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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第五章 上杉龍穂 決戦編 第一幕 背中を預けられる仲間達
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第三百九十話 策の釣果

大きな鳥居を前にして、俺達は立ち止まる。

神田明神。本来なら参拝客など人通りが激しい場所なのだろうが、

閑古鳥が鳴くほどガラガラだった。


「やっぱり、誰もいないな・・・。」


「まあ、避難勧告が出てたら当然やな。」


何処へ行っても人がいない。むしろいた方が戦いにくいので好都合だと、

鳥居をくぐろうとすると前に立っていた平田さんに止められる。


「待て。」


明らかな警戒。だが、人もおらず何か仕掛けられている様子はない。

一体何に警戒のかと思っていると、ちーさんがヘッドセットから連絡を受ける。


「・・こうした緊急時においても、宮司というのは社を離れることはありません。。

奉り上げられている神に関わる貴重な資料やご神体などを取られてしまえば

神社としての機能を失います。」


警戒の理由を察知した千夏さんが、説明をくれる。


「それだけならまだいい。中にはかなりの力を秘めている物もあり、

悪事に使われたりする可能性もある。それ以外にも境内などの敷地内を荒されたことで

神の怒りを買い、祟りに見舞われることもある。

宮司とは神に仕える神官だ。そう簡単には離れられんのだよ。」


「だとしたら、社の中にいるんじゃないですか?

鳥居の近くにいないから警戒するなんて・・・。」


緊急時だとは言え流石に気にし過ぎではないかと言おうとしたその時、

俺の話しを遮ってちーさんが声を上げる。


「報告だよ。襲われていた東京結界を結ぶ神社の制圧に成功。

でも・・・深き者ども達がいやに潔く引いて行ったらしい。」


「潔く・・・ですか。」


「引っかかったと言っていいね~。」


いやに潔くという事は、誰かからの指示を受けたと考えていい。

通信が入ったのはついさっきの事だ。誰から見られたのか分からないが、

俺の動きが敵にばれたと言っていいだろう。


「これで東京結界の再展開がよりスムーズになった。そして白も大胆に動ける。」


「助かるよ~。」


敵を動かすことで、策をより確実に持っていく。それも俺達の役目だったと

ちーさんは語るが、その報告を受けた千夏さんの眼が二人の顔を鋭く突きさす。


「・・もう少し早く言っていただけませんか?策の共有は隊を率いる中で

もっとも重要な事柄の一つです。」


「秘密にしている訳じゃなかったんだよ。だけどあえて目立つなんてわざわざ伝えたら

そこの馬鹿が張り切るかもしれないでしょ?」


ちーさんから馬鹿にされても、謙太郎さんは顔色一つ変えず平然としている。

その姿を見た二人から頭を叩かれるがびくともしない。


(なんか・・・国學館にいた時より・・・。)


こんな状況で思ってしまっては失礼だが、能天気さが突き抜けてきている気がする。

寮長としての立場から下りた事が影響しているのだろうか?


