表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第五章 上杉龍穂 決戦編 第一幕 背中を預けられる仲間達
391/474

第三百九十一話 父親として

倒れている小和田さんと降参している捷紀さん。

なぜこんなことが起きているのか分からず、得物を降ろすことができない。


「・・純恋さん。私が味方だと分かってくれるのはありがたいが、龍穂君達が混乱している。

説明の時間を設けてくれても良かったんじゃないかい?」


笑顔を浮かべながらため息を吐いた捷紀さんは優しく純恋を叱りつける。

それを聞いた純恋はこちらをちらりと見た後、すぐさま反論し始めた。


「さっきも言ったけど、こんな大っぴらな所でやるアンタが悪いやろ。

そのせいで龍穂達がいらん警戒した訳や。」


それは・・・確かにそうだ。こんな所で、しかもあの捷紀さんが血で手を染めている所なんて見たら

嫌でも警戒せざるおえない。


「・・耳が痛いね。」


申し訳ないと俺達に向かって謝罪を述べた後、謙太郎さんの方を向く。


「情けない姿を見せてしまった。当然、訳がある。

息子を前にして言い訳をするのはあまりに恥ずかしいが・・・聞いてくれるかい?」


この場で一番衝撃を受けているのか間違いなく謙太郎さんだろう。

実の父が人を切り伏せている。理由はどうであれ、許されざる行為を前にして

どんな思いを抱えているか俺にはわからない。


「・・・・・・・・・・・。」


いつもにこやかな謙太郎さんは返事を返さずにただ黙って捷紀さんを睨みつける。

人としての道を踏み外した父に対して、尊敬の念を抱くのは難しい。

隣の二人もいつものツッコミを入れる様子はなく、ただただ謙太郎さんの様子を伺っていた。


「・・聞こう。」


絞り出したような一言を聞き、再度済まないと謝った捷紀さん。

なぜこんなことになってしまったのか、聞かなければならない。


「これは・・・私なりの”けじめ”だ。期待を寄せていたなどという訳の分からない理由で

彼を放置していた。そして・・・それが理由で友人の息子と大切な彼女に対して

心身共に大きな傷を負わせてしまったことに対するけじめ。」


友人の息子と大切な彼女というのは・・・綱秀と涼音の事だ。

豪雲さんの事を語ってもらったことは無いが、どうやらかなり深い関係の様だ。


「けじめというのは・・・人の命を奪う事でしか出来なかったのか?」


「今回ばかりは・・・そうだね。全てがあまりに手遅れだった。

本来なら、彼は法で捌かれるべき。そうでなければならなかった。

だが、この緊急事態において武道省はまともに機能していない。

彼を引き渡そうとも誰も受け取らず、放置しておいても罪を重ねてしまう。

これ以上私の友人を傷つけないためにも、こうするしかなかった。」


いつも通り冷静に語る。全ての事柄に意味があり、理に乗っ取っている学者らしい姿を

見せていたが、最後に出てきたのは感情論。

らしくない。ただそう思う。それほどまでに友人として、豪雲さんを深く思っているのだろう。


「・・この行為が許されるなど思っていない。人の道を外れたんだ。

この戦いを無事に生き残れたら自首をするよ。

このまま逃げたら私は人ではなくなってしまうからね。」


法は人類の発展を支えてきた。法が無ければ人類は獣と同然だ。


「それで・・・俺が許すとでも?」


だが、法では謙太郎さんの感情を洗い流すことはできない。

法では罪を清算で来ても、感情までは償う事が出来ないのだから。


「・・それでいい。」


謙太郎さんの怒りを受けた捷紀さんは、許す事などするなという様に呟く。


「親の罪を許す事なんてしなくていい。

大人の責任は大人が、子供が背負う必要なんてないんだ。」


謙太郎さんは大学生。体格も良く実績もある。周りからすれば大人と言ってよいほどだが、

親子の関係はどこまでも変わらない。だが、だからこそ謙太郎さんは怒っている。

どう返答する気なのだろうか?


