第三百八十七話 電波塔で待つ人物
戦後、他の国々に離されないようにと近代化などの研究が進められ、
テレビの導入のために建てられた電波塔。
背が高く、象徴的な色も相まって東京のシンボルとなっていた。
新たな技術導入のため、新たに作られた電波塔は新たな東京のシンボルとなっていた。
「あそこだ・・・。」
以前の電波塔よりさらに背が高く、空を飛んでいると遮る物が無く目に分かりやすく目につく。
あの場所を作戦本部を置く気なのかもしれないが、あまりに目立ちすぎてしまう。
それに・・・近代的な建物だ。以前話のあった東京結界などの防衛システムに
関与できるとは思えない。
だが、武道省理事ともある方が何も考えずに分かりやすい場所に留まっているとも考えられず
いくら考えても結局は着いてから話しを聞くと言う結論にたどり着く。
「なんかいるな・・・。」
新たな電波塔。東京スカイツリーの方を見ると、その周りを護るように複数の何かが飛んでいる。
「敵や無い。あれは伊達様の式神の龍達や。」
伊達・・・様?確か神道省襲撃の責任を取って高官の立場から下りていたはず。
身軽になったからこそ、自由に立ち回っているのだろう。
「俺が行ってくる。ここで待っていてくれ。」
兼兄が影に沈むと、ワイバーンは様子を見るために動きを止める。
伊達様がいるとなると・・・息子の伊達さんもいるかもしれない。
そうなると謙太郎さんもいるだろう。
頼れる仲間達との合流。決戦を控える俺達にとって何よりも大きな収穫となる。
「・・・・・隊長。」
少し空いた時間にワイバーンの操縦士が竜次先生に向けて何かを放り投げる。
「これで他の奴らにも連絡が取れる。後はうまく使ってくれ。」
受け取ったのは旧式の通信機。日ノ本製・・・ではない様だ。
「うまく使ってくれってな・・・。」
「・・珍しく弱気じゃねぇか。兼定みたいに弱気になったか?」
どうしてやろうかと先生を見た操縦士が、風よけのゴーグルを外して笑みを向けながら言い放つ。
「お前な・・・。」
「別に死ぬのが怖くないって言ってるわけじゃねぇよ。だけどな、決戦はすぐそこだ。
男も女も関係ねぇ。勝負時に攻めらんねぇ奴が勝ち取る物なんてたかが知れてるっていったのは
お前だぜ?」
所々鱗を身にまとった白の隊員は、竜次先生を鼓舞する様に荒く肩を叩く。
勝負時か・・・。確かに、この人の言う通りだ。
「そう・・・だな。」
「あんま難しく考えんな。それで兼定とそこにいる龍穂がやられたんだろ?
背負うな、背負わせろ。背わせすぎるな、背負え。
一人背負うなよ。全員で背負っていくんだよ。」
これが家族と呼び合う関係値か・・・。その真髄を目の当たりにしている。
ただその言葉を使って関係を結んでいるわけじゃない。背負い合えるからこそ
家族と呼び合える。
「・・・・・分かったよ。」
家族からの鼓舞を受けた竜次先生は覚悟を決める。
誰もが抱えている不安。それに対してたった一人で立ち向かうのではなく、全員で戦う必要がある
事を俺も純恋から教えてもらった。
決戦となれば・・・何が起きるか分からない。だからこそ、全員で立ち向かう必要がある。
「・・待たせたな。」
話し合いが終わったタイミングで兼兄が帰ってくる。すると塔を守っていた龍達が
俺達の道を開ける様に移動する。そして兼兄が操縦士に指示を送ると、電波塔に入るために
動き始めた。
「中から入りこむためには電波塔の整備に使われる入り口を使う。
風が強いから気を付けてくれ。」
人気の観光地として人が多く行きかう。電波塔の機能の点検以外にも、
外観の清潔さを維持するために清掃も頻繁に行われている。
その際に使われる出入り口から入る算段をつけてきてくれたらしい。
十分に近づき、止まり木に停まる様にうまく着地すると風よけとして留まってくれる。
苦も無く中に入り込み、展望台のフロアまでたどり着くと見慣れた人達が俺達を
出迎えてくれた。
「おう!なかなか大変だったみたいだな!!」
予想通り、謙太郎さんや藤野さん。そして・・・伊達さん。いつもの三人が声をかけてくる。
「ええ、色々ありました・・・。」
「そんな暗い顔をするな!綱秀は無事だと火嶽から聞いている!!」
「敵から仕掛けられた上に仲間からの不意打ち。これで誰も命を落としていないのは
成果として十分だ。胸を張れ。」
俺が無事な事を確認した伊達さんと藤野さんが兼兄の方を向きながら頷いて奥へ歩いていく。
「純恋達もお手柄だ!龍穂を無事に連れてきてくれてありがとな!!」
東京が危機に陥っている中でも変わらない、いつもの底抜けの明るさは非常にありがたい。
前を向ける手助けは、今の俺にとってなくてはならないものだ。
「・・やっと来たね。」
奥から響く声に振り向くと、そこには伊達様と真田様。
そして・・・かなりご高齢の方がやってくる。
「色々と話すことがあるが、ひとまず紹介させてもらおう。
武道省理事である武田次郎様だ。」
純恋から聞いた通り、武田様が俺達の前に現れる。
「・・君達の事は孫から聞いている。頼りになる先輩達だとな。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
何だか気恥ずかしいが、そんなことを言っている場合じゃないとしっかりと
武田様の方を見つめる。
「何故我々がこの目立つ所にいるのか不思議に思った事だろう。
だが、それにはちゃんとした意味が————————————」
真田様が肝心な所を説明しようとしたその時、何故か純恋が遮りにかかる。
「東京結界の再展開・・・やろ?」
純恋の言葉を聞いた三人は、驚きの表情で純恋に視線を向ける。
「武田次郎様。アンタがここにいるっちゅうことはそう言う事なんやろ?
