5.
「御柱の地だ」
なんだかずいぶん、自分はこの男を嫌いではないのだなと気付いたから、不機嫌そうにマナファナは彼に目的地を告げた。
「‥‥ミハシラ?」
あれ、通じなかったか。確か、2か月ほど前に通り過ぎた町で、かの地がそのように呼ばれているのだと聞いたのだが。だが、きょとんとしたのは聞き覚えがないせいではなさそうだと、次の言葉で知れた。
「それって、赤い光の柱のことだよね?方向違わない?」
それともマナファナって方向音痴?と、馬鹿にしたようなことを至極真面目に訊かれた。
「あんなものがいくつもあってたまるか」
それは、赤い空を凝縮したような赤黒い光。御、と付くのは決してありがたいからではない、恐ろしいからなのだ。忌まわしいものさえ神に見立てることができる、滅んだ民族らしい名称だった。
「‥‥あの場所にはおいそれと近づけないんだ。特に女は」
だから回り込むしかないのだと、マナファナは母から、母は祖母から、聞いている。
とはいえ結局祖母も母も、目的を果たしたことがないのだからどこまで本当かは分からないが。
「‥‥特に何もなかったように思うけど」
首を傾げながら言うソノリアに、マナファナは反応して顔を向けた。
「‥‥行ったことがあるのか?」
「地元だし」
これは‥‥運が良いのだろうか?
「‥‥何も、なかったのか」
今あの場所がどうなっているのか、マナファナはまるで知らない。ただ、こうあるべきということは知っていて、それによれば何もないということはないはずなのだが。
「赤い光の柱なんてなかったよ」
「あぁ‥‥それはいいんだ。そうじゃなくて、‥‥」
だってあの光は、崩壊のあの日の一時しか発生しなかった。それでも不吉な感覚だけは生き残った人々に刻みつけた、それからあの場所は禁足地になったのだと聞いた。というより、光の柱があれから立ったままだったとしたら、多分祖母は迷わなかっただろう。方向音痴は祖母だったが、それでも、どこからでも見られる目印があればいくらなんでも迷わなかっただろう。
そうしたらこんなに時間はかからなかった。
「て言っても、大体あの辺、って言われて見ただけだし」
ただ荒野だったよ、とソノリアは言った。




