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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第五章 上杉龍穂 決戦編 第一幕 背中を預けられる仲間達
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第三百九十三話 イザサワケ

「戦後の日ノ本は近代化のため、都市開発が盛んになった。

敗北を喫し、国力を落ちた日ノ本を先進国に加えるためという名目だったが、

奴らの脅威となった長い鎖国による強力な信仰力を落とす狙いでもあった。」


兼兄が語り始めたのは日ノ本の歴史。俺達が知る平将門の祟りの詳細を語ってくれる。


「東京も当然その煽りを受けた。皇の住まいがあったからな。

日ノ本でも有数な神社は何とか形を残したが、その他の建物は姿を消した。

神田明神は都市開発の餌食にはならなかったが、平将門の首塚はその狙いとなってしまった。」


「で、祟りが起きる・・・と。」


「そう言う事だ。流れとしては神田明神に祀り、鎮魂祭を執り行う事で

怒れる魂を収めたことになっているが・・・簡単に言えば”おさめきれなかった”。

姿を変えていく東京に危機感を覚えた将門公の怒りは収まることなく、

このままでは東京だけではなく、関東という広範囲で祟りが降り注ぐかもしれないと

危惧した皇が当時の神道省の長は有能な陰陽師を従え封印する決断を下した。」


「当時は・・・じいちゃんが長や無かったんやな。」


「ああ。丁度長が変わった時期だったらしい。その”一番の大仕事”が将門公の

封印だったんだよ。」


一番の大仕事・・・。その言いかただと、封印の最中に命を落としたのだろう。

ココ数十年、神道省は長の確立が課題になっていた。熾烈な派閥争いなど、

あまりに不安定な情勢が影響している。


「お察しの通り、かなりの被害者が出た。当時の長と陰陽師の大半が持っていかれる様な

大惨事だったらしい。だが、一番大変だったのはその後。

強い封印術のわずかな綻びを隙間からどうにかして術式を破ろうと暴れ出した。

これではいずれ破られてしまうと危険視した神道省は護国人柱の選択を考えた。

だが・・・これだけ強い神を体の中に封印するリスクは当然高い。

封印した者達で協議した結果、なるべく力を落としてからの封印することになったんだ。」


「かなり詳細な情報ですね・・・。もしかすると、兼定さんもその場にいたのでしょうか?」


「いや、相当前の話しだ。流石に俺は関わっていない。

だが・・・ついさっき、”当事者に話を聞いてきた”んでな。情報としてはかなり信頼できる。」


ついさっきと言えば・・・親父だ。あの人は歴代最年少で陰陽師になったと聞いたことがある。

俺達の動きを聞いた兼兄達は業に指示を送ると共に親父に話しを聞きに行ったんだ。


「そうですか・・・。でも、桃子さんは山本五郎座衛門を入れたと報告を受けていたはずです。

名前を偽っただけでそれほどまで力が落ちるなんて考えられません。」


「では聞こう。千夏ちゃん、信仰とは一体どこに集まるんだ?」


信仰、人の思いが・・・どこに集まるか?

それは思いを寄せられる神に集まるに決まっている。


「それは・・・・・。」


そんな簡単なことは無い。だが、千夏さんは何故かひどく悩んでいる。


「思いを寄せられるのは神ではない。神に付けられている”名前”に集まる。

何故なら神が語られるのは名前であり、姿や形を知らない者達は

その名前に思いは馳せるからだ。だからこそ、名を変えることは神にとって

相当な力を落とすことになる。口で言うほど簡単じゃないけどな。」


神の名を変えるなんて人間が出来るはずがない。だが、親父達はそれを成すことが出来た。

ここまで来たらその方法を知りたいと兼兄に尋ねると、体調が悪そうな桃子に毛利先生を

看病を行う様に指示を送った後に語り始める。


「神の呼び名を変えただけでは力を落とすことにはならない。

本来の呼び名は魂に刻まれているからだ。他の宗教の名を模した神が現れることもあるが、

元の神の力が失われることは無い。何故なら全く別の存在として信仰を受けるからだ。」


「じゃあ・・・どうやって・・・。」


「・・神道省の前身である陰陽寮から受け継がれてきた”秘術”を使ったんだ。」


秘術・・・。その存在を隠された術式。禁術と呼ばれる物もあるが、

明らかに危険視をされる様な危ない術ではなく、あまりの強さに使い所を限られるものや

その技術を外に出さないためにあえて使用を隠された術が該当される。

前身の陰陽寮から隠されてきたとなると、ここまで日ノ本を支えてきた貴重な術なのだろう。

その存在を使うほど、平将門は危険な存在だった様だ。


「その術を明かす前に・・・お前達は山本五郎座衛門について知っているか?」


「確か・・・妖怪絵巻に出てくる魔王だったよな?」


江戸中期に生まれた妖怪絵巻である稲生物怪録いのうもののけろく

あまり良くは知らないが・・・そこに出てきた魔王と桃子から説明を受けたことがあった。


「そうだ。備後の国にいた度胸のある少年を驚かそうとしたが失敗した魔王。

簡単に言えばそんな感じなんだが・・・これのどこが魔王なんだと思う?」


妖怪に棟梁である魔王にしては・・・エピソードはかなり弱いという感想しか出てこない。

これであれば毛利先生が従えている茨木童子の方がよっぽど魔王にふさわしい。


「これこそが陰陽寮が仕掛けた秘術。”イザサワケ”だ。」


いざ・・・さわけ?一体どういう術式なんだ?


