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第四百二十三話 禍々しい光

「くっ・・・!!」


片野と戦う龍穂の姿を遠くで眺めていた純恋達は、猛の体に隠れて暴風を耐えている。

龍穂が使った視界がかすむほどの強風は余韻が遠く離れた所までやってきていた。


「・・・・・純恋。」


同じく風に耐えている陽菜は、視線を風の塊に包まれている龍穂達に向けながら声をかける。


「なんや!!気になることでもあったか!?」


「あいつは・・・いつもあんな感じなのか?」


片野と龍穂の攻防。ほんのわずかな時間であったが、使われる魔力や神力とそれを扱う

技術はあまりに強大であった。


「こんなことは初めてやな!!」


「戦いの中で成長しているという事か・・・。」


お互いの持つ宇宙の神の力を存分に引き出しての攻防。

それは眺める人々の視線を集めるには十分な衝撃的ともいえる戦いだった。

そして・・・陽菜の心にはとある思いが沸き上がる。


「・・自分もあの力を持っていたらなんて思っているんちゃうやろな?」


純恋の問いに、陽菜は答えない。それは心に生まれて嫉妬がそうさせていた。

あれほどの力があったとしたら、どこかで父親を救えたのかもしれない。

二度とそんな思いをしない様にと鍛えてきた陽菜にとってしてみれば、

あのような異形の存在と対等以上に戦う龍穂の姿は交流試合で対面して時より

光り輝いていた。


「強い力は身を滅ぼすで。自分がどれだけ警戒していようとも、他の奴らかいいように

使われる。それは陽菜も分かっとるやろ。」


「それはそうだが・・・。」


「それにや。龍穂は命を狙われとる。それはあの力のせいちゃうけど・・・

間接的には関わっとるんや。」


強い風を受けながらも、純恋は陽菜に近づいていく。

そして・・・肩を叩き、眼を見つめながら語っていく。


「それに見ろ。龍穂が戦っている奴は化け物やけど、元は人間。」


「あれが・・・人間だと・・・?」


「そうや。身の丈に合わん力を無理やり身に着けた結果がアレなんやで。

陽菜も・・・ああなりたいんか?」


純恋の問いを聞いた陽菜は少し間を開けた後、首を横に振る。

力を求めることはあれど、化け物に成り下がるつもりはない。

純恋の言う通り、今の自分に合った力をつける事こそが人である自分には最善なのだと

折り合いをつけた。


「しかし・・・気になるな。」


「なにがや?」


「あそこまでして龍穂から勝利を勝ち取りたいという原動力は一体何なのかだ。

生半可な覚悟でああはならんからな。」


人として産まれてきた身である以上、その生を捨てるのは難しい。

どのような過程を経てああなったのか、自分とは違う道を選んだ片野を見ながら

疑問を言葉にする。


「・・詳しくは知らん。やけど・・・”そう作られた”んやろうな。」


「そう・・・作られた?」


「あいつは私達とは違う人生を歩んで来た。両親と共に暮らして学校に行って、

友達を作るなんてことをしてこなかった奴なんや。」


何も知らない陽菜に向けて、自らの持っている知識を与える事など純恋にはできなかった。

非人道的な実験施設があった事。そして・・・片野はその実権の被害者である事など、

知らない方がいいと切に願っていたからだ。


「・・・・・そうか。」


具体的な内容を一切語らない純恋の仕草や表情を見て、陽菜も大人しく飲み込む。


「何にせよ、私達は人や。陽菜は龍穂の力にあこがれるかもしれんけど、

普通の人達から見たら同じ羨望の対象なんや。

アンタも見たことあるやろ?自分に追いつこうと無理した奴の末路ぐらい。」


「・・まともな最後は迎えなかったな。」


「私はアンタにそんな最期を迎えて欲しくない。だから・・・まだ人でいてや?」


大阪校時代に見せなかった純恋の素直な姿を見て、再び龍穂に視線を移す。


「・・わかった。」


そして、ゆっくりと純恋に視線を移すと同じ様に素直な答えを返した。


「みなさん。少し聞いて下さい。」


二人が会話を終えた後、近くにいた千夏が声を上げる。


「私達は龍穂君に援護をお願いされましたが、あのような戦いで私達に出来る事などありません。

ここで邪魔にならない様にするのが最善。であれば、他の視点で龍穂君の援護を行いましょう。」


「他の視点か・・・。」


「はい。ここから離れる事は出来ませんが、それでも情報収集は出来るはずです。」


