183.黒い獣
休憩を挟んでも、火の勢いは変わらない。
「なんなんだ、この火は‥‥」
俺は恐れおののいた。花の匂いもするし、焦げ臭い臭いもする。もうここまできたら、肉は諦めたほうがいい可能性が出て来たぞ。こんなことなら、ちょっと手間でも一つずつ焼けば良かった。また作り直しかぁと後悔する。
上を見上げ、炎を中心に空が虹色に輝いている。それを見ながらいつもより綺麗だなぁと現実逃避する。
「ん?地震?」
地面が少し揺れた。それは徐々に大きくなる。
「来るぞ」
先生は下がり、俺を前に出す。その行動にピンっと来る。これってもしかして。
空気が張り詰める。
それは花の匂いに誘われたのか、それとも別の何かにつられてやってきたのか。ゆっくりと地響きが近づいてくる。
スネアテは俺を近寄り、シューっと鱗をすり合わせて、威嚇している。フレッドも唸りはしないが、歯を見せていた。
俺は思い出した。あの時、獣はまだいたと。フレッド達よりも大きな体の奴らがあの時逃げたはずだ。
いままで、見なかったから別な場所に行ったものだと思っていたが、もし、復讐の機会を伺っていただけなら‥‥。
木々の隙間からヌッと黒い狼のような姿の獣が姿を現す。黒いもやを背負って。しかし、その獣が咥えていたものに、俺は叫んだ。
「エリマキっ!!」
巨大な蛇の姿になっていたエリマキ。もしかして、戦ったのだろうか?それともなすすべなくやられてしまったのだろうか?
エリマキの顔より少し下の部分をくわえられて、歯が食い込んで血が流れている。エリマキは気を失っているのか、瞼を閉じていた。
「エリマキ、エリマキ!!」
俺は叫んだ。近寄れはしない。そんなことしたら、あっという間にやられてしまうだろう。
何度も名前を呼び、ようやくその声に反応して、ゆっくりと瞼を開けた。それに気づいた獣が噛む力を強くする。
「エリマキ!!」
エリマキは体をくねらせて、獣の顔に絡みつき、自分も同じように獣の顔に嚙みついた。しかし、獣は離そうとはしなかった。
はぁ
先生の大きなため息が聞こえた。と、思った瞬間、先生は獣の横顔に回し蹴りをお見舞いしていた。
獣は、エリマキもろとも吹っ飛ぶ。
「エリマキ‥‥!」
衝撃で口から離されたエリマキは、木に衝突する。獣もまた別の木にぶち当たり、その巨体ゆえにいくつかの木がなぎ倒される。
そうして、俺はようやくエリマキに近づくことが出来た。エリマキは噛まれたところから血がダラダラと流れていてとても痛々しい。しかし、エリマキはそんな事よりも怒りで頭がいっぱいになっていた。