「イザサワケ。これはとある神の名を関する秘術。

皇の遠い先祖の中に、とある神と名前を交換したという伝承が持つ皇がいてな。

その神話を参考にして作られた秘術だ。」


「名を・・・交換する?という事は・・・。」


「ああ。山本五郎座衛門と平将門公の名前を交換した。

それで・・・力を抑えることに成功したんだ。」


名前の交換・・・。それは自信の受けるはずの信仰を受けられない事を意味する。

だが・・・たったそれだけで力を押さえつける事など出来るのだろうか?


「少し話を戻そう。山本五郎座衛門というのは魔王にしては逸話が少なく、そして弱い。

だが魔王と呼ばれる理由。それは・・・肩書だ。」


「肩書・・・?実力じゃないのか?」


「実力じゃない。何故なら、”山本五郎座衛門という魔王は存在しない”。」


「存在しない・・・?そんな事、じゃあなんで絵巻に乗っているんだよ。」


「その絵巻は・・・当時の陰陽寮が作成に関わっている。時代ごとにイザサワケの効果を

発揮させるためだ。他にも例を挙げると・・・ぬらりひょんもそうだ。

存在しない空の器やあまりに弱い妖怪などの名前を交換し、強大な名が受けるはずの信仰の

受け皿とする。神達は信仰が無ければ存在できないから力が弱まっていくんだ。」


なるほど・・・。名を変える術式で力を弱める原理は理解できた。

そして同時にそうしなければならないほど、平将門が強力な力を有している事もだ。


「十分に力を弱めた後、護国人柱として入れる選択を取った訳だ。

そこには俺も関わっており、簡単だがその内容は把握していた。

賀茂忠行を想定していた訳ではないが、東京が脅かされそうになった時、この地を護るための

切り札として封印を施し山本五郎座衛門に扮した平将門公の力を体に馴染ませたんだ。」


「でも、なんで桃子だったんだ?その時はまだ大阪にいたはずだ。」


「今の桃子ちゃんの様子を見てみろ。ゆかりの地に近づき、自身が入り込むことができる

体を前にした将門公の力を。これだけ力を馴染ませても・・・抑えきれていない。

昔の桃子ちゃんなら、東京に近づけるだけでも危なかっただろうな。」


護国人柱に選ばれる人物が実力者じゃない訳がない。

当時は幼かったが、それほどまでに将来を見込まれた逸材だったはず。

そんな桃子が順調に成長しても押さえつけられない将門公の力は強大。

どうにかしてやらないと・・・マズいかもしれない。


「さて・・・ここからが大事だ。桃子ちゃん、聞こえるか?」


胸を抑えて苦しそうにする桃子を前にして膝を着き、肩に手を置きながら声をかけるが

何も反応はない。返事を返せるほどの余裕が無いのが明らかだ。


「桃子・・・!!」


「何十年とかけて、しかも念のために鎮魂祭をしたあげく奉ったのにも関わらずこれか・・・。

やはり日本三大悪霊の名は伊達じゃないな。」


苦しむ桃子の姿を冷静に観察した後、兼兄は俺の肩に手を置く。


「・・龍穂。ここからはお前が頼りだ。」


「俺・・・か?」


「今から茜に降霊の術式を展開させる。降霊術というのは

依り代への道筋を作ってやるだけの術式だ。肝心なのはその手前。降ろす神が依り代に入ることに

納得している事が重要。だが、今の桃子ちゃんがそこまで将門公の信頼を得ているかは怪しい。

だから式神契約を辿り、サポートしてやってくれ。」


あの桃子を苦しめている平将門を説得する。今までの姿を見ていると、

決して桃子を認めていない訳ではないのだろう。

桃子も俺にとって大切な人の一人だ。支えない訳がない。


「・・・・・分かった。」


式神契約を繋ぐとなると・・・より深くまでが良いだろう。

全員がいる中であの方法は取れない。苦しむ桃子に寄り添うように近づき周りの協力を得るために

アイコンタクトを取ると頷いてくれる。

そして・・・苦しむ桃子に顔を近づけ・・・・・口づけを交わした。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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