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第四百八話 大阪からの援軍

純恋の策の全てがここで露わになる。

援軍して呼んでいたのは雑賀ではなく、大阪校在学時に交流があった織田陽菜達だった。


「交通機関が使えないのによく来てくれたわ。感謝するで。」


「感謝などいらん!いうのであれば雑賀の奴に言ってやれ!!」


純恋から助けてくれと連絡を受けた陽菜が一番に頼ったのが雑賀なのだろう。

國學院大學に入学した雑賀は東京から大阪、そして再度東京に戻ってきたことになる。


「もうおらん。だから後で言うわ。」


「まったく・・・そう言う筋を通さんのは相変わらずだな!!」


親し気に話す陽菜だが、その周りの臣下達は朱雀達を見て緊張感が高まっている。

何か起こればその緊張が弾け飛んでしまうほどだが、

伝説の式神を前にする正常な判断だと言える。


「して、そいつらを倒せばいいんだな?」


「ああ。任せる。私らは目の前の奴らに集中するから援護できへんで。」


「上等。名を上げるにはもってこいの相手だ。」


伝説の式神相手でも臆する様子を一切見せない織田を筆頭に、

大阪校の生徒達は襲い掛かい始める。

そして・・・前線部隊と距離を離れた天后と天空を相手する純恋達は得物を構えた。


「申し訳ないけど・・・ここからはノープランや。みんなで勝利を掴もうや。」


背中を突かれる危険性は残っているが、任せろと言った陽菜達は必ず自分達を守ってくれる。

後は目の前の奴らを倒して龍穂と合流するだけ。

たったそれだけだが・・・相性の良い二柱を相手するには相当な連携力が必要になってくる。


「ひとまず・・・翠は私がもらいます。私であれば空気で地面を作れますからね。」


「お願いするわ。桃子は騰蛇と一緒で頼む。図体のデカい奴相手じゃ

私らはどうしても力負けするからな。」


お互いの役目を明確にし、どう攻めるかの算段を立てていく。


「では・・・いつも通り、私達は後衛を勤めましょう。

ですが、龍穂がいない分、我々に負担は大きい。前線部隊がどれだけ戦えるかは

私達にかかっています。」


「分かっとる。しっかり連携を取らんとあかんな。」


特に沖田との戦闘経験は浅く、対人戦を得意としており援護が無ければすぐさま狙われるだろう。

近くにいる楓と共にうまく連携を取る必要がある。


「それでは・・・行きましょう。」


グズグズしていると、また霧や黄砂で視界を奪われると敵が動く前に千夏が指示を飛ばす。

奥にいる朱雀達に念話での指示を送っていたのか、二人は楓達の接近に若干だが

出遅れてしまっている。


「流れは確実に私達にあるで。しっかり勝って、龍穂に合流や。」


天后と天空の向こうでは龍穂が戦っている。貴人程度負けないと純恋達は思っているが、

それでも心配は尽きない。早く、そして確実に勝利を掴むために

二体に向かって翼を羽ばたかせた。


————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————


「フフッ・・・。大丈夫か?」


純恋達と距離が離れてしまった後。俺は貴人に防戦一方だった。


「式神を二体も持っていかれたぞ?奴らに気をかけているようだが・・・

肝心のお前さんがやられたらあの女たちはどう思うだろうね。」


体から溢れる触手。その一本一本を巧みに扱い俺を攻め立ててきた。


「・・・・・龍穂。」


六華の中からイタカが現れ固めた空気の上に立つ。


「・・ん?」


「どうするつもりだ。奴はかなり手数を持っている。

それなのに・・・何故八咫烏を手放した。」


心配して出てきたのだろうが、肝心の俺はイタカの心配をよそに全く焦りが無い。


「そうだな・・・。」


防戦一方の姿を見ていたイタカはただ俺が押されていると思っていただろう。

手数の多い奴を何も考えずに相手を、するとどこかで痛い目を見るのは

今までの戦いで分かっていた。


「そうだなってお前な・・・。」


「・・ひとまず相手の”底”は知れた。次は天井を知りたいな。」


純恋達が戻ってくるのは分かっている。俺一人で貴人を倒すことはできるだろうが、

先を考えた時に出来るだけ力を消耗したくはない。

共に戦うとなると、みんなをカバーしなくてはいけないのである程度敵の実力を

把握しておく必要があった。


「・・敵の情報を取っていたのか?」


「そうだよ。別に急いで勝つ必要もないだろ?」


純恋に共に歩みたいと言われたからだろうか?それとも、泣き腫らしたことで

少し心が晴れたのだろうか。どちらにせよ、少し心に余裕が出来たのは確かな事実だ。


「それはそうだが・・・今の状況も頭に入れておけ。

賀茂忠行が宣戦布告をしたんだぞ。いつどこで何が起きてもおかしくはない。」


「兼兄達がいるよ。何か起きたらすぐに連絡が来るはず。

それに・・・賀茂忠行の狙いである俺と接敵したのに援軍が来ないんだ。

それが少し気になってな。」


ここまでの戦いで奴は俺のみを狙ってきた。皇の首は一切狙う事は無くだ。

優先順位は俺の方が間違いなく高かった。だが・・・今となってはどうだろうか?

