験が一切なく、
どうやって放てばいいのかすらわからない。
『やり方は簡単だ。今までお前が使ってきた力を全て神術に変換するだけでいい。
長い祝詞など一切不要。たったそれだけで・・・見違える様な力を放つことができる。』
『たった・・・それだけ?』
神術はそれなりの過程が必要。その理由としては一つ。
俺達人間は神の力を借りなければならないからだ。
「桃子さん!!行きましょう!!!」
「分かった・・・!!!」
ハスターの言葉に困惑しながらも、桃子達は晴明に仕掛けようと踏み出していく。
先頭は火嶽。不死鳥の体を持つ火嶽であれば先程の様にただの打撃など通用しない。
『お前は意識していない様だが・・・無意識の内に俺の力を魔術として打ち放っていた。
神である俺の力を魔術として放てるなど、なかなかいないだろうな。』
『・・いや、いるじゃないか。』
隣に居る純恋。桃子、楓、千夏さんなど俺は数多く見てきた。
むしろ、それが普通だと思ってきたが・・・その認識が間違っていた?
『純恋は天性の才能を持っているようだが、他の奴らは相当な修練を積んだ末に使っている。
それがよく分かるのが楓だ。あやつ、お前から受けた力に飲まれかけていたのを
覚えているか?』
確か・・・実朝との戦いで楓の体に異変が起きていたはず。
直接見たわけではないのでその様子は分からないが、それが今の話しとどう関係があるのか
まだピンとこない。
『神と人間という存在にはそれだけの差があると言う事だ。例え神融和をしていても
神の力を使うと言うのは相当リスクがある。神の力に精神が蝕まれ、
人間ではなくなってしまう。深き者共達が良い例だ。』
あの時・・・。楓は命の危機にあったという事か・・・・・。
『・・悪いことをしたな。』
『馬鹿者。楓はお前の隣に立ちたい一心で戦っている。幼いころからの関係とはいえ、
必死に戦う者に対しての気遣いがその者をどれだけ痛めつけるかぐらいわかっているだろう。』
ハスターだけにしか聞こえない会話とはいえ、二度とそんなことを口にするなと叱れる。
いつもであれば思いを抑える所だったが、親しい楓だからこそ心の奥底で謝罪をしてしまった。
『まあいい。ひとまずだ。お前になら俺の力を神術に乗せて撃ち放つことぐらいは容易い。
だが、一つ注意点がある。』
勢いよく向かっていく三人を見て、晴明は構えを取る。武術での戦いに持ち込む気だ。
『・・隙が大きいとかか?』
『違う。特別な詠唱などは必要ない。必要なのは加減だ。』
調整・・・?敵を打ち倒すための技術であるはずなのに加減など必要ないはず。
全力で打ち放ち、全力で相手を倒す。それが戦いの基本。
加減などという気遣いをすればそれこそ相手に失礼だ。
『いつも様に、魔術と同じ感覚で放ってみろ。ここら一体が吹き飛ぶぞ。』
『吹き・・・飛ぶだって?』
逸話の中のハスターの力は確かに強大だ。だが、ここら一体が吹き飛ぶなんて言われても
そう簡単に信じることはできない。
『ああ。お前がその気になれば全てを破壊できるだろう。それこそ、日ノ本全てもだ。』
『そんな・・・・・。』
『はずがないとでも言いたいのか?いい機会だ。試してみるといい。』
試してみろなんて言われても・・・脅しのような言葉を聞かされれば体が動くはずがない。
言葉通りに試して加減を間違えれば全員が巻き込まれる。
そうなれば・・・命を落としてしまうだろう。
『全く・・・怖気ずくな。ならばまずは味方の援護から始めろ。』
味方の援護・・・。接近戦を仕掛ける三人だが、俺の魔術を受けながらも
激しい攻撃をいなしている晴明相手に膠着状態に持ち込まれてしまっている。
隣に居る純恋も太陽を打ち放つが簡単に避けられており、さらなる一手が求められていた。
「・・・・・・・・・・・・。」
奥から千夏さんと青さんが何かを仕掛けようとしている。
その援護となると・・・相当繊細な空気の操作が必要になってくる。
『これもお前のためだ。今までと同じく、味方を守りつつ勝利を収めろ。』
安倍晴明相手に加減して勝てるなど考えられないが仕方がない。
ここはハスターの言う通り、神術を使って勝利を収めるほか選択肢は無い。
全ては賀茂忠行、そしてクトゥルフに勝利を収めるため、今まで使っていた力を
神術へと変えて空気を操作し始めた。
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