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第四百二十二話 木星のイメージ

異形の姿となった片野。もう、あの体には奴の意識はほとんど残っていない。

なぜこんなことになってしまったのか。俺が追い詰めたからか?

例えそうなのだとしても、奴に気を使っていたら命がいくつあっても足りない。


「・・・・・やろう。」


俺に出来るのはこいつを殺す事だけ。こんな姿だが、元は人間だ。

同じ種族だった者であり、こいつにとっての因縁の相手である俺だけが

引導を渡すことができるだろう。

作り上げていた四つの衛星を辺りに漂わせ、奴の出方を伺う。


「閃・・・光・・・・。」


伸ばされたいくつもの腕についた指先がこちらを指してくると、俺の周りの空気が変わっていく。


「!!!!」


小さく奴が放った言葉。それが何か悪さをしたのかとすぐさま動き出すが、

その答えが瞬く間に俺の隣を通り過ぎていく。

視界を白く染める閃光。そして遅れてくる轟音。その正体は雲もない場所で落ちた落雷。

奴が取り込んだ貴人の力だ。


(いつのまに・・・。)


雷は強大な力を秘めている。空気の様にそこら中に浮かんでいるわけではなく、

魔術で雷を作り出し落とす必要があるが、奴は予備動作を一切見せなかった。

強いている言うのであれば呟いた後、伸ばした腕が怪しいがたったあれだけで

雷という強力な魔術を発動できるとは考えにくい。


「・・・・・!?」


色々考える必要はあるが、音速を超える攻撃に対し足を止めてはならないと

体を動かそうとしたその時。視界の隅に白い何かを捕える。

それは・・・先ほどの稲妻に沿ったようにそびえ立つ白い石。


「これは・・・?」


見たことない形状をした石の存在に思わず気を取られてしまう。

雷と・・・岩を合わせた術なんて聞いたことが無い。

突然の出現に生まれた僅かな隙を奴が逃すはずがない。辺りの空気が再び変わると

俺を狙う稲妻が天から下りてくる。


「くっ・・・!!!」


稲妻は空気を引き裂く。その道筋を空気の変化から予想し、何とか体を捻り避けていく。

一体どんな仕組みで発動しているのか上空を見て確認するが、触れれば多々では

済まないほどの力を発揮しているにも関わらず、予備動作を行っている様子はない。


「・・・・・・・・。」


だが、空気で感じ取ると先ほどまでなかった違和感を感じとることができる。

目に見えないほどに細かな何かが宙に浮かんでおり、それらがこすれた場所に

奴の魔力を感じとることが出来た。


(さっき壊した雨か・・・。)


衛星達で破壊した鉱石達は砂に変わった。その砂がこすりあう事で、

摩擦でわずかな電気を生んでいる。


「閃電路・・・(フルグライトライン)。」


奴はその小さな雷を一瞬で集めることで発動での予備動作を最小限に行い、

空気中に散らばる砂を集めて雷が落ちる道筋を作っている。

そして熱を生んだ砂は一瞬にして塊、白く濁った岩へと変化していた。


(これは・・・?)


雷で作られた岩・・・。これは一体なんだと思ったその時。

まるで生き物の様に動き出し、鋭い岩が俺の喉元を狙ってくる。


「・・・・!?」


意識を向けていたので何とか避けられたが、他の柱達も空気を裂いてこちらに向かってきている。

こいつ・・・このわずかな時間で自分に有利な状況を作りだしてしまった。


『焦るなよ。ここで隙を見せれば奴の思い通りだぞ。』


感じる空気の流れを読んで奴の攻撃を躱すが上空で雷がごろごろと鳴り響く。

これは・・・かなりマズいかもしれない。


「分かってるよ・・・!!!」


四方八方からの攻撃をこのまま受け続ければ、いつか捕えられてしまう。

とにかく打開が必要だと、衛星達に空気を震えさせる。

辺りに不可視の衝撃波を放つと、石柱は音を立てながら簡単に砕けていく。

辺りに先ほどまで岩だった砂が舞う。すると・・・それらが呼応した様にバリバリと

音を立てると、視界が赤く染まった。


紅放電レッドスプライト・・・!!!」


それが赤い雷と頭が理解する前に、背中に込められた脊髄が反応し辺りの空気を固める。

だが、雷の速度に完全な反応は出来ずに体に激しい痛みと熱が伝わってきた。


「グッ・・・!!!」


この岩は雷によって作られている。当然帯電しており、辺りに強力な雷を作り上げた。

俺が岩を砕くことを前提に動いている。正気を保っていないにも関わらず、

完全に不意を打たれてしまった。


『やられたな。面倒な術だ。』


「そう・・だな・・・!!」


鼻に肉が焼ける匂いが入り込む。これほどの一撃を喰らったのは何時振りか。

出来ればこの状況を立て直したいが、そうは言っていられない。

帯電した砂は風に飛び、近くにいる純恋や猛達の元へたどり着いてしまう。

ここで俺が踏ん張らなければ純恋達はやられるだろう。


(だが・・・どうする・・・?)