「それでも言いかたはあるはずです。ここからは何が起こるか分からない。

それに、この戦いにはかなりの人数が関わっている。

これ以降連絡や意思疎通の漏れが無い様にお願いします。」


どんな理由にしろ、作戦の効果を知らされない事はあり得ない。

過剰に意識し、敵に悟られる事は確かに危険だが効果を意識しなければ策が上手くハマらない

事の方が明らかに悪手。


「まあ・・・そうだね。」


「これからまだ増援が来るのでしょう。その報告もお願いします。

我々にはまだ味方が必要なのですからね。」


戦いの主導権は俺達に回ってきた。だがそれでも千夏さんは味方が必要だと考えている。

それだけ賀茂忠行の力を警戒している証拠だ。どれだけ有利でも、

それを覆してくる力があることを忘れてはならない。


「味方・・・か。」


千夏さんの言葉を聞いた純恋は何かを呟くと、携帯を取り出し何かを打ち込み始める。

そして・・・千夏さんの肩を小さく叩き、耳元で何かをささやくと

千夏さんも携帯を取り出してどこかへ連絡を取り始めた。


「・・・・?」


「ひとまずこれ以上の報告はない。私達が警戒しなければならないのは敵の奇襲ただ一つ。

姿を消した深き者ども達がこの先にいる可能性は十分に考えられるよ。」


仕切り直したちーさんが全体に警戒を促す。

神田明神は平将門を奉っており、その地を引く平さんとも関わりがあるはず。

その弟子である二人も当然ここには多く足を運んだことがあるのだろう。

だからこそ、ほんのわずかな異変を察知したのかもしれない。


「・・分かりました。」


奇襲を警戒するとなると、境内に入る前に陣形を組まなければならない。

幸い人数も多く、様々距離に対応できる器用な人も多い。

接近戦が出来る謙太郎さん達を前方に起き、後衛には指示を送ることもできる

ちーさん達を配置する。

そして肝心の二人、平田さんと黒川は平将門の顕現を行うために絶対に守らなければならない。

要人を中心に置き、その周りを俺達で囲んで進むように指示を送り鳥居をくぐる。


「・・・・・・・・・・・。」


敵がいると分かった以上、気を抜く人たちではない。

辺りの警戒を怠ることなくピリついた空気が辺りを包み込む。


「・・千夏さん。」


そんな中、近くにいた千夏さんに向けて声をかける。

先程の行動は一体何だったのか。ちーさん達に言った手前、隠し事をさせる訳にはいかない。


「さっき、誰に連絡を取っていたんですか?」


「・・増援の手はずを整えていました。純恋さんの提案だったのですが、

こちらまで来れるか分からないのであてにはできませんが、もし合流出来れば

かなりの戦力になると思われます。」


純恋が増援のお願い・・・?未来から来た知識を使ったのか分からないが、

どうやら手助けに来れる人物の心当たりがあった様だ。

だが、純恋自身がやればいいことをわざわざ千夏さんを通したことがどうしても引っかかる。

一体誰を呼ぼうと考えているのだろうか?思わず聞きそうになるが、

不確定事項を頼りにされては困ると思ったのだろう。

これも先ほどのちーさんを叱りつけた状況と似ているが、

大きく異なるのは確実性の違い。ちーさんは確定している事を黙っていた。

既に決まっている策なのであれば伝えるべきのは当然だ。


「・・・・・分かりました。」


不確定な情報は不用意に混乱を与える場合がある。

援軍が来れると分かりしだい、全体に共有してくれるだろうと信じ

これ以上深く詮索するのは辞める事にした。


「・・視線を感じますね。」


前を歩く楓がぼそりと呟く。

物陰などから俺達の肌に突き刺さる視線はこの中の誰もが感じている。

隠す気を見せないわざとらしい視線。わざわざ俺達に自らの存在を知らせているのか、

はたまた戦い慣れしていない奴らなのか・・・。

少なくとも、深き者ども達の視線で間違いないだろう。


「警戒されているね・・・どうする?」


「どうするもこうも無い。我々の目的はこの先だ。誘い込まれてやるしかないだろう。」


奴らが俺達の狙いに気付いているのかは定かではない。

こうして手を出してこない理由は分からないが、俺達にとっては関係ない。


「もし襲われても、あなた方であれば対処は簡単でしょう?今は進みましょう。」


今頃深き者ども達に苦戦するほど、俺達は弱くはない。

これだけの人数がいれば数で押し込まれることはないと、堂々と進んでいく。

視線を集めながら境内にたどり着く。多くの参拝者が行きかう境内はきれいさっぱり。

だが・・・鼻につく鉄の匂いと目の前に広がる景色が俺達に得物を握らせた。


「・・来てしまったね。」


境内の中。血に濡れた刀を携えこちらを見ていたのは・・・捷紀さん。

その横には手に持つ得物で切り伏せたであろう血にまみれた誰かが地面に伏せている。


「なっ・・・!?」


千仞の誰かが俺達を待ち受けていると思っていた。

そうであるべきであると。だが、目の前の景色を見た瞬間、そうであって欲しかったという

願いに変わってしまう。


「な・・んで・・・?」


俺達を支援してくれていた捷紀さんが、まさか千仞のメンバーだったなんて

誰が想像しただろうか?この光景を息子である謙太郎さんに見せつけるためにここで

人を切り伏せたのだろうか?まさかの展開に頭が混乱するが、すぐさま得物を構えて

臨戦態勢を整える。


「こんな所を見せるつもりはなかったんだけどな。」


血しぶきが頬に着いた顔はいつも通り飄々としている。

だが・・・油断は一切できない。何故ならこの人は三道省の歴史の中でも一握りしかいない

三道全てで特級の資格を得た実力者。少しでも気を抜けば誰かが死ぬだろう。

全員が最大限の警戒を敷く中、あまりに無防備な足音が境内の中に響き渡る。


「・・もう少し隠れてくれへんか?アンタの息子もおるんやで?」


純恋が陣形を崩し、境内の中を歩こうとしている。

得物を携えてはいるが、式神を連れてはおらず無防備もいい所だ。


「純恋!!」


これでは助けに入ったとしても間に合わない。急いで駆けよろうとしたその時、

奥から鋼が落ちた音が響く。

攻撃を仕掛けてきたと兎歩で純恋の前に立ち得物を構えるが、

視界に入っていたのは得物を投げ捨て両手を上げる姿だった。


「すまないね。敵意は無いんだ。」


「落ち着け。味方や。」


何が起きているのか分からず警戒を解かずにいると、純恋がよく見ろと切り伏せられた

誰かに指を差す。


「あれ、小和田やろ?」


「・・ああ、そうだ。」


小和田と言えば・・・涼音を支援しようとしてい学者であり、綱秀を唆した張本人。

その言葉を聞き、目を凝らすとそこには確かに小和田さんの姿があった。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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