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第四百五十四話 黒き男の正体

扉の先にいる人影。これは・・・妖怪ではなく、確実に人だ。

奇襲があること自体は警戒していたがまさか、これだけ早く仕掛けてくるとは誰も

予想出来ていない。


「・・どうする。」


指示を仰ぐちーさん。俺達が開けようとしている龍脈の出入り口の扉は決して大きくはない。

狭い通路での奇襲は圧倒的に仕掛けられた側が不利になる。


「ひとまず・・・俺が先頭を変わります。」


ちーさん達が持つのはほぼ全ての距離に対応できる小銃だが、

僅かな欠点として銃弾が飛ぶ向きが直線しかない事と、近距離戦はかなり不利になってしまう。

もちろんアーミーナイフも銃を持つ手に持っているが、

扉の先にいる敵相手にわざわざ不利な仕掛けをするより俺が前に立った方が早い。


「前衛は前に。魔術神術は全て俺が引き受ける。突っ込まれた時の対応を頼む。」


「・・了解。」


ちーさん達を筆頭に、桃子、楓。そして火嶽が前に出てくる。

拓郎も前衛を務められる実力はあるが、柄の長い槍という武器の特性上

狭い通路での戦闘は不向きと判断し、足を止めて後衛との間に動いてくれた。


(さて・・・・・。)


強い。空気から感じる圧倒的強者。しかも強い陰の力を感じられる。

もしかすると賀茂忠行の配下ではないかという予想を立てるのは簡単だ。

だが・・・これだけの力を持つ人の配下を奴が残しているだろうか?

