176.花の香り
花のボールを串焼きの串に刺して、焚火の周りに刺しておく。火のつけ方は、昨日と同じ方法でつける。少しずつ大きくなっていく火。火が直接、花のボールに当たらないように調整する。でも、火が通るようにギリギリを責める。
火かき棒やトングを使いつつ、大きくしたり小さくしたり、花のボールの位置を調整しながら見極める。
そうしてると、聞き覚えのある音が聞こえた。そう、取得できるスキルが増えたのだ。
俺は興味が出て、一覧を開く。
「新しいものは‥‥っと、これか」
《火の番》というスキルだ。火を調節しているものに出てくるスキルらしい。まぁ、他に欲しいスキルがあるから取得しないだろうけどな。
ステータスを眺めていると、ゴウっと大きな風が吹いた。身体をふらつかせるほどの強い風だった。
風は火の粉を飛ばして、花のボールに辿りつく。
あっという間だった。それはまるで、油に引火するかの如く燃え盛る。
「うそだろ、おい」
俺は呆気にとられる。花のボールが‥‥。塊肉が‥‥。
ごうごうと燃え盛る中、花の良い香りが漂ってくる。肉が焼ける美味しそうな匂いでも、焦げ付く臭いでもない。花の香りだ。
桜のような、金木犀のような、あるいは百合のような、はたまたラベンダーのような。
混じっているわけではない。まるで一つ一つの花を鼻の先で咲かせ、しかし、香水のように強く感じるわけでもない。開花して、一瞬で風に乗って花弁が散って飛んでいくような感じだ。俺はもう少しこの不思議な感覚を楽しみたくなった。
先生やエリマキ達には、諦めてもらおう。俺は焚火に火のボール、もとい、花のボールを突っ込んだ。
どうやったって失敗になるしかないなら、楽しめるほうを選んだ。
水で火を消すって方法もあるけど、それだと、結局肉に火は通ってないだろうし。そのままにしても、火が消えっちゃったら、生焼けか黒こげのどっちかだろうし。だったら、火であぶって香りを楽しんでワンチャンにかけたほうがお得だ!多分‥‥。
「うーん、この花の香りは何だろう?」
俺は花に興味があるってわけでもないから、勿論分からない香りもあった。それでも、嫌な香りには会わなかった。
俺は膝を抱えて座った。花の香りを嗅ぐと安らぐのは、なんでなんだろう。いつの間にか、両隣に来てくれてエリマキとスネアテは寄り添ってくれていた。向かいにはエリルがいて、花の香りを楽しむように目を閉じて座っている。
先生やフレッド達はあまり興味が無さそうだった。