「・・・・・アンタがそう思ってんなら、それでいい。」


険しい顔は崩さないが、謙太郎さんは受け入れる。


「後悔しない人生を送れと言ったのは親父だ。友人との約束、そして間違った道を歩んだ

後輩の後始末。親父がその罪を受け入れないのなら話しは違ったら、

そこまで考えているのなら何も言う気はない。」


犯した罪がどうであれ、自分の言い聞かせてきた事に一切背いていない。

父親として自分の信念を曲げない姿を見た謙太郎さんはこれ以上指摘をしなかった。


「それに、俺の大切な後輩を唆した奴を倒してくれたんだ。

殺すことはして欲しくなかったが・・・感謝しているよ。」


「そうか・・・。てっきり、殴られるかと思ったよ。」


いつもは明るく、どこか抜けている人だがこうした真面目な状況では筋を通す

しっかりした一面を見せてくれる。

命を奪い取った責任を味合わせるために一発お見舞いすることも十分にあり得た。


「しない。それは親父が無所から出てきた時のために取っておかなくちゃならない。

罰というのは最も効果的に行われるべきだからな。」


しかめっ面のまま、謙太郎さんは視線を横に向ける。

やはり・・・父親が命を奪った事実は大きく、受け入れたと言っていたが

本心では目を逸らしたいのだろう。


「・・ありがとう。」


その様子を見た捷紀さんは感謝を述べ、血にまみれた小和田を持ち上げる。

武道省に自首するための材料にする気だろう。


「少し待て。」


立ち去ろうとする捷紀さんを引き留めたのは平さん。

謙太郎さんの精神衛生を考えると、出来れば早くこの場を立ち去って欲しい。


「おや、君達は・・・。」


だが、平田さんと面識がある様で親し気に語り掛け始めた。


「・・そう言う事か。申し訳ないね、神聖な場を血で汚してしまって。」


「謝罪しなければならないのはこちらの方だ。この場を守ってくれたのだろう?」


ここに来るまでに感じた視線。それは確かに深き者ども達だった。

だが、決してこちらを襲ってくることは無く、境内内にも姿を見せない。


「別に私は護ったつもりはないよ。私と出会った彼がたまたまここに逃げ込んだだけ。

少々邪魔が入ったけど、全て偶然だ。」


俺達を警戒していたと思っていた深き者達の矛先は元は捷紀さんに向いていた。

勝てない相手だと悟り、この場をやり過ごすつもりだったが俺達がここへ向かっていると

報告を受けて監視へと行動を変えたんだ。


(そう言う事だったんだな・・・。)


俺達の方が遥かに実力が上だが、足止めという名目であれば襲ってきたおかしくないと

思っていた。その謎が解けた事で心にほんの少しだけ抱えていた謎が消え去る。


「本題に入ろう。”ここで出来ると思うか”?」


ここで出来ると言うのは顕現の事だろう。どれだけ縁があっても、様々な条件が

合わさなければ難しい。


「そうだね・・・。」


境内の中をぐるりと見渡した後、こちらに視線を向けてくる。

俺達は顕現の儀式の詳細は知らされていなかったので力になれるとは思えない。

だが、捷紀さんは繰り返しこちらを見返してきていた。


「・・準備はしっかりできているようだね。後は君達次第だと思うよ。」


準備とは一体何を指しているのか分からないが、かなりの難易度を誇る顕現を

俺達だけできないことは無いと返事をしながら足を踏み出す。


「武運を祈ろう。今の私にはそれしかできない。」


ここから去ろうとする捷紀さんの前に黒川が立ちふさがる。


「あなた・・・確か、”護国人柱の儀式”に関わっていましたよね?」


護国・・・人柱?強力な妖怪や悪霊に対し、被害を抑えるために人の体に封印する人柱であり、

純恋と桃子がその被害にあった。いや、被害にはあったが、それは自ら望んだ結果。

そのことに対して二人は文句さえ言っていない。


「・・・・・・・・・・・・・・。」


黒川に尋ねられたが、答える気配を見せない。

この人ぐらいの実力であれば関わっていてもおかしくはないだろう。


「わざわざ答える必要がないと言う事か?」


「・・・・・そうだね。君達から尋ねられたらそう答えるかもしれない。」


では・・・純恋達か尋ねてみたらどうなのだろうか?

あの言いかたをされればそう思うのは当然であり、二人の方を向く。


「でも、この状況なら君達にも尋ねる権利はあるだろうね。」


だが、二人を視界に捕える前に捷紀さんが口を動かした。

この状況ならとは・・・どういう意味だ?


「確かに私は護国人柱の儀式に関わった。才能を持った若者を支えるためにね。」


「では・・・人柱にするために封印した神を、お前は知っているんだな?」


神・・・?玉藻の前と、山本五郎座衛門・・・だったはず。

俺は二人と共に戦ってきた中で、その姿を・・・。


(・・・・・?)


いや、見ていない。山本五郎座衛門の姿は見ていない。

桃子と神融和をしている姿しか見ていない。


「・・その話をするには時間が足りないな。」


だが、捷紀さんは答える様子はない。一体純恋達の中にいる神に何があるのだろうか?

ここまできて答えてもらわないなんて選択肢は無い。そう思っていると

その視線が俺達の後ろに向いていることに気が付く。


「頼んだよ。」


俺達ではない誰かに託して、捷紀さんは歩き出す。

ゆっくりと振り返ると、そこには兼兄と毛利先生の姿があった。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

少しでも興味を持っていただけたのなら評価やブックマーク等を付けていただけると

励みになりますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