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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第五章 上杉龍穂 決戦編 第一幕 背中を預けられる仲間達
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第三百八十八話 平将通の忘れ形見

「黒・・・川・・・・?」


なぜこんな所に黒川がいるのだろうか?関係性が見いだせず、

同じ結末を見ているはずの純恋に尋ねるが、なぜか驚いた表情を浮かべていた。


「・・知らん。」


「純恋・・・?」


「私が見た未来じゃ、黒川はおらんかった・・・。」


未来を見た純恋が知らない景色。一体何が起きているのだろうか?


「どうやら、その反応だと違う結果が生まれているのだろうな。

だがよく考えろ。その結果は間違った選択肢を歩んだから生まれたものだろう?」


「・・あっ。」


「既に違う道を歩んでいる事実を忘れるなよ。あまり参考にしすぎると

また間違った選択を踏むことになるぞ。」


俺が合流したことで、純恋が歩んだ未来とは違う事は確かだ。

それなら違う結末が訪れた理由が必ずあるはず。

その理由を知るためにも黒川と話しをしなければならない。


「三人とも、こっちに来な。」


伊達さんが全員の事を呼ぶと、俺達の前にやってくる。


「まったく・・・避難した先から逃げ出そうとしていたから危なかったよ・・・。」


「いいタイミングで来てくれた将達がいなかったら確実に逃がしていたね。」


火嶽達か・・・。姿を見せていなかったが、真田達の元へ行っていたのか。


「色々聞きたいことがあるけど・・・まずは御爺様に聞きたいね。何で茜を呼んだの?」


かなり急いで出てきたため、俺も状況を詳細に把握できていない事を実感する。

個人的に色々聞きたいが・・・今は武田様の話しを聞くのが最優先だ。


「出番が来たという事だ。」


「出番・・・?」


「わしの友人である、”平将通”の忘れ形見。

このような非常事態において役目があるとだけ言い残してこの世を去った。」


—————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————


友人の顔を見るために武道省のコネを使い刑務所の中にやってきた。

牢の中でも最上級。明かりもまともにない牢の前に立ち、将通と再会した。


「・・来てやったぞ。」


動けない様に体を特殊繊維の布で縛られた奴の無残な姿。

当然だ。未来ある若者達の学び舎を襲ったのだからな。


「・・・・・お前、か。」


「お前といい仙蔵といい・・・一体何をやっている。」


叱ろうと思ってここまでやってきた。役目を終えた者達がこうして大罪を犯す。

老い先の短い人生に汚点を塗り、罪人として果てる選択をした友人を叱咤しようとした。


「丁度いい・・・。お前に”託したい”ことがある・・・。」


だが、無残に縛られていた友人を目の前にして出てきた感情は・・・悲しみ。

身を粉にして日ノ本に尽くしてきた友人を前にして言葉が出なかった俺に対し、

平が口を開いた。


「・・この期に及んで謀か?」


「ああ・・・。お前にしか頼めない・・・謀だ。」


誠実を体現した様な男だった。謀などには縁遠かったはず。

変わり果てた友人とこれで会うのは最後だろうと、せめて話ぐらいは聞いてやろうと

ため息を吐きながら分かったと呟いた。


「俺の弟子・・・。可愛い弟子達を・・・”うまく使ってやってくれ”・・・。」


「うまく・・・使ってやってくれだと?」


変わった言い回しだった。共に大罪を犯した弟子達だ。匿ってやってくれと言うべきだったはず。


「ああ。あいつらには・・・俺の夢を託してある。

いずれ、その時が来る。その時に・・・あいつらが身に着けた技術を使う場を

整えてやってほしい・・・。」


「・・それはお前の役目のはずだ。関東守護の血を引く者が・・・情けない。」


平の夢。いや、野望。この地を思うあまりに呪いにまで化した先祖の無念を晴らすと、

いつの日かの若葉の時に深く語り合った。


「俺には・・・無理だった。まさか、”あんな所に隠されていた”なんて・・・な。」


「実直なお前が嫌に回りくどいな。本心を語ったらどうだ?」


「いや、これでいい・・・。影に隠された我が野望・・・。

大っぴらに語るなど、無粋だからな・・・。」


頼みごとをしておきながら、詳細を何も語らない姿。

こいつも・・・仙蔵と同じ様に・・・。


「・・あいつの様に未来に託したなどほざくのは感心せんな。」


手を回してくれた真田に視線を送り、この場を後にさせる。


「お前が望むのなら・・・わずかであるが外に—————————————」


老いた我々が未来に託すのは当然の事。だが、行く末を見守ってやることもまた我々の役目。

未だやれることがあるのなら、やってやるべきだと温情をかけてやろうとしたその時。


「ダメだ。」


俺の心を読んだ将通が、止めに入った。


「・・・・・何故だ。」


「俺は・・・ここで”死ぬ必要”がある。少しすれば・・・死神がやってくるはずだ。」


・・仙蔵と同じだ。死ぬことが、死ぬことこそが自らの役目だと言い放った。


「どういうことだ?まさかお前・・・。」


「仙蔵と同じだ・・・。俺が死ぬことで、心を動かす者がいると言う事だ・・・。」


心を・・・動かす?一体、こいつは何を企んでいる?


