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第四百二十話 ハスターとの会話

木星。太陽系第五惑星であり、大きさそして質量ともに最大を誇る。

主成分であるガスで覆われた惑星であり、人類の手が入っていない惑星だ。

かなりの大きさであるため、地球上できたため刃る市の古代に当たる時期から

その様子を観察されてきた。

近代になり、アメリカ初の人工衛星ボイジャー一号が打ち上げられた際、

近距離での観測が行われた。

雄大な惑星の姿とその周りを漂う衛星達の姿は、人類に新たな時代を告げさせるのに

十分な衝撃だったと言われている。


『そうだ。宇宙開発競争が行われていた時代、人類は愚かにも

我々の領地に踏み込もうとして来た。まるで、過去の遺恨を取り返そうとして来たようにな。』


宇宙への第一歩。それは広大な空間を支配する種族への宣戦布告。

だが、彼らは攻めて来れなかった。過去に侵略を行い、失敗に終わるどころか

帰還さえ出来なかった支配者の子の存在を知っていたからだ。


『だから・・・誰も援軍が来なかった。』


『肉親を孤独にさせたと笑うか?我らはそのような親しい間柄じゃない。

我らは誇示しなければならなかった。自らの実力を。

兄弟などという関係は我々には存在しない。多くの惑星を掌握し、その領土を

広めることだけが存在理由。親の野望を叶えるだけの存在。それが我々だ。

他の兄弟が封印されたなど、関係ない。自分の地位だけを上げることに必死だった。

それが・・・我らの使命だったからだ。』


ハスターは俺と会話をあまり望まない。

だが、こうした節目には必ず自らの過去について語ってくれる。


『フフッ・・・。以前も同じような事をしゃべったな。』


『・・いいよ。ハスターの話しは面白いからな。』


宇宙の神の話しは貴重・・・いや、それは建前だ。

単純に、俺がハスターの事をもっと知りたいと思っている。


『そうか・・・・・・龍穂。』


『ん?』


木星の衛星達を模した魔術を放つ事で浮かんできたイメージ。

見たことの無い木星の姿は・・・きっと、ハスターが見たものなのだろう。


『お前の頭に浮かんだのは俺が見たものだ。

これも前にあったことだが・・・ここまで鮮明に浮かんでいるとなると、

我らの”同化”が進んでいる証だ。』


・・片野が言っていたやつか。神との同化。だが・・・俺はそれを望んでいない。


『それは・・・・。』


『分かっている。お前が人として歩みたいことはな。

だが・・・そのままで勝てるほど奴らは甘くはないぞ。』


ハスターの言葉を受け、必死に戦っている猛の方を見つめる。

あれだけの力を得たのは恐らく・・・陀金と同化したのだろう。


『・・・・・傲慢だと思うか?』


人として宇宙の神に挑みたい。これが如何にたわけた事なのかをハスターは

よく知っているだろう。


『いや?俺はそうは思わん。生まれた種族を誇りに思わない事の方がたわけだ。』


『・・・・・そうか。』


人が人でありたい・・・か。人とは、一体何なのだろうか?

ここまでの道のりで、人という言葉が生物学的に種族を指す言葉ではない事を俺は理解した。

人類が発展を続けてきた事で生まれた法。それこそが人を定義していると過言ではない。


(生き方こそが・・・人だ。)


人の道を示したのが法だ。人とは、生き方で決まる。

そうだ。そうでなければならない。そうでなければ・・・ちーさん達は人ではないことに

なってしまう。あの人達は魂を神と分け合っている。人という種族を超えた人達だ。

だが、あの人達は確かに人。人類のために戦い、法の上で暮らしているのだから。


『・・勝てるか?俺は・・・このままで。』


『どうだろうな。』


人である事に意地を張り、このまま戦う事で命を落とすことがあれば元も子もない。

生き方が人であることを示しているのであれば、俺もハスターと・・・。


『・・・・・逃げるなよ。』


深く考える俺に対し、ハスターは呟く。


『お前の母親は逃げなかった。最後まで人でありたい。人として愛する者の隣に居たいと

最期まで足掻きながら・・・命を落とした。』


『・・でも、俺は——————————————』


『一つだけ言っておこう。人を捨てた者や奪い取られた者達は必ず後ろ指を指される。

同じ種族ではない。他は同じであっても、人という人間は落ち度として扱う。

お前のような人間は数少ないと言う事だ。そうでなければ・・・お前の母親が受けた

”差別”はどう説明すればいい。』


ハスターを体に秘めた母さんは・・・きっと怖がられた事だろう。

それは容易に想像できる。この力を持って八海に居座っていたら俺も同じ目に会った事だろう。


『人と共に歩むには人でなければならない。

お前の母親・・・兼子の中にいた俺はそう実感した。だから、お前も愛する者と共に

歩みたいのであれば・・・・・最後まで足掻け。人としての道を。』


人としての道か・・・。人として歩むのであれば、周りからの見られ方も必要なんだ。


『・・やってみるよ。』


俺は賀茂忠行を倒した後、この腐った日ノ本を変えなければならない。

成り上がるためには・・・確かに見られ方も大切だろう。


「クソッ・・・!!!」


猛の攻撃に対し、素早い身のこなしで反撃を行う片野の姿が見えるが

兎歩を使う猛に攻撃が当たる気配はない。

このままでは膠着状態が続くが、衛星のおかげで他の魔術も全て阻害される。


「・・・龍穂。」


どうにか猛を援護しようと魔術を放つイタカが俺の方を見る。


「話しは終わったか?」


「・・・・・いや、まだだ。」


話しが逸れてしまったが、ハスターは俺の中に浮かび上がった木星の事を何も語っていない。

それが新たな力を発揮するカギになると、俺の直感が語っている。


「そうか。時間は稼げる。主との会話を—————————」


ハスターとの会話を楽しめと言いかけたその時。強大な力を感じたイタカは

再び視線を片野へ移す。


「クソッ・・・クソクソクソクソクソ!!!!」


俺が力を溜めているにもかからわず、膠着状態が続く片野の苛立ちは最高潮に達する。

だが、これ以上何が出来ると・・・。


「やるしかねぇ・・・!!まだ、俺は終わらねぇ・・・!!!」


何もできず、今度は片野が勝手に追い詰められているが、

さらなる奥の手がある様で何かを唱え始める。


「二体・・・いや、三体の神の力を使う!!これで・・・まだ戦える・・・!!!」


俺もこうなっていたのかと、その時の無様な姿を写し出した片野を見つめる。

奥の手があったとしても、猛もまだ本気を出していない。

強力な陀金の力があれば時間は稼げるだろう。


「全ての力を・・・使ってやる!!!」


片野は大きく雄たけびを上げると、地面が揺れ始める。

すると奴の体に包まれていた鎧が取り払われると、醜い皮膚が膨張していく。

見ると奴の体にあった三つの魂が一つになっていく。


『・・龍穂。もう一つ教えておくことがある。』


奴は・・・三つの魂を一つにさせ、新たな神を生もうとしている。

あのようになってしまえば、完全に化け物だ。


『化け物を倒すのは化け物ではなく、人でなければならない。

これは・・・お前の父親が言っていた事だ。』


奴の体はさらに大きくなっていく。巨大な体を持つ猛とは比較にならないほどに。


『お前が止めを刺せ。それが・・・人間であるお前の役目だ。』


さらなる化け物になろうとしている片野。それを眺めている俺達はその強大な力を前にして

魔力を溜める事しか出来ない。化け物を倒す一撃を放つため、

変化する片野の姿をじっと見つめていた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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