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第四百四話 スプートニク

貴人に向けて六華を振り下ろす。体を固めるため、碌に身動きが出来ずに

このままであれば簡単に勝負がつく。

だが、いつの間にか現れた黒い雲が六華の刀身を受け止めた。


「そんな安易な一撃が通るとでも思ってるのかい?」


「通るかと思ったよ。アンタが弱そうでな。」


心に闇が刺しているのなら、不安定になっているはず。

精神が乱れた相手は何をしてくるか分からないが、隙も多くなるはず。


「ははっ!初めて言われたよ!!」


だが貴人は怒るどころか喜び始める。先ほども目の前に自信を狙う凶刃が迫っているにも

関わらず、一切動揺する気配を見せなかった。

青さん達と同じく、貴人も歴戦の戦士。決して侮れない。


「さて・・・悲願達成前の腹ごしらえと行こうかね。」


細く、白い肌を持っている貴人は体を動かそうとする。

華奢な体では俺の魔力操作に勝てないだろうと高を括っていたが、その見た目に反した

あまりに強靭な力は空気を押しのけていく。


「ふぅ・・・。私を押さえつけようとしたって無駄だよ。」


どれだけ抑えようと貴人は無理やり空気を押しのけてしまう。

貴人の呼び名は他にもあり、方角を司る天一神と呼ばれることもある。

だがその方角は凶方位と呼ばれ、その名の通りその方角を犯すと祟りが起こされると

言われていた。天一神が住む方角に行くことを避けるほど厄介な神であったが、

それを従えた安倍晴明の技術の高さが伺える。


流星領域ダストトレイル。」


これだけの力の持ち主に単体で接近戦は難しいと判断し、無数に作り出した

風の弾を一斉にぶつけながら距離を取る。

方角神である貴人だが、その存在は北極星の精や荒神であったとも言われている。


「これもなかなか強力だね・・・。」


強靭な体であっても、破壊の風で作り上げた空弾は受け止められない。

そう悟ると胸の前で両手を突いて対応を図る。


「こりゃ・・・。」


バチバチを空気の中を割いていく音が鼓膜を襲う。

貴人の元となった存在で一番厄介なのは、帝釈天の大臣であったとされる説だ。

帝釈天とは梵天と並ぶ仏教における二大護法善神。これだけ聞くと大層な名に聞こえるが、

地位はそれほど高くはない。だが・・・ヒンドゥー教になると話しは違ってくる。

帝釈天ではなく、インドラという名に変えて雷の化身と化す。


「マズいな・・・。」


「雷は翼を持つ者にとって天敵だ。一度下がるぞ。」


破壊の風と相殺できるほどの強力な雷が辺り一面に網を張り始める。

触れればもちろん感電し、骨の髄から焼き切られてしまうだろう。

これではまとも近づけないとすぐに距離を取り、対応を考える。


「青さん。少しいいですか?」


俺の戦う姿を見つめていた青さんに声をかける。


「思っていた以上に貴人は多くの力を持っている。出来るだけ情報が欲しいです。」


「情報か・・・。確かに多くの力は持っているが、その中でもあの雷は強力。

他の力など霞んで見えるほどの力じゃ。あれをどうにかすることが

勝利を掴んだと同義と言っていい。」


雷か・・・。毛利先生や真田が使う姿を見たことがあるが、まともに戦ったことが無く

明確な対応策は分からない。


「・・今の話しを聞いて、策を思いつきました。」


だが雷だけを何とかすればいいという情報は大変ありがたい。

青さんと連携を大前提に思いついた策を提案すると、少しも考えずに快く引き受けてくれた。


「青さんなら分かっているとは思いますが、どちらかというと核は青さんです。

背中に乗せたまま戦うのが嫌というのであれば引き受けますが・・・どうしましょうか?」


「これくらいなんてことはない。それよりだ。奴に気付かれないほどの魔力操作の維持は

かなり精神をすり減らす。手伝いながら立ち回ってくれ。」


俺が思いついた策は風ではなく、水を主に用いた策。

俺と青さんであれば大丈夫だろうが・・・出来れば補助役としてもう一人欲しいと

千夏さんを呼んで補助をお願いしようとする。


「千夏さん。出来れば------------------」


「策は聞いていました。ご安心を。」


・・頼りになる人だ。そう言ってくれるのなら安心して任せられる。

雷は強力な力だ。それゆえ扱いも難しい。あの毛利先生でも魔力操作での完璧な操作は

難しく、その理由として人間が感じられないほどの速度を上げていた。

帝釈天の大臣ともいえど、雷を完全に操ることは難しい。

それこそが勝機。辺りに雷をまき散らしている貴人の隙を突かせてもらおう。


「千夏。やるぞ。」


「ええ。飛べる者は他の方々をお願いします!!」


青さんは千夏さんと神融和を試みる。背に乗っていた仲間達はこのままだと地上に

