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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第五章 上杉龍穂 決戦編 第一幕 背中を預けられる仲間達
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第三百九十六話 あまりに不可解な戦い

黄衣を身に纏うと、ハスターの声が聞こえてくる。


『やっと、ここまで来たな。』


『やっと・・・?』


その言葉に違和感を覚えるが、今は気にしている場合じゃない。

長野さんを殺すだけの実力を持っている奴だ。近づければ何が起こるか分からない。


「風よ・・・。」


指を鳴らし、辺りの空気を動かす。


「・・・・・?」


傷を癒すために眠っていたからだろうか?風を操る感覚がいつもと違う気がする。

力強く、それでいて繊細で・・・。俺の体にも何か変化があったのか?

それさえ考える暇なく、空気を形にして辺りに空気の弾を作る上げ

何が起きてもいい様に構えを取った。


「力を使ってごらん?出来るはずだ。」


このまま倒しに行くのもいいが、桃子に残された力を自覚するのも良し。

そしてそのまま比留間を倒せればなお良しだ。

俺の行動は、桃子に残された力の程度によって変わってくる。


「分かり・・・ました・・・。」


不安そうな桃子の声が聞こえてくる。自分の体に何かが起こっているにも関わらず、

その力を使えと言われれば不安になるのは当たり前だ。


「・・・・・・・・。」


信じてくれとは既に言葉で伝えた。後は行動あるのみ。

隣に立つ桃子の手を握りしめる。何かあったら俺が助けると伝えると、

強く握り返して再度大きく首を縦に振る。


「山本五郎座衛門・・・!!!」


桃子は再び名前を呼ぶ。陰陽寮が作り上げた空の器。魔王と定義された妖怪の名を叫ぶ。

平将門の力を奪うための偽りの名。だが・・・桃子の体に黒い力が纏い始める。


「これは・・・!!」


「空の器とはいえ、信仰を受ける器として用意する必要があった。

妖怪絵巻にその存在を乗せ、魔王としてはあまりに弱いエピソードで読んだ者の

想像を膨らませた。読者が馳せた思いは信仰に代わり、あるはずの無い体を与えた。

そして平将門の名をまとっていた信仰も取り入れ、魔王という座を作り上げた。」


名を置き換えると言うのは、ただ単に力を落とすわけじゃない。

空の座に新たな存在を作り上げる力となる。


「・・イザサワケという術はここまで考えて作られたのか?」


「いや、これは偶然の産物。元はただの封印術として使われていたんだ。

その時に全く存在しない神の名を与えると、本当にその神が生まれてしまった。

生まれた神は代々業で大切に使われてきた歴史があるんだ。」


新たな神の想像する術など聞いたことがない。だが、それほど人の思いが神という存在を

成り立たせている事を理解する。


「・・・・・行けるか?」


以前の姿より洗礼された神力を身に纏った桃子。

魔王にふさわしい鎧、背中には大きな翼を生やし額には第三の眼が生えてきている。


「・・・うん。」


禍々しい魔王の力を持った桃子。これなら・・・比留間と戦える。

援護に徹するため桃子の一歩後ろに立ち、二人で一気に距離を詰めにかかった。


「くっ・・・!!!」


強い殺気をこちらに放っていた比留間だが、すでに虫の息。

桃子の自信をつけるにはもってこいだが・・・奴はクトゥルフの配下を従えている。

いくら強くなったとはいえ、何をしてくるか分からない。

黒い風を従えて様子を伺うが、比留間は得物を構えているだけだった。


「フン!!!」


勢いよく振り下ろされた桃子の刀を比留間は両手で受け止める。

以前であれば片手で受け止められていただろうが、なんと奴の腕をへし折る勢いで

吹き飛ばしてしまった。


「・・・・・・・・・・。」


桃子の実力を見誤ったのだろうか?いや、比留間ほどの実力者がそんなことをするはずがない。

何故クトゥルフの配下の力を使わないのか。そして・・・何故ここまで追い詰められているのか。

何かある気がしてならないが、ただ一つ明らかなのはこいつが敵である事だ。

その事実が変わらない以上、ここで討ち果たさなければならない。


「ぐぉ・・・。」


折れかけた腕で得物を構え、追い打ちを狙う桃子へ対処しようとするが

もう一度受けてしまえば今度こそ骨が粉々になるだろう。そうなれば勝負あり、

そんな状況で素直に受け止める選択をとるやつじゃない。


「・・影縛り!!!」


駆けてくる桃子の足元に張り付いた影を操り縛り付ける。

見ると魔力と神力ともに底をつきかけており、そんな状態じゃ今の桃子を止められるはずがない。


「こんなもん・・・!!」


