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第四百五十七話 不機嫌な晴明

現れた安倍晴明。外に繋がる壁の前に立つ俺達を見つめながらため息を吐く。


「ここにいる奴ら、全員ぶっ殺してやったよ。お前達の”最後の壁”になるためにな。」


俺達と戦うにふさわしい場所に選んだのは・・・ルルイエ。


「まあ、出払っている奴らもいる。全てを倒したとは言い難いがな。」


その口ぶりとは裏腹に、身に纏っている衣服に傷は無く、返り血さえも無い。

だが、嘘をつくような人ではないだろう。返り血さえつかないほどの実力差で

この内部にいる奴らを圧倒した様だ。


「・・なんでこの場所なんだ?」


「御師匠の指示だよ。戦場から離れさせろってな。

まったく・・・良いように使われて嫌になるぜ。」


賀茂忠行の指示・・・。遠く離れたルルイエにわずかな配下を残して

安倍晴明だけを残した・・・。


「・・・・・龍穂くん。」


千夏さんが声をかけてくる。それは・・・俺と同じく嫌な予感をひしひしと

感じ取っていたからだろう。


「腹、括ろうぜ。お前達は・・・いや、俺達は”はめられた”らしい。」


遠く離れた場所をわざわざふさわしい場所に選んだという時点で疑うべきだった。

また時間稼ぎ。賀茂忠行は俺をどれだけ恐れているのだろうか?


「昔っからそうだ。あの人は用意周到で完壁主義。目的の邪魔になるものは

あらかじめ排除し、逃げ場を失くしつつ消耗させる。

そして・・・ごちそうを目の前にした子供の様に得物を貪る。」


そのごちそうは・・・俺。まずは俺達以外の仲間達を殺す算段らしい。


「まあ、あの人でもかなり手の込んだ策だよ。かなり警戒されている証拠だ。」


今までの相手なら、もう決戦まで持ち込まれていただろう。

だが、一つだけ気に食わない事がある。


「・・あいつには時間が無いんじゃなかったのか?」


寿命が近づいている。それが奴の数少ない弱点。

その情報を頭の中に入れていた俺達は奴が時間を使ってくれている事をむしろ好機だと

考えていた。


「ああ。あの人には時間が無いよ。力を使えば使うほど、命を削ることになる。

だが・・・それだけを鵜呑みにした君達は大きな認識違いをしている。」


「勘違い・・・?」


「師匠の寿命。それはその身に施した強大な神術・・・いや、呪いの力によって

永久とも呼べるほどの長い力によって伸び続けている。

その源になっているのは・・・なんだ?」


奴の寿命の元となっているもの。それは俺の因果とも呼べる賀茂家にもたらされた

長きに渡る呪い。


「・・子孫の命。」


「そうだ。子孫の血肉を喰らい、その命を伸ばし続けている。

だが残された子孫は君だけ。その事実が師匠にどんな選択肢を取らせるか・・・わかるか?」


選択肢・・・?子孫が俺しかいない状況では取れる選択肢は限られるはず。


「・・・・・・・・・?」


「分からないか。では質問を変えよう。君は食事の際、自分の好物を最後の残すか?」


「えっ・・・?」


訳の分からない質問に驚いてしまうが、いいからと迫る晴明の気迫に押され、

仕方なく答える。


「・・・・・はい。」


「師匠と同じだ。好物以外の食事は邪魔。手を合わせ、食事を終えた時に

味覚が脳に伝える最後の味。その幸福感を長く味わいたいがための選択。」


「・・何が言いたいんですか?」


「今回の一件で違うのは・・・これが”狩り”と言う事だ。

狙いの得物の痩せ細り、まだ食べ頃ではない。

だが、周りには豊富な作物があり、時間が経てば食べ頃になる。・・君ならどうする?」


それは・・・答えは一つ。出来るなら美味しいものが食べたい。そのためなら

少しは待つことぐらいはできる。


「・・待ちます。」


「その得物が君自身だ。最後の食事を最高のものにしようと目論んでいる。

力のつけに付けた君を食し、後千年は生きてやろうぐらいは思っている事だろうな。」


俺との距離を離すのは時間稼ぎではなく、俺に力をつけさせるため・・・。

食事を最高のものにするため、俺を調理している気でいるのだろう。


「どれだけ寿命が迫っていようと、君を口に出来れば問題は解決する。

だからこそ、師匠は時間を使っているんだ。君を成長させるためにな。」


だが・・・それには当然リスクがある。成長した俺に倒させる可能性を秘めている。


「分かるか?君は舐められているんだよ。」


そう。それを無視しているという事は、単純に俺をいつでも倒せると

高を括っているという事だ。


「それは・・・許せませんね。」


奴とまともに戦ったことは無い。実力差が分からないこそ、端から負けるとは思っていない。

あの時。ショッピングモールの屋上の時の俺とは格段に強くなっている。

圧倒は出来ないだろうが・・・戦えるはずだ。


「その意気だ。んで、俺にとってしみれば・・・だ。

別に師匠の意向を汲む必要はない。こんなに距離が離れているんだからな。」


この状況の説明を終えた晴明がわずかな殺気をこちらに向けてくると、

十二天将達である青さんや騰蛇、そして白虎が飛び出してくる。


「はっきり言おう。俺は君達をここから生かす気は一切ない。

それが・・・日ノ本のためだと本気で思っているからだ。」


殺気の理由を簡潔に述べてくる。俺を・・・ここで殺す気だと言い放つ。


「君さえいなくなれば、師匠の目論見は消えて無くなる。それすなわち・・・

あの人が死ぬのは時間の問題だ。」


「・・貴様の悪い癖だ。先を見通して行動しろと何度も言っている。

ここまで龍穂が歩んだ道のりを否定するのは、日ノ本の未来を否定するのと同義なんだぞ。」


「何千年と続いてきた国がたった一人失っただけで崩れる事など

あり得ないことぐらい俺にも分かる。それに・・・俺には未来が無いからな。

そこまで長い事を考える必要もないだろう。」


青さんの説得を受けても、安倍晴明を止まる様子を見せない。


「それに・・・俺を糧にするなんて思っている奴を見返さんと気が済まんからな。」


・・こちらが本心なのだろう。だが・・・・・俺達としても戦いやすい。

未来が無い相手に勝てなければ、未来を掴み取る事なんて夢のまた夢。

それに・・・悪意や使命などを持たない敵と戦う事が出来る貴重な機会だ。

伝説の陰陽師相手に勝てれば・・・俺達は大きく成長できる。


「・・そうか。じゃあ・・・俺達は賀茂忠行の手のひらの上で踊らせてもらおう。」


「ほぉ・・・。余裕が出てきたな。」


俺の言葉を聞いた安倍晴明は嬉しそうに拳を構える。

伝説の陰陽師との戦い。俺達の糧にするための戦いの流れに身を任せた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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