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第四百五十二話 二度目の別れ

龍脈を活性化させた泰兄。その事実は賀茂忠行が仕掛けた罠が真実であったと

俺達に知らせてくれている。


『私の勘違い。それは・・・賀茂忠行の封印はこの龍脈ではなく、

東京結界自体に仕掛けられていた物。であれば・・・何とかすることができる。』


認識を違わせる事で泰兄をだまし、俺と会わせる事で分断を狙う。

たった一つの嘘で、ここまで時間を稼がれるなんて・・・。


『さあ、ここまで何度も焦ってきたあなたならわかるでしょう?ここで動けば敵の思う壺。』


仕掛けは既に始まっている。であれば・・・焦らず出来ることをするしかない。

俺が戦場に向かうまでの時間稼ぎを行うのが敵の狙い。

そして・・・・・それはうまく機能してしまっている。


「・・・・・泰兄の言う通りだ。俺達は俺達がやるべきことをするだけ。」


足掻けば足掻くほど、敵の思う壺。それは定石であり、俺達も従うべき。


「俺は仲間がいる。それはここにいる人達だけじゃなく、上で戦っているみんなもそうだ。」


あの人達なら賀茂忠行に倒せることは無い。必ず粘ってくれる。

奴が俺を恐れているのなら、俺という存在をいかにうまく使う事をここでは考えるべき。


『・・成長しましたね。』


頼る。頼って・・・そして頼られる。俺達は支え合って戦っているんだ。

それを・・・・・純恋達は教えてくれた。これ以上、裏切るべきではない。


『ですがそうは言っても、あなた方が何かを起こすのは難しい。

それは当然の事。あなた方は戦場に立ってこそその力を発揮する。』


残るは・・・泰兄。今まさにそれを行おうとしてくれている。


「・・何をする気なんだ?」


『敵の仕掛けは分かった。そして・・・その脆弱性もです。

そこを突けば”東京結界の再展開”が可能です。』


「えっ・・・?」


泰兄の口から出てきたのは不可能と思われていた東京結界の再展開。

龍脈を支配されていたと勘違いさせられていたのは知っているが、

東京結界の術式自体に封印が掛けられているとなると復活は難しいだろう。


「でも・・・それは・・・・・。」


「いえ、もしかすると泰国さんであれば可能かもしれません。」


出来ないんじゃないかと言いかけたその時。声を上げたのは胸の中にいた千夏さん。


「えっ・・・?」


「分かりやすく言うのであれば電力が絶たれたのか、機械が壊れたのかの違い。

龍脈が残っているのなら・・・まだやりようはある。」


もう大丈夫だと立ち上がった千夏さんは、先ほどの姿はどこに行ったのか

胸を張りながら語り出す。


『その通り。ですが・・・口で言うより遥かに難しいのは事実。

一番早い話しが東京結界ほどの術式を私が構築する事ですが、

それはあまりに時間が足りない。』


東京全土を守る結界をこの場で、しかも限られた時間では難しいのは当然の事。

だが・・・時間をかければ出来なくはないと言い張る様な姿は

やはり生きていて欲しいと俺達に思わせる。


『ですから・・・”封印を解除する”。それが一番手っ取り早い。』


「いや・・・。それもさっき言っていた事と・・・。」


『何も分かっていませんね?状況が一つ変わっただけでも打てる手が変わった。

まあ、私の説明不足でもあるのですが・・・可能になったという事なのです。』


そうは言われても・・・説明が無ければ納得できない。封印されている箇所が変わっただけで

一体何が変わるのか。そんな不満を抱えている俺の表情を見た泰兄はため息をつくと、

やれやれと言った風に説明をくれる。


『龍脈に封印が施されていたのなら、封印を解いた後に結界の再展開が必要。

術式がシャットダウンしていた状態ですからどうしても再展開をしなければならず、

隙が生まれてしまうのです。』


「だけど、武田さん達がそれをしてくれるはずだ。」


『だからこそなのですよ。東京結界とは、奴らの勢いを止めるには十分な力を持っている。

実際、龍穂が戦った仙蔵さんや平さんの力はかなり抑え込まれていた。

あなた方は実感していないでしょうが、それほどまでに強力な結界なのです。

それが今まさに起動しようとしている事を奴が知った時、何が起こるでしょうか?』


あそこには人数を割いているが、最低限と言っていい。


「武田さんが・・・狙われる。」


『そう言う事です。この日ノ本の中でも、東京結界の術式を知るのは片手で収まる。

