6.
「‥‥荒野か」
「この辺とそう変わらないんじゃない、ミハシラなんて大層な名前の割には」
確かにこの辺りも荒野だ。というより、町以外は全部荒野だ、今は町の壁の中で全ての食料を作っているから。畑を囲った中に人が住み着いたと言うほうが正しいだろうか。その外側には樹の一本もない。百年人間の手が加わらなかった土地は、百年変わらず荒れたままだ。
「‥‥まぁ、そうか。ソノリアは普通に近付けたのか、そうか‥‥」
その時すでにその格好だったのか、と訊こうとしてやめた。道連れが女性だったら杞憂だが、男性の女装が大丈夫だからと言って生物学的に女性な自分が大丈夫な理由にはならない。それに、別にソノリアはむやみに可愛らしいだけで女装をしているわけでは多分、ないし。
「あぁ、でも、地元の誰も、行ってみようとはあまり思わない、て言うのはあったかな」
「‥‥どういうことだ?」
「マナファナ、おいそれと近付けない、て言ったでしょ。
別に何か目に見える障害があるわけじゃないんだけど、確かに、不気味なくらい誰も近付かなかったな、と思って」
こんな世の中だ。忌むべき柱が立った場所は、忌まわしいが故に、逆に信仰の場になってもおかしくはない。縋り付くものは何でもよいのだ、それが忌々しい物でも、それ故に拠り所になることは考えられる。
だが、それがなかったという。地元と言ってもどの程度地元なのかは分からないが、地元の人間が言うのならそうなのだろう。
「見に行った時も、見事に荒野だったし。僕はムキになってたから進んだけど、確かに何だか気は重かったような気がする」
それが本当だとすると、
「つまり心理的なものか‥‥だったらまっすぐ行っても大丈夫なんだろうか‥‥」
今は回り込むつもりで道筋を立てている。
祖母はありえないくらいの方向音痴だったが、幸運なことに母にもマナファナにもその性質は受け継がれなかったので、まっすぐ向かおうと思えば簡単だ。流石に荒野を何日もひたすら突っ切ることは考えられないので、途中町に寄るとしても思ったよりも早く着くことができそうだ。
できる限り早く、目的を達することができるならば、それは喜びだ。喜びなのだ。
――マナファナは必死に道筋を考え直していて、だからソノリアが気遣わしげに見ているのに気付かなかった。