どちらも狙っている事は間違いない。肝心なのはどちらを重要視しているか。

皇の首を取ったとしても、寿命が尽きれば今までの野望が全て塵と化す。

逆を取ったとしても皇に逃げられれば意味がない。

また長い時間を闇で過ごすことになるかもしれない。


「・・・・・そうか。」


思っていた以上に冷静だった俺に驚いたのか、イタカはただ一言で会話を締めくくる。

俺の目の前にいる貴人は、明らかに俺を仕留めるために忠行が送り込んだとは思えない。

何か意図があるのか、それとも何か隠しているのか。

純恋達には申し訳ないが・・・合流を果たすと戦力が増強されると共に

カバーするための意識が削がれてしまう。

一人で戦った方が楽ではない。それだけは確かな事だが、置かれている状況で

最善の行動を行い出来るだけの情報を取っておくべきだ。


「せっかく出てきてくれたんだ。たまには手伝ってくれ。」


青さんや八咫烏様に出番を奪われ、六華の中に入ってもらう事が多かったイタカ。

その二人は今はいない。久々に手伝ってもらおうと思って口にしたが、

俺の言葉を聞いたイタカは大きなため息をつく。


「・・こうも短期間で変わるとは、人とは分からない生き物だな。」


「・・・?」


「いいだろう。俺もいい加減、お前の勘違いを正してやろうと思っていた所だ。」


文句か何かを呟いた後、一気にやる気を出し始める。


「勘違い・・・?」


「俺は青龍や八咫烏に遅れをとっていない。いつまでも刀に収めるのは宝の持ち腐れだとな。」


俺の態度や行動にフラストレーションを溜めていたのだろう。

ここまで文句一つ言わなかったのは俺への信頼か、それともハスターの影響か。

どちらにせよ、失礼な事をしていたのは間違いない。


「じゃあ・・・見せてもらおうかな。」


失礼な事をしていたと反省しつつ、イタカの実力を改めて見せてもらおうと

何も入っていない六華を握りしめる。


「何を話しているのか知らないが・・・追い込まれているんなら

少しは苦しい顔を見せたらどうだい!!」


俺とイタカの楽し気な会話を聞いた貴人は、苛立ちを乗せた触手を辺り一面にはなってくる。


「任せたぞ。」


これが奴の主な攻撃方法。十二天将の主神が使うにしてはあまりに安易で

無粋な攻撃だと思わずにはいられない。

青さん達の様に高度な神術や魔術など、眼にするだけでも勉強になるような攻撃を仕掛けてくると

思っていた俺からしてみれば、何度も見た飽き飽きした攻撃方法だ。


「ウェンディゴ・スニエグプアールス(病を運ぶ吹雪)!!」


貴人の広範囲に及ぶ触手の束に対し、指を鳴らしたイタカの周りには氷の粒が

生まれていく。先ほど千夏さんが作り上げた花びらの水の塊の名残を凍らせ

氷片へと変えたのだろう。

その氷片を作り上げた強風に乗せていくが、辺りを飛びちる氷が黒く染まっていく。

病の名をもつウェンディゴを体現した様な怪しげな吹雪は

向かってくる触手達を簡単に凍り付かせ動きを止めてしまった。


「やるな・・・。」


その姿を見て、流れる空気に身を任せる。

体を空気に変え、目の前に光景に驚く貴人の元へと迫っていく。


「なっ・・・!?」


格下と思っていたイタカの強大な力を目にすれば当然の反応だ。

京を守ってきた自覚や十二天将の主神と言う立場は傲慢という隙を生んでしまっている。


「侮ったな。」


強き者ほど相手を侮らない。実力を十分に把握し、その上で全ての可能性を鑑みて

確実な勝利を手にする。

上位存在である神に対する人間が付ける隙を、こいつも持っていてくれて助かった。


「一兎流、居待月。」


何も入っていない無銘六華で貴人を切りつける。

出来るだけ情報を取りたかったが、ここまで来てしまえばケリをつけるしかない。


「ぐっ・・・!!」


俺の接近に気付けなかった貴人は触手で体を防御する事すら出来ずに

肌を切り裂こうとする刀身を無防備に受け入れてしまう。

だが・・・刀身から伝わる違和感に、俺はすぐさまイタカの元へ戻る決断をつける。


「やるね・・・。」


触手を凍てつかせたイタカの元へ戻った俺は、貴人を切りつけた刀身をじっと見つめる。

手に伝わってきたあまりに固い感触。まるで鉄の塊を切りつけたような感覚であり、

刃こぼれや最悪の場合、刀身が折れるリスクのある感覚に手が痺れてもおかしくはない。

だが・・・俺の目に映っていたのは刃こぼれの無い綺麗な刀身と、

あるはずの痺れを一切感じない手の感覚。

この正体を確認するために貴人を見つめると、切りつけられて見えるはずの肌が

光沢をもつ緑色に輝いていた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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