複雑な結界の術式のありかを知っているアンタが・・・な。」
「これは・・・驚いたね。」
「何故、それを・・・?」
説明を求められた純恋は未来から帰ってきたと返すが、二人は受け入れられない。
当然だ、つい先ほどまで、俺達も信じ切れなかった。
だが・・・真田様の説明を先回りすぐ発言。そして二人の驚く表情は、
未来で説明を受けてきた事を俺達に知らせてくれた。
「二人共、やめろ。」
武田様が二人の前に立ち、取り出した扇子で制止を促す。
「どうやって知ったかなど、今はどうでもいい。むしろ説明が省けてありがたい限りだ。
現在、東京五社が襲われ東京に張られていた退魔の結界が失われた。
これでは敵の侵入を簡単に許してしまう。
それを再び張るために私がここにいると言う事だ。」
東京結界・・・。東京五社を結んだ巨大な術式で張られた結界。
敵の襲撃を受けた際に東京を護る結界だが、綱秀の襲撃と共に行われた深き者ども達の
襲撃によって機能が失われたらしい。
「・・純恋。未来から帰ってきたと言ったな?
という事はその時も同じ道をわしらは辿ったはず。」
「今の話しを・・・信じるのですか・・・?」
純恋の話しを受け入れられない真田様が思わず尋ねるが、武田様は気にする様子を見せない。
「今の話しが本当なのか嘘なのか、どうでもいい。
絶対的な事実として、日ノ本でも限られた者しか知らない物事を知っている。
そして・・・その上で、まともに説明を受けずに我々に語った事実を加味すれば、
話しを聞くことは決して悪手ではない。それぐらい理解しろ。」
二人が動揺する様な中でも、武田さんは冷静沈着。俺達が想像できないくらいの場数を
踏んできているのだろう。
「それで、だ。東京結界はどうなった?修復自体は出来たのか?」
聞いただけでも複雑な術式である事だけは理解できる。そもそも作戦は実行できたのか。
そしてその効果を確かめることで実行の判断材料とする気なのだろう。
「・・申し訳ありませんが、東京結界が張られたかは分かりません。
ですが・・・もし、張られたのであれば・・・あまり効果が無かったのでしょう。」
そして、純恋の口から放たれたのは武田様が期待していたであろう結末とは真逆。
わざわざ目立つ所までやってきた成そうとした策が無意味であった報告だった。
「私の記憶だと、東京から離れる際に結界は張られていなかった。
これから起こる戦いに耐えきれなかったんだと思います。」
「・・・・・そうか。」
「・・すまんな。話の腰を折ってしまって。」
申し訳ないと謝る純恋に対し、またもや動揺する様子さえ見せずに返答する武田様。
「謝ることは無い。むしろ良い判断材料になった。」
手に持っていた扇子を音を立てながら折り畳み、隣に立つ二人に向けて指示を出す。
「真田。近藤に連絡を取り、いつでも発動できるように準備をさせておけ。
伊達。奥の子供達を連れてこい。」
東京結界の再展開だけではなく、次なる一手を持ち合わせていた。
「アンタ・・・一体何を・・・?」
「策とは、いくつか用意しておくものだ。いざという事があった時のためにな。」
そう言うと、兼兄を呼び出し耳元で何かを伝える。
恐らくまた指示を出したのだろう。頷いた兼兄は影に沈んでいった。
「さて、東京結界が意味をなさないのであればだ。”強化を図る”しかあるまい。」
「きょう・・・か?」
「国學館の月桂寮の上階に東京五社の様子が見れるのは知っているな?
そしてあれが結界を強化する装置であることもだ。」
平さんの襲撃で上階に入った時に聞いた事がある。
あそこには確か・・・安倍晴明の亡骸があったはずだ。
「同じ状況にあるわしがその装置を使わないなんてありえない。
だが、それでも結界が破壊されるのなら最終手段を使う必要がある。」
「まだ、何かあるんか?」
ああと呟いた武田様がやってくる足音に反応して振り返る。
一体誰を連れてくる気なのかと武田様の視線を追うと、予想外の人物がそこにはいた。
「お前ら・・・。」
武田と・・・真田。親族がいるのだからいてもおかしくはない。
だが、もう一人。何ら関係性が無い様に見える人物。
「・・・・・・・・・・・。」
”黒川茜”の姿がそこにはあった。
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