「・・・・・死神を避ける事は出来ないのか?」


「出来ない。する気もないがな・・・。」


また・・・友人を失う。今まで何人も見送ってきた。

戦いで命を落とした者。命半ばで病に倒れた者。様々見送ってきたが・・・慣れない。

慣れてたまるものか。


「今生の別れ、か・・・。」


「そう言う事になるな・・・。」


死が近づいてきているというのに、将通の表情はどこか晴れやかだった。

唯一の救いは、後悔の念を抱いていない様子を見れた事。


「・・お前の頼み、出来る限りやってみよう。」


どいつもこいつも・・・気付けば先に行ってしまう。

だが、ここまで共に切磋琢磨してきた仲だ。最後の頼みくらいは聞いてやろうと渋々承諾した。


「そう言ってくれると、思っていたぞ・・・。」


「まったく・・・。」


別れ際に青い春の時の様な会話を交わすなど、嫌になってくる。

だが、託された役目は必ず果たさなければならないと覚悟を決め、その場を去った。


————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————


武田様語られた、平さんとのやり取り。兼兄から色々と聞いていたが、

改めて真の悪人ではなかったことを実感する。


「このやり取りの少し後、兼定の奴が会いに来てだな。黒川を託されたと報告してきた。」


分厚く、使い込まれた手で黒川の頭をわしわしと撫でる。

不貞腐れた顔で払いのけようとするが、武道省の理事ともある御方だ。びくともしない。


「影というのは兼定。そして・・・使い所というのは今なのだろう。」


「今・・・ですか。」


「東京結界でも耐えきれない様な何かが起こる。そうなれば東京・・・いや、被害は

関東全域に響くだろうな。」


東京は日ノ本の首都。三道省も然り、様々な機能が集約されている。

それ全て破壊されたとなれば、関東どころか日ノ本全員に及ぶだろう。


「純恋、そうではないか?」


未来から帰ってきた純恋に対し、武田様が尋ねると何かを思い出したかのように

大きく頷く。


「・・八海までの道中、日ノ本かと疑うほどに酷かった。

三道省が崩壊し、治安維持が出来なくなって大変なことになってたわ。」


「そうだろうな。わずかな時間で拠点を別の場所に移せたとしても、

崩壊した東京を目の当たりにした職員達が混乱してもおかしくはない。

その状況を見計らい、動き出す奴らもいるだろう。」


自分がそこまでの戦いを繰り広げた・・・という事なのだろう。

想像がつかないが、ハスターの力をフルに使う事が出来れば・・・あり得るのかもしれない。


「・・・・・ですが、それが分かっていたとしても防ぐ策など本当にあるのでしょうか?

それこそ神の力・・・。しかもかなり強大な神でなければ・・・。」


「どうだろうな。国魂神くにたまのがみを連れて来れれば可能かもしれん。」


国魂神と言えば、日ノ本の国土そのものが神と成ったとされる存在だ。

そんな神を呼ぶにはどれだけの力を使えばいいのか分からない。


「たった一つの策だけでは無理だろう。

だが、複数合わせれば被害をかなり抑えられるかもしれん。」


「複数・・・。東京結界と、もう一つという事ですか?」


「ああ。その一つを、今から顕現させるのだ。」


黒川の背中を軽く叩きながら武田様は言い放つ。

顕現となると・・・東京を護ることができる神を召喚する気なのだろう。


「お前は強大な力を持っているにも関わらず、周りを気に過ぎると聞いている。

東京を護る。それすなわち、これから決戦を迎える龍穂達にとって

街の被害を考えずに戦う事が出来る大きなアドバンテージとなるだろう。」


確かに・・・それはありがたい限りだ。全力で風を巻き起こすことが出来るのなら

誰にも負けない自信がある。


「・・連れてきました。」


影から戻ってきた兼兄が連れてきたのは平田さん。

この二人が、平さんの忘れ形見であることは間違いない。


「よし、我々はここから二つの策を打つ。一つの東京結界の修復。

日ノ本を揺らがせる魔から東京を護る結界を再度展開を試みる。」


武田様が懐から古い書物を取り出す。あの中に結界の術式が刻まれているのだろう。


「そしてもう一つ。これが肝心だ。東京結界だけではこの都市を護れない。

東京、そして・・・関東が危機に陥っているこの状況を打破する神の召喚を試みる。」


やはり・・・神か。関東を護る神。そして平さんと言えば、思いつくのはたった一柱しかいない。


「”平将門”の顕現を行うぞ。」


関東守護を担った伝説の豪族の顕現させる策を、武田様は打ち立てた。



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