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第四百五十一話 泰国の勘違い

一人一人にお願いを告げ、千夏さんには懺悔を吐き出した泰兄は俺の方をじっと見つめてくる。


『・・龍穂。』


頬を流れる涙をそのままに、千夏さんから手を離して目線はそのまま。


「・・・・・・・・・・・・。」


何を・・・お願いされるのだろうか?泰兄は俺に何を求めている?


『何度も、何度も言わせていただきますが、あなたには我らの因果の全てを

背負っていただき、本当に感謝をしています・・・・・。』


因果。賀茂忠行とクトゥルフを中心とした日ノ本の闇。

それらに巻き込まれた泰兄達も・・・俺の使命の被害者だ。


『きっと・・・あなたは今、心の中で今の言葉を否定しているのでしょうね・・・。

心優しく、全てを背負ってきたあなたはそうするはずです。』


もう・・・俺の事など全て分かっている。だが、それでも俺は逃げる気はない。


「・・ああ。俺はもう・・・逃げないよ。」


『ええ。あなたは強い。それでいいのです。』


俺の決意を、泰兄は否定しない。


『あなたは前だけ見て進みなさい。もし、後や脇を狙う敵がいたとしても

貴方には心強い仲間達が少なくともこれだけいるのです。』


先ほどまでは俺だけと話していたこともあり、仲間達に対して言及することは無かったが

自らの存在もあったとはいえ、檻を破壊した後に一目散にこちらにやってきた

千夏さん達を見て慕われていると思ってくれたのだろう。


「・・・ああ。」


いや、この人なら俺の動きを逐一耳にしていてもおかしくはない。

きっと・・・亡くなる寸前まで、俺の歩みを遠くから見守ってくれていたのだろう。


『あなたを縛る因果。それらは今日ノ本の中核まで縛り上げている。

貴方に身にその重圧がのしかかる訳ですが・・・先ほども言った通り、それは

あなたの夢への最短の道。決してネガティブな意味を持っているだけではありません。』


千夏さんと同じ様に、俺の頭を愛おしそうに撫でてくる。

俺は・・・この人が亡くなって記憶を取り戻してから・・・ずっとこうして

欲しかったのかもしれない。


『あなたへのお願いは、もうわかっているとは思いますがこの日ノ本を守る事。

実力はありますが・・・大きな使命をあなた一人に背負わせるのは私としては心苦しい。

なので・・・・・一つだけ、私に分けて欲しいのです。』


「わ・・・ける・・・?」


既に命を落としている泰兄が俺の使命を背負うなど、物理的に不可能だ。

だが、その表情は真剣そのもの。一体、何をするつもりなんだ?


『あなたが背負う因果、使命。それは・・・非常に重い。

その中でも・・・大きな思いを、私が背負いましょう。』


俺の背負うもの。それらに優劣をつけるなど、俺には出来ない。

泰兄や兼兄、純恋達などの思いは全て同じ重量で俺の背中にのしかかっている。


『色々な思いがあなたの背中にのしかかっている。

ですがその中でも・・・一番あなたに重圧をかけるものを背負いましょう。』


「そんな事・・・出来るのか?」


俺が重圧から解放されるのは賀茂忠行を倒した時。

全ての因果の元凶を打ち倒さなければ、俺はこの呪縛から解き放たれることは決してない。


『難しいですが・・・出来る。ですが結局の所、最後はあなたが背負う事になる訳ですが・・・

少しの間、肩代わりを引き受けましょう。』


顔を近づけ、千夏さんと同じ様に額と額を合わせる。

そして・・・髪を逆なでる様にゆっくりと頭を撫でると、これが最後だと言わんばかりに

頭を優しく叩いて離れていく。


「あっ・・・・。」


『私が背負うのは・・・・・日ノ本の民への因果。

貴方に巻き込まれる形となった彼らの安否を、私が背負います。』


立ち上がり、俺達に背を向けながら龍脈の口に向かって歩いていく。

民達への因果なんて・・・どうやって肩代わりするのだろうか?


『東京大結界はこの龍脈の力を使い発言させている。それを賀茂忠行が決死の封印を行い、

発動を阻害している。それは説明しましたね?』


「だから、賀茂忠行を倒すしか・・・。」


『実は・・・私も少し勘違いをしていたのですが、正確に言えばそれは違う。

そしてそれは・・・賀茂忠行が施した術式には、大きな穴がある証拠なのです。』


自らの命と連結させた封印術。それがある限り東京結界は復活しない。

それは泰兄の口から出た事実だと、俺は思っていた。


「・・我々は詳しい事は分からん。龍穂とお前の間で交わされた情報なのだろう。」


本来であれば俺が説明しなければならないが、唖然としてしまい配慮を欠いてしまった。

それをカバーする様に、陽菜が口を開き説明を求める。


「あえて嘘をついたという事か?説明しろ。」


『そうではありません。未熟ながら、龍穂に説明している私の見解がそうであった。

当時はそう思っていましたが、あなた方と話している私の頭の中には

一つの疑問がずっと残されいた。そして・・・その謎がやっと、今解けたという事なのです。』


俺との長い会話の理由がここで明かされる。何があっても俺をここまで留めたのも

謎を解くための時間稼ぎだったのだろう。


『大きな勘違いは二つ。私はこの封印の対象を龍脈だと思っていました。

そして・・・この封印が賀茂忠行の命と連動した強力な封印だとも思っていた。』


「ふむ・・・。」


『賀茂忠行に魂と引き抜かれた私は、奴がそう言いながらこの封印を掛ける場面を見ていた。

いや、今思えばその光景を見せつけられていたのでしょう。』


「そう・・・思わせるためにか・・・。」


確かに、今思えば泰兄を封印に差し向けているはずなのに封印自体が

賀茂忠行が掛けているという二度手間を踏む理由がどこにもない。

そんあわけもない非効率をわざわざ選ぶのには必ず理由がいるはず。


『ええ。そのおかげで私は大きな勘違いをしていた。まんまと敵の策にハマってしまった。

龍穂の時間稼ぎから始まり、その全てを無駄な時間に当ててしまう所でした。』


「では・・・それらを全てひっくり返す策があると言う事だな?」


陽菜の問いに、泰兄は大きく頷く。皓から全てひっくり返せる方法など・・・。


『ある。といいますか、無理やりにでもそうさせていただきます。

それが、私にできるあなた方への最後の贐になりますから・・・。』


贐・・・一体それは何なのだろうか?その意図が掴めずにいると、泰兄は龍脈の口へと

手を伸ばしていく。もはや景色と同化していると言っていいほどに透けた指先が

龍脈に触れると、口は淡く光出し悲しみに包まれる俺達を照らし始めた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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