風で砂をどこかに吹き飛ばせばひとまずは安全だ。

だが、奴が雷を放てば岩の柱がそびえ立つ。それに・・・奴ほどの力があれば

砂を操る事など造作もないだろう。破壊してすぐに砂を飛ばせる事が出来れば優位は取れるが、

砂の動きを一瞬止めて先ほどの赤い稲妻を起こされればまた同じ様に

ダメージを負ってしまう。


「・・・・・・。」


体の痛みから、何度も喰らえない事は分かっている。

最短で奴への完全な回答を出さなければならない。必死に頭を回転させるが、

その片隅にはあの雄大な木星の姿が消えてなくならない。


『・・・・・出来そうか?』


急かすようにハスターが尋ねてくる。出来るかどうか・・・か。

出来るかできないかではなく、やるしかない。


「・・・・・ああ。」


決して具体的な策ではない。それが成功するのかさえ分からない。

だが、鮮明なイメージを持った木星の姿が俺に一つの回答を差し出してくる。


『やってみろ。お前なら出来るさ。』


辺りの空気を見ると、放電を終えた砂や岩がバチバチと音を立てながら

今度こそ一撃を喰らわせるために今か今かと待ち構えている。

このまま黒い壁を解けば・・・俺はやられてしまうだろう。

そしてそれを吹き飛ばしたとしても、大きな音を立てている雷が構えている。

奴の策を全てなぎ倒すほどの策を・・・放たなければならない。


「・・辰星の幻影しんせいのげんえい。」


壁の外に風を吹かせ始める。だが、これはただの風じゃない。

俺の頭に浮かぶ木星。ハスターが手にしようとしたその景色にあった暴風を再現しようと試みる。


『なるほど・・・。これであれば・・・。』


木星には地殻が存在せず、代わりに大量のガスに覆われているガス惑星だ。

生命体が存在できる環境ではなく、まさに死の惑星と言えるだろう。


(酸素を・・・!!!)


地球でそのガスを再現するのは難しい。その代わりに空気を分子レベルで動かし

大量の酸素と水素を辺りに集める。

空気中の酸素濃度は約20%。そして水素は0.00005%というわずか割合。

それらで完全な再現は難しいが、可燃性のガスとして使うには十分な量を集めることができる。


「・・超辰星爆発ちょうしんせいばくはつ。」


後は火種だが・・・奴が作り出す雷はそこら中に音を鳴らしている。

火種に使うには十分であり、黒い壁の向こうではすさまじい爆発が巻き起こる。


「・・・・・!!!」


これであれば奴に対してダメージを与えられる。だが・・・三体の神の体に秘め、

正気を保っていないのにも関わらず、俺の命を正確に狙う執念を持っているのであれば

簡単に倒れるはずがない。

再び辺りに砂や雷を起こし、再度同じ展開に持ち込もうと画策してくるはず。

だが・・・そんなことを想定していないはずがない。

木星という惑星はすさまじい速度の風が吹き荒れており、例え近くがあったとしても

人が降り立てられる様な場所ではない。


「・・・・・・・。」


黒い風を降ろし、辺りを確認する。視界がかすむほどの暴風の中。

奴はその吹き飛ばされまいと何とか踏ん張っているようだが、体を襲う空気の衝撃は

相当な負担をかけているはず。これが・・・ハスターが支配を目論んだ木星の姿。

俺が再現したのはほんの一部分だが、大気を司る神が支配を手こずるのは納得がいく。


「グガッ・・・!!ギギッ・・・!!!」


暴風の中。わずかな声を聴覚が広い、視線を向けるとそこには醜い皮膚をなびかせた

片野の姿があった。生命の息吹さえ感じさせないこの場所で、奴は俺に対して殺意を

向け続けている。


『やる気みたいだな。』


奴の執念をハスターは褒めるが、俺からしてみれば当然の景色だ。

こんな事で奴が負けるはずがない。当然、食らいついてくる。


「・・まだ始まったばかりだよ。」


まだ小競り合い。お互いの手の内をほんの少し見せただけ。

ここからが正念場だと、気を引き締めながら踏ん張る片野の姿を見つめていた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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