もしかすると安倍晴明のような過去の強者を呼び出したのかもしれないが、

ここでもじもじしている暇が俺達に残されているわけではない。


「・・開けるぞ。」


この扉にはドアノブが付いている。これが捻られた時、敵に俺達の存在をわざわざ

報せる事になり、先手を取られるどころか狭い場所での一撃は全滅の可能性を含んでいる。

ドア内部の空気を操作し、ゆっくりとドアを開けていきつつ

動きがあればすぐさま対応できるように黒い風を送りこむ。


「・・・・・俺だ。」


黒い風で外にいる人物を包もうと試みるが、聞こえてきたのは兼兄の声。

聞いたことのある声だが、心は緩むことは一切ない。


「・・・・・・・・・・・・。」


人型。だが、空気の操作を何度も行ってきた俺の脳はその姿形を覚えている。

あまりに濃い陰の力。例え声が似ていても、兼兄ではないと海馬が訴えかけてきていた。


「・・騙されると思ったか?」


気を緩めるなと、警戒を示すハンドサインを後ろにいる全員に見せながら

ゆっくりとドアを開ける。

敵の体には黒い風が張り付き、少しでも動けば皮膚から肉、そして骨まで消えてなくなる。


「・・どんな状況でも警戒を解かないのは良い事だ。」


開かれた扉の先。そこには黒い風に包まれた・・・黒い顔の化け物が立っている。

兼兄の肉声を放つ口の中は肉が詰まっていたが、たったそれだけの理由で兼兄だと

決めつけるには早く、未だ人かどうかさえも怪しい。


『・・楓、桃子。』


出来れば正体を知りたい。だが、強大な力がそれは難しいと教えてくれている。

楓と桃子を念話で呼び寄せると、二人は神融和を行った状態で得物を構えながら

ゆっくりと俺のすぐ後ろで止まる。


「お前が兼兄なのか。それとも違うのか。正直に言ってどうでもいい。」


得物を構える楓の懐に手を伸ばし、クナイを取り出して黒い男に切先を向ける。


「・・正体を現せ。」


これが正体などと馬鹿げたことを言えばすぐさま切りつける。

一切の冗談を含まない殺意を込めた言葉をこいつに投げつけるが、大きな反応は無い。

時間稼ぎか。それとも・・・打つ手が無くなったのか。

どちらにせよ、待っている時間は無い。手に持ったクナイを強く握りしめ、

辺りに黒い風の弾を漂わせる。


「何も言わなきゃ殺す。」


これは脅しでも何でもない。相手にしている暇はないとこいつに知らしめるには

直接的な言葉より、殺意を直接ぶつける方がより効果的。

何時でもヤれる。そんな姿を見せつけると、唯一色を付けた口内をこちらに見せつける様に

通路に響く大きなため息を吐いた。


「ったく・・・。結構信用されていると思っていたんだがな・・・。」


この状況でぼやいて見せた黒い男。すると黒く染まっていた男の額が

突然人間らしい肌色に変わっていく。


「・・・!?」


まるで海の様に引いていく漆黒。よく見るとそれは足元から伸びていた影であり、

その下にはいつも見慣れた兼兄の顔が現れた。


「・・これでいいか?」


どこからどう見ても・・・兼兄。だが、たったそれだけでは信用をするに値しない。


「・・・・・ダメだ。」


なぜ自らの体には影を張り付けたのか。何故その状態を維持していたのか。

竜次先生達が戦っているにも関わらず、なぜこんな所に一人でいるのか。

色々と聞かなければ信用することはできない。


「そうか・・・。まっ、そりゃそうだよな。」


ここではぐらかすようならクナイを突き立てるだけ。何故なら、

本物の兼兄は信用を得るために素直に語ってくれるはず。


「なんでこんなことになっているのか話す。拘束も剥がさなくていい。」


そして・・・俺の予想通り、兼兄は何も隠す素振りさえ見せずに語り始めた。


「まず第一に。俺は単独行動をさせてもらっている。

春伝手だが、竜次達にもこのことは共有済みだ。」


単独行動ともなると毛利先生が怒りそうなものだが、どうやらそれなりの事情がある様子。


「あいつらに詳細は伝えていないが・・・簡潔に言おう。俺はルルイエ内部に侵入してきた。」


「東京湾に浮上した島だな?」


「そうだ。泰国から聞いたみたいだな。龍穂達も知っての通り、

あそこにはクトゥルフが封印されていると言われている。

だが、賀茂忠行に式神として使役されている事を考えると、その通説も怪しくなってくる。

竜次達が賀茂忠行と戦ってくれている間、俺は俺で情報を出来る限り集めていたんだよ。」


なるほど・・・。一人でいた理由はそれか・・・。納得のいく理由だが、

まだ拘束を解くには至らない。


「そんで、内部に侵入したんだが・・・クトゥルフの影響が強くてな。

奴が封印されている島が地上に現れただけで、地球上の全生命の正気を狂わせるほどだ。

こうして影に身を包まないと、正気を保っていられなかったんだよ。」


「じゃあ・・・なんでそのままここに来たんだ?

影に包まれていたら俺達に怪しまれる事なんて分かり切っていた事だろ。」


「東京結界が再展開されたからだ。あの結界には内部ある邪気を全て払う効果がある。

それはクトゥルフの影響でも例外じゃない。遺跡内部の調査を俺が行う必要が

なくなったことで一時的に戻ってきた訳だ。」


・・手ぶらで帰ってくるような人じゃない。侵入したのなら、必ず何かしら情報を

もって帰ってくるはず。


「・・何かあったのか?」


「ああ。あった。そこら辺を説明するから・・・流石に拘束を解いてくれないか?」


一応、ここまでの説明は筋が通っている。だが、最後にまだ本物か分からない状況で

解くの危ういと、最後の確認としてちーさんにお願いする。

獣するとの姿に近づいた姿で、泰兄の首元に顔を近づけると眉間をしかめつつ

此方を向いて大きく頷いた。

獣の嗅覚は人間より高性能。その中でも人間の百倍嗅覚を持っており、

匂いで本物との区別をつけられるほどだ。


「・・分かったよ。」


本物だと確証を得て、黒い風の拘束を解く。

ニャルラトホテプさえも従える兼兄がわざわざ退いた理由。俺達はその情報を知る必要がある。

動くことが可能になった兼兄は体を伸ばすと、俺達に向かって再度口を開いた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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