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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第五章 上杉龍穂 決戦編 第一幕 背中を預けられる仲間達
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第三百九十二話 将門公の魂

俺達と別れて行動していたはずの兼兄が姿を現す。

その横を小和田だった者を担ぎながら歩き、すれ違う瞬間肩を叩いて何かを呟いた捷紀さんは

神田明神を後にした。


「兼兄・・・。」


「遅くなったな。」


東京結界の再展開ではなく、別行動をとっていた二人が俺達と合流を果たした。

親父と連携を取るために一時的に離脱すると言っていたが、どうやら仕事を終えてきたらしい。


「さて・・・俺達も役目を果たそう。」


頬には血しぶきが付いており、乾ききっていない。

つい先ほどまで戦闘を行っていたとなると、道中で俺達を見張っていた深き者ども達を

掃討してくれた様だ。


「平将門の顕現を急ごう。」


顕現とは神術の中でも高等技術。時間がかかるのは兼兄も分かっている。


「・・何かあったのか?」


混沌とした事態であり、急ぐのは分かるが失敗すれば敵に隙を与えることになる。

策の中でも最も重要な一つであることは間違いない。

そんなことをこの人が分かっていないはずがない。それでも急かす理由は一つ。

親父と合流した時に何かあったのだろう。


「いや、”何もない”。むしろ順調そのものだ。」


「じゃあ・・・なんで急ぐ必要があるんや?ここは確実に行くために

時間をかけるべきやろ。」


「違うね。だからこそ、急ぐんだよ。」


あえて急ぐ・・・。どう考えても逆だろう。

だが、俺より場数をこなしている兼兄とちーさんが言うのなら必ず理由があると

耳を傾けることにした。


「龍穂を襲いに来たのは深き者ども達。絶対に勝てない奴らを送ってきたんだ。

それほどまでに敵には手数が無い。」


「対応できる手数がいない今なら有利を押し付けられるね~。」


「じゃあ・・・なんで・・・?」


未だに分からずにいると、隣に居た千夏さんが口を開く。


「・・何を恐れているのですか?」


・・そうか。順調であるからこそ急ぐ。兼兄達が見ているのは、俺達より遥か先。


「賀茂忠行だ。」


有利を取りたい相手。賀茂忠行の対して強い恐れを抱いている証拠だ。


「奴に対する資料は少ない。それほどまでに”見て帰ってきた者が少ない証拠だ”。

純恋ちゃんも奴の戦いを見ていないとなると、有効な策を打てない。」


「だからこそ出来る限りの策を打っておきたい。

そのためにはまずは基盤となる東京結界とその強化をしておきたいんだ。」


決戦に向けて、俺の孤立を企み場を整えようとした奴にとってしてみれば

東京の魔を阻む東京結界はかなり邪魔になるはずだ。

その間に様々な策を仕掛けるつもりなのだろう。だからこんなに俺達を急かしているんだ。


「・・それは分かった。でも、平将門の顕現なんて素早くできるのか?」


「神の召喚。いや、将門公に至っては元は人間だ。

肉体と魂。そして・・・その二つを繋ぎ合わせられる術式があれば顕現は出来る。」


元は悪霊であり、後に神として昇華された元人間。

次元の違う神とは異なる方法で呼び出すことができる。


「肉体と・・・魂か。」


だが、千年以上前に存在した人間の肉体なんて存在しない。

今から用意しようとしても相当な時間がかかるだろう。

素早くなど出来るはずがないと純恋が声を上げるが、その声を無視しつつ平田さんの方を向く。


「・・注文の品は出来ているのか?」


注文・・・?確か平田さんは・・・人形遣いであり、人形を作り上げる技術師でもある。


「ああ。大変だったがな。」


兼兄の問いに答えるため、札を取り出し中に入ったものを取り出すと、

装束を身にまとった精巧な人形が姿を現した。


「全員が思っている通り、将門公の肉体を用意するのは無理だ。

だが・・・似たような代わりの体を用意することは可能。

この構想自体は平さんが練っていたが、あの人の技術では難しかった。

だからこの構想を高い技術を持った平田さんに受け継ぐことでこの人形が生まれたという事だ。」


この人形・・・かなり特殊な作りをしている。

人形の事をよく知らない素人目でも分かる理由。かなり・・・人の近い力が

込められているからだ。


「これ・・・本当に人形なんですか?」


「驚くのも当然だ。これは・・・”素材が素材”だからな。」


兼兄があえてはぐらかした理由。それは人形の姿と込められている力ですぐにわかる。

人形はあくまで人形。人の形を模した無機質な何かで作り上げられる。

だが・・・こいつの肌。厚い化粧で下まで見えないが・・・恐らく人の皮が使われている。


「この人形は・・・”我が師の亡骸”で作られている。」


「なっ・・・!?」


誰も口に出さなかった疑問を、平田さんは躊躇なく口に出す。


「これは我が師の望みだった。平将門公を再び現世に呼び出すにはその血を引く

自らの体が必要であると。そして・・・その時は近づいていると常日頃言っていた。」


「非人道的だと言ってもらっていい。だが・・・これは捕えられていた平さん自ら申し出た事。

自らの命を代償にしても一族の悲願を叶えて欲しいと言う強い願いが

形となった物だ。これであれば・・・体として使う事が出来る。」


平さん・・・亡骸を使った人形・・・。

国學館襲撃の時からこれを狙っていたとしたら・・・なんという人だ。

もっと別の形で出来なかったのか。少なくとも・・・弟子達が後ろ指を指されることの無い

結末を選ぶことは出来なかったと思ってしまう。

だが・・・目の前で起きている事が結果が今は全てだ。受け入れるしかない。


「そして・・・魂を括りつける術式を担当するのは茜、お前だ。」


人形に神の魂を込めて使う黒川であれば、この人形にも同じように魂を込められるだろう。

この二人が扱う技術。そのどれもがこの時のために培われた技術なのだと実感する。


「後は・・・魂か。」


「ここで鎮魂祭をしたんやろ?なら、この場所にあるんちゃうか?」


だからこそこの場に来る必要があったんだ。神田明神に祀られている平将門の魂を

呼び出すために。


「・・・・・いや、”神田明神”にはない。」


だが、兼兄の言葉はここに来る意味を否定する。ここには・・・無い?

ここに無くて一体どこにあると言うんだ?


「じゃあ・・・なんでここに来たんだ・・・?」


「色々説明が必要なのは分かっている。だが、一つだけ確かな事。

”この場に魂はある”とだけは言っておこう。」


「はぁ・・・?」


中身の見えない会話だ。一体この人達はどこからこの状況の準備を整えてきたのだろうか?

だが、明かしてもらわなければならないと兼兄の言葉を待っていると

俺達の中の誰かに視線を向ける。


「・・・・・?」


それは俺達の中に向けられており、

その視線を辿ると・・・”桃子”に向けられていることに気が付く。


「ぐっ・・・!!」


先ほどまで平然としていた桃子は額に脂汗をかいており、その様子を見た純恋が

すぐさま駆け寄った。


「桃子・・・!?」


「反応を見せたか・・・。いよいよだな。」


遅れて俺達も桃子に駆け寄るが、その姿を当然だと言う風に兼兄は見つめていた。


「兼兄!桃子に何が・・・!?」


「それを説明するには護国人柱・・・いや、鎮魂祭の時まで話を遡らなければならない。」


護国人柱・・・。そして鎮魂祭。一体桃子に身に何が起きているんだ?


「まず結論から言おう。桃子の中に・・・”平将門公の魂が入っている”。」


この策に踏み切る経緯を、兼兄が語り始めた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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