影を基点に桃子の足を止めようとしたが、勢い余った脚力で簡単に引きちぎれてしまう。

何かがおかしい。竜次先生達と戦ったとしても、ここまでの状態になる前に引くはずだ。


「とどめや!!!」


このままではマズイと兎歩で桃子の前に立ち、二人の間に立って六華を片手で握りしめて

桃子の一撃を受け止める。

ずっしりと重い一撃が利腕である右腕にのしかかるが、何とか受け止めつつ

そして比留間への警戒を怠ること無かった。


「なっ・・・!?」


「すまん。」


本来であれば自信をつけさせるべきだ。だが、これだけ弱った相手にこの一撃を叩きこめば

命ごと断ち切られてしまうのは目に見えている。そんなことを純恋が黙っているわけがない。


「なんで・・・。」


「捷紀さんと同じ目に会わせるわけにはいかないんでな。

それに・・・どうしても気になるんだよ。」


色々と崩れてしまった俺の思惑を最善の方向へ立て直すため、驚く桃子を宥めながら

比留間に視線を向ける。


「温情を・・・かけるつもりか?」


「そんなものをかけるつもりはない。お前には地獄に行ってもらう。

だが・・・その前に、聞きたいことがあるんだ。」


「聞きたい事・・・?」


「お前、何があったんだ?」


俺達の味方から比留間の目撃情報すらなかった。では、こいつをここまで追い詰めたのは

一体誰なのか。手負いだったとはいえ、こいつをここまで追い詰められる奴は

数えるほどだろう。例えば・・・賀茂忠行。


「従えている神はどうした?なんで力が底をついている?

そんな傷で・・・俺達を襲ってきたのはなんでなんだ?」


俺の中に燻っている全ての疑問をぶつける。大きな動きを見せなかった千仞が

裏で何をしていたか。その謎の鍵をこいつが握っている様に見えて仕方がない。


「・・・・・・・・・・・・。」


俺の問いに、比留間は口を開く素振りさえ見せない。

言う気が無いのか。それとも口封じを施されているのか。一体、こいつはなんなんだ?


「・・ろす。」


「・・・・・?」


「ころす・・・。殺す殺す殺す殺す殺す。」


やっと口を開いたと思えば、返ってきたのは殺意の塊。追い詰められて

気が狂ってしまったのだろうか?恩人を裏切り、ここまでやってきた男の精神が

簡単に狂うはずがない。本当に・・・何があったのだろうか?


「殺す!!!!!」


俺に向けて得物を振るおうと腕を振り上げる。言葉通り、殺そうとして来ているが動きが鈍い。

簡単に受け止められると六華を構えるが、俺の横から何が通り過ぎる。


「っ・・・!?」


俺が壁となり、何者かの接近を察することが出来なかった比留間は驚く間もなく

接近を許してしまう。


「・・龍穂。お前も人の事を言えないぞ?」


目の前に広がっていたのは、突っ込んで来た兼兄が比留間に何かを突きつけている姿。

まさか・・・。


「地獄に行くのはまだ早いな。少しは罪を清算しないと・・・あの人達と同じ

場所に行けないぞ。」


ゆっくりと倒れた比留間。突き立てられた跡を見ると・・・何も刺さっていない。

振り返った兼兄の手は血で濡れていた。どうやら突き立てたのは拳だった様だ。


「兼兄・・・。」


「・・色々不可解に思う所はあるのは分かっている。それは俺も同じだ。

こいつには業に指示を送って拷問を掛けさせてもらう。少しでも情報を引き出そう。」


倒れた比留間は意識がない。兼兄の拳が奪い取ったからだ。

桃子の自信や俺の背中を見せる事。そして、情報を引き出す事全てが成せなかった。

それは平将門の顕現以外に何も手にすることが出来なかった事実を示している。


「何が・・・あったんやろうな。」


「分からない。でも・・・碌な事じゃないのは確かだよ。」


桃子の事はいったんお預け。次の戦いで俺が示してやればいいし、桃子が見せてくれればいい。

業に連絡を取ろうとする兼兄を尻目に比留間を見つめていると、倒れているからだが

盛り上がっていることに気が付く。


「・・・・・!!!」


まるで下から何かにつけ上げられているようだと警戒しようとしたその時。

盛り上がった体から鋼色に輝く何かが生えてくる。

そして・・・徐々に大きくなっていき、それが切先だと気付いたその時。

奴の体が大きな得物で真っ二つになってしまった。


「桃子!!」


突然の出来事に何が起きたのか分からず桃子と共に引き下がる。

近くで連絡を取っていた兼兄も同じく距離を取っていたが、勢いよく裂かれた体から

飛び散った返り血が頬についていた。

一体何がどうなっているのか。言葉も出すことが出来ずにいると、

辺りにノイズのような音が響き、俺達の鼓膜を震えさせた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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