落ちてしまうが、沖田が式神である烏を呼び出し楓と純恋が飛び乗る。

桃子は騰蛇の背に乗り、ちーさんとゆーさんを呼ぶが二人は重力に逆らうことなく

地上に向かって落ちていく。


「ちーさん!!!」


「私達は下に行く!!空じゃ役に立たないからね!!!」


「安心してね~。」


必死で声を上げるちーさんと笑顔で手を振りながら落ちていくゆーさん。

対照的な姿で首にかけているペンダントを引きちぎると獣の特徴を持った姿へと変わっていく。

考えなしに行動する人達じゃない。かなりの高度だが大丈夫だろうと

少し先にいる貴人の方を向く。


「おやおや?浮気かい青龍。」


「・・貴様の様に下衆に言われたくないわ。」


千夏さんの中にいる青さんが呟くと、両手を胸の前についた二人は辺りの水分を操り始める。

空気中のある水分が集まり、水の球へと姿を変える。


「・・桜流し(さくらながし)。」


桜の花びらのような形に姿を変えた水の塊達は、網を張る雷達を吸い込み始める。

稲妻の穂は水の導きに逆らう事が出来ず、俺達を導くための道が出来上がった。


「やるね。青龍を手なずけるだけはあるよ。」


俺達を防ぐ術を失くしたにも関わらず、焦る様子を見せない貴人。

十二天将の主神がたったこれだけで終わる訳がない。そんな事は分かっている。

だが、この好機を生かさない訳にはいかないと用意していた空気の弾を練り上げて

貴人へと打ち放った。


「衛星の衝撃スプートニクショック。」


人類が初めて打ち上げた人工衛星。人類が初めて宇宙に触れた日であり、

その衝撃はあまりに大きい。そして・・・その日を境に、宇宙との交信が始まった。

いや、それ以前に合ったのかもしれないが、宇宙という存在をじかに触れたその日こそが

人類と宇宙が本当の意味で触れあったと言えるだろう。

初めての人工衛星は役目を果たす途中に隕石にぶつかり制御を失った。

そして大気圏に入り、消えてなくなったと言われている。

世界に衝撃を与えたスプートニク。彼の存在は、のちに俺とハスターの繋がった。

その敬意を込めた一撃は一直線に貴人に向かっていく。


「・・・・・!!!」


雷の道が切り開かれた時点で俺からの一撃を予想していた貴人は

既に受ける構えを取っており、スプートニクを”体”で受け止める。


「なっ・・・!?」


雷、神術などを使って少しでも勢いを止める事が出来たはず。

躱す選択肢も当然ある。だが・・・何故無防備な体で受け止めたのか。

俺の一撃は強力。神とはいえ生身で受ければ命を簡単に削り取ってしまう。


「死にたいとでも・・・思っていたのか?」


賀茂忠行に従っているように見えるが、安倍晴明の命を絶った張本人に

付き従う事は十二天将にとって屈辱だろう。

白虎や騰蛇がそうだったように、もしかすると俺達の手助けをするつもりで・・・。


「ふ、フフッ・・・。」


そんな俺の想像を引き裂いたのは高い笑い声。

スプートニクを体で受け止めた貴人の笑い声が辺りに響く。


「アンタ・・今こう思わなかったかい?自分達のために命を絶ったのではないかってね。」


俺の頭の中に描かれた図をのぞき込んだかのような指摘。こいつは・・・味方じゃない。

冷静に貴人の様子を伺うと、本来であれば体を貫くはずのスプートニクが貴人の体の前で

留まってしまっている。手心など一切加えていない破壊の風が留まる理由。

それは間違いなく・・・何かに阻まれている。


「そんな軟じゃないよ!私の体も、精神もね!!」


魔力操作から伝わってくる感覚。何かが少しずつ・・・削り取られる様な感覚。

あいつは、俺の魔術を利用して自らの体に纏った殻を破ろうとしている。

すぐさま魔術を消そうにも、もう間に合わない。


「一歩下がれ!!」


出来ることは声をかける事。安全な位置まで下げる事だが・・・奴が何をしようとしているか

分からない以上、安全な場所などどこにもない。

出来るのは警戒のみ。戦うのは避けられなかった。いずれこうなる運命だったと腹を括る。


「さて・・・お楽しみはここからさ・・・。」


貴人の肌がどんどん剥がれていく。美しい天女の姿は偽りだった。

ずっとそうだったのか、長い時の中で変わってしまったのか分からないが・・・。

十二天将の主神としての姿はそこにはない。


「私がどれほどこの時を待っていたのか・・・その身で味合わせてあげるよ!!!」


スプートニクが何かによって貫かれる。一体何が起きているのか確認しようとしたその時。

俺達の目の前に現れたのは無数の触手。辺り一面を覆う触手の壁だった。




ここまで読んでいただきありがとうございます!

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