そんな人を失えば、再展開はほぼ不可能。

これは日ノ本の未来にも関わる事です。そんな博打、私には打つことが出来なかった。』


少し前後しただけでもそれだけのリスクが出てくるのかと、自分の浅はかさを改めて知った。

確かに大きな博打であり、それは俺達の戦いだけではなく

この先の日ノ本が大きく揺らいでしまう可能性さえも見据えていたという事か。


『ですがその博打を打つ必要がなくなった今。私は先を考えることなく、

全身全霊この身を使い、封印の解除に使うことができる。

まあ・・・元から先などない身でしたから深く考える必要もないかもしれないですけどね。』


強力な封印をどうやって解くのか。問題はそこだ。

全身全霊・・・この身。それは即ち・・・そう言う事なのだろう。


『封印術式を解くことは叶わない。それほどまでに強力な封印です。

ですが・・・術式に”楔”を打つことはできる。』


魔術、神術ともに術式があってこそ効果を放つ。

四大元素や神の力を方程式によって成り立たせて打ち放つ。

高度な術式であればあるほど複雑な術式が組まれており、そこに楔が打たれれば

一気に機能を失う事になる。


『楔の媒体は・・・もちろん私の魂。微弱な力なので長くは持ちませんが、

それは賀茂忠行も同じ。必ず早期決着を仕掛けてくるでしょう。』


状況を理解している泰兄は、俺達のために振り絞った力であっても事が足りると踏んでいる。

もちろん・・・俺も、その間に決着をつけるつもりだ。


『念のため一つだけ言っておきますが、結界の残り時間を気にして焦る必要はありません。

東京結界が失われたとしても、賀茂忠行を討ち果たすことの方が優先順位はもちろん高い。』


「・・分かっているよ。」


自らの魂を俺達のために使い、東京結界の再展開を行ってくれる。

これほどまでに・・・頼りになることは無い。


『東京結界を張れれば、東京の破壊を最低限に抑えられる。

そして、東京から奴らが出る事も出来ない。そうすれば・・・日ノ本の民への被害は

抑えられるでしょう。これで・・・あなたが背負う因果を一つ背負う。間違いありませんね。』


誰も異論を唱える事などない。この人は俺の重荷を一つ受け入れてくれた。


「・・・・・ああ。」


『よろしい。ですが・・・念を押しておきます。この代わりに私のお願いも

確実に果たして欲しい。・・いいですね?』


日ノ本を守る。それが泰兄のお願い。俺からすれば泰兄の願いの方がこの身に重く

のしかかるが、その重さは心地よく、そして・・・意義を与えてくれる。


「・・・・・絶対守るよ。約束だ。」


俺の返答を聞いた泰兄は満足気に笑みを浮かべると、再び龍脈へと手を伸ばす。

すると先ほどとは比べ物にならないほどの光を放ちだし、その光が

透けていた体が龍脈へと取り込んでいく。


「・・泰兄!!」


最期にどうしても声をかけておきたい。感謝、謝罪。どれを選べばいいのか分からないが、

少しでも良い終わりを迎えるための言葉を必死に探し出す。


「・・・・・また、会えるよな?」


こんなことがあったのなら、もしかするとまた会えるかもしれないと思わず尋ねてしまった。

思わず出てきた言葉があまりに未練がましいが、本心を吐き出せて後悔はない。


『・・それはどうでしょう。』


だが、返ってきたのは否定的な言葉。これが最後と言っていたので当たり前なのかもしれない。


『あなた方は善行を積んでいる。ですが・・・私がしてきたの間違いなく悪行。

もし会えたとしても、それは私の望む結末ではない。』


天国と地獄の事を指しているのだろう。あえて会えないという言葉を使わない姿は、

やはりこの人がどこまでも優しい人であった証拠だ。。


『会わない方が私としてはありたがいですが・・・人生何があるの分かりません。

もし会えたとしたら、その時はお説教をしてあげますからその時は覚悟をしてくださいね?』


「・・・・・楽しみにしているよ。」


「ふふっ。まったく・・・。」


俺のあまのじゃくな答えを聞いた泰兄は笑みを浮かべながら姿を消していく。


『・・先に逝かせてもらいます。いつでも・・・あなたがを見守っていますよ?』


そして・・・この人らしい言葉を言い残すと、光となって龍脈の中へ消えていった。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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