192.ロケット?
俺はワダカミとエリマキ、それからスネアテを纏わせながら、草摘みをする。
そろそろ魔草やら魔薬草を補充しとかないとな。
俺は煙管で煙を吸いながら、黙々と作業する。同じ体勢でいると、息がつまるので、時々立ち上がり、身体を伸ばした。その時にワダカミが鼻をクンクンと動かしていることに気づいた。そういえば、ワダカミは煙の影響を与えることが出来るんだったと思い出す。
俺は顔をワダカミの方に向けて、煙を吹きかける。ワダカミはせき込むことなく、一息で白い煙をあっという間に吸い込んでしまった。
「ふふふ」
煙を吸うという行動が、俺の中でワダカミとの同族意識のような感覚になった。
「ん?」
ワダカミの身体に力が入る。それは良い。元気なことは喜ばしいことだ。しかし、何故か嫌な予感がする。ワダカミが俺の頭に顎を乗せた。肩に置いた前足が俺の身体を下に押し、身体が前のめり気味になる。
「ちょ!何してんの!?」
ワダカミの後ろ足が地面につき、片方の足をずりっと少しだけ引いて跡をつける。
「まさか」
慌てて煙管を仕舞って、肩にかけられている前足に縋りつくように握りしがみつく。まるでガタガタと上がっていくジェットコースターのような感覚だった。俺にとってジェットコースターは忌避すべきものだ。何故、あれを乗って楽しめるのか全く分からない。
結論をいえば、気分は最悪だった。血の気が引くとはこのことなのだろう。
ドンッ
ワダカミが地面を蹴った。地面も揺れた気がした。そして、俺の身体には空気の圧力と衝撃が加わる。その衝撃はまるでロケットでも体感しているようだ。
木々よりも高く飛び、徐々に地面が遠くなっていく。森を一望できるどころか海まで見えた気がした。
ゆっくり観察できるような状況ではないので、見間違いだったかもしれないが。
ある程度、上りと今までの速度が緩やかになる。つまりどういうことかと言うと、ここから下に落ちるということだ。落ちる瞬間、心臓が止まりかけた。
「ぃやぁぁああああ!!!ふざけんな!バカバカ!バカあ!‥‥‥‥ハッ!嫌ぁああああ!」
思いついた罵倒を口にする。そして、一度意識が落ち、すぐに戻ったがまだ落ちていることに絶望した。
陸が近づくと、ワダカミは後ろ脚で器用に着地し、軽くジャンプして勢いを殺した。
「地面大好き‥‥」
無事に帰れた。楽しそうにしているエリマキやスネアテ、ワダカミと違い、俺は横になり、地面のありがたみをしかと感じるのであった。




