闇中輝眼(銀河狼、2007/2/12)
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○あらすじ
廃墟となった埠頭の冷凍倉庫の一棟で、殺人の依頼をする一人の女性。しかし彼女はまるで狼のような大型の獣によって殺されてしまう。しかし、その彼女の切なる願いを聞き届けようと動き始める、謎に満ちた、作り物のように生気なき、美しい青年と、世界的に名を轟かせる、富豪であり、モデルである女性、そして童顔のかわいらしい少年。彼らはある目的のために、男を死へと誘う。ダークファンタジー。
○登場人物
立花美和子……ある倉庫の中で、何者かに殺された女性。自分を破滅させた男への殺害依頼を叫ぶ。
木内貴史……富豪。その正体は多くの女たちに取り入り、破滅させてきた悪党。
狼……ある豪邸に住まう美青年。孤高に生きるが、何かの秘密を抱えている。
○感想
この作品は前後編に分かれている。あらすじが示しているように、一人の女性の死をめぐる人々の憶測、そしてその背後に見え隠れする異形の者たちの暗躍。
最初こそ非人間的だが、読み進めるうちに彼らにも彼らなりの素朴な感情と情緒がある、ということがよくわかって来る。この人外の種族がどこから来たのかについてはほんのりとしか触れられない。しかし、彼らの高貴さに関しては、冗長なほどに描かれている。そして彼らの他にも似た存在がいることも。
話数自体はさほど長いわけではないが、一話一話がボリュームが大きい。文体に関しては、ネットに適したフォーマットではない。伊達に大賞に応募した作品ではないのだな、という気迫が感じられる。それにしても風景描写や日用具の説明など、細かい所まで綿密だ。それが物語の本筋と関係ないのではないかと思われる所でも余すところなく披瀝されるのは、衒学的でさえある。世界観に即した社会描写が詳しく煩雑な節があるが、このまめな描写の代償だろう(第一話の娼婦に関する記述は時代を感じさせる)。少なくとも片手間に読める作品ではないのは確かだ。とはいえ、ダークで薄汚れた気配はあるがギャグがないわけでもない。狼と獅王子があまりに世俗を超越した仙人のような姿をしているので、鷹人の人間臭さがなおさら光る。
読みにくいというようなことは言ったが、決めるべきところはきちんと決めている。美和子の頭上に化け物がぬっと現れるシーンが実におどろおどろしいのだ。まさにサスペンスの始まりという感がある。美和子の死と、木内の末路に、この作品の晦渋な文体の力がこもっている。
現実のような作品に見えるが、最後までこの作品を覆う雰囲気は幻想的なものだ。確かに題材的に後ろめたさはあるし、異形の者たちの所業は凄惨ではあるが、どこか白昼夢にも似た暖かみが最後に届くのである。
漫画で言えば青年漫画にありそうな話だ。狼の容貌などは天野喜孝の絵柄で描かれる気がする。