混沌に包まれた戦場では、正確で新鮮な情報を多く得た方が有利。

龍穂の敵は片野だけではない。足並みをそろえるための補助を行おうと提案する。


「となると・・・下の状況やな。ちーさん達に連絡を取るんか?」


「それもそうですが・・・謙太郎君達の様子も気になります。

長年神道省を支えてきた実力者との戦いですから苦戦は必至でしょう。

ですが・・・そろそろ決着がついても良い頃合いです。」


「雑賀も増援に行っている。それに、奴らは強い。

負けはしないだろうが・・・増援があれば話は変わってくるな。」


千夏は携帯電話を取り出し、連絡を試みるが繋がることは無い。

未だ戦闘中か、それとも・・・。


「・・取れないのであれば仕方がありません。ちー達に連絡を取る時に

様子を見て欲しいとお願いすることにしましょう。」


「・・それ、大丈夫なんですか?下も下で大変やろ?あの数の妖怪達の相手をしながら

謙太郎さん達を見る余裕を作るのは難しいんじゃ・・・。」


「では、私達が見に行くのか?」


「それは・・・・・。」


「桃子。最善の選択が心もとないのを嘆くのは十分に分かる。

だがな、ここは戦場だ。各々が取れる最善の末に倒れるのであれば

それはただ単にそいつが弱かっただけ。そう片付けなければその判断が足枷となり

被害が大きくなる。それでもいいのか?」


不安になっている桃子に向けて、陽菜は冷静に悟らせる。

これまでのどの戦いより規模が大きい総力戦。全員無事で帰れるのなら

それが一番良いに決まっている。だが、自らが買って出て距離を置いた責任は謙太郎にある。


「陽菜の言う通りや。足が速い楓ならすぐさま帰ってこれるかもしれんけど、

その隙を突かれて私達が追い込まれれば元も子もない。

ここは謙太郎さん達を信じた上で余裕のある人に様子を見てもらうのがええ。」


純恋の言葉を受け、桃子は素直に受け止める。戦いの軸である自分達がこの戦場で

散り散りになる危険性を二人の言葉から理解した上でのことだった。


「では、私は今から連絡を取ります。楓さんは私の近くで警戒をお願いします。」


龍穂が近くにいるとはいえ、少し離れている純恋達は翼を持つ敵からすれば格好の的。

あらゆる距離を対応できる楓は千夏の近くに移動すると、それを確認して連絡を取り始める。


「・・ひかり。」


その姿を見た陽菜は明智を呼ぶ。


ふじと連絡を取れるか?」


「・・隊員同士の連絡はなるべく控える様に言われているが、状況が状況だ。」


藤とは交流試合で共に戦った細川の事を指しているのだろう。

陽菜か指示を受けた光は再度手を耳に添えて連絡を試みる。

その姿を桃子はじっと見つめていた。大阪校時代、二人はお互いを苗字で呼び合っていた。

陽菜は大阪校に似つかわない光の立ち振る舞いに警戒し、

光も皇からの推薦で陽菜の様子を伺えと言われてからであったためだ。

だが・・・交流試合や神道省襲撃など多くの困難を目にし、そして共に戦火の中を駆けてきた中で

信頼関係を拭構えてきた。


「さて・・・。」


一息つくだけでも危険だと、辺りの警戒を続ける純恋達。

行動するのは連絡を終えてから。そう考えていた全員のわずかな隙を狙う様な

禍々しい気配が純恋達を襲う。


「!!!!!」


敵襲。その二文字が全員の頭の中に浮かび、得物を構えて臨戦態勢を取る。

だが、その気配とは裏腹に辺りに敵の姿や気配さえも見えない。

では何故こんな気配を感じたのか。その答えがすぐさま純恋達の視界に現れる。


「なんや・・・あれ・・・?」


東京の街に現れた大きな影。いや、あれは・・・黒い光なのだろうか?

街中に光る黒い太陽は、下にいる妖怪達を照らしている。


「敵・・・しか考えれんか。」


あんな禍々しい光を放つ者が味方であるはずがない。

奴がここに近づいてくるかもしれないと警戒を強めていると、千夏が口を開く。


「あれは・・・兼定さんみたいです。」


「あれが・・・?」


「ちー達からの情報ですからまず間違いない。

恐らく・・・ニャルラトホテプの力なのでしょう。」


這い寄る混沌の力であると聞いた純恋達は半ば納得するが、もう半分は不安で染まっていく。

あまりに凶悪な力を前にした全員は、その光から視線を外せなかった。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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