4.
お前は何者だと問われたら、何と答えるべきだろう。
マナファナ自身は、目的を果たすために旅をしている。けれどもそれを問われたときに、無邪気に答えられるような目的ではない。
「何だろう、武者修行しているんだから、武人なのかなぁ」
焚火の向こうで、のんびりとソノリアが答える。
思わず口をついた問いだった。訊いてから、問い返されたら自分はどう答えるのだろうと考えてしまい、だから反応が遅れた。
「‥‥むしゃしゅぎょう?」
武人?こんな、生物学的に女であるマナファナよりも余程可愛らしい形をして、武人?
まじまじと見つめていると、恥じらうように赤くなったが、だからそれを見ていると同年代か年下の同性を相手にしているようにしか感じられないんですけど。なんだかむっとした。
「武人だよ、これでも」
ほら。
簡単に言いながら、ソノリアは2本の剣を取り出した。
「‥‥そのひらひら、もしかしてそのためか?」
確かに、その動作は綺麗なもので、まったく無駄がなかった。剣を奪える気がしない。鞘に納まっているのにも関わらず、そしてまた殺気などないにも関わらず、ひやりとした。彼は確かに職業的に武器を振う人間なのだろう。そしてまた、おそらくは人の命を奪ったこともあるのだろう。それが感じられて、けれど身の危険はまるで感じなくて、マナファナは混乱した。
「そうだよ。
師匠が変な人でねぇ。暗殺剣の神髄は気取られないことだ、何て言って。お前は女顔だから似合うだろうとか、真顔で言うんだよ」
「あんさつけん」
なんだかソノリアのそのふわふわした雰囲気からは程遠い単語が出てきた気がする。
「うん」
あっさりと頷いて、ソノリアは剣を仕舞った。どこにどのように仕舞ったのかは分からなかった。それほど自然で素早かった。そして慣れていた。
「暗殺者になる気はないけどね。たまたま、師匠がそれしか知らなかったものだから」
それはそんなに簡単に口にすることなのだろうか。
困惑して、けれど嫌悪感はなかった。そんな己にさらに困惑する。思えばそれは彼自身に対してもずっとそうだった。まるで懐くような好意は、不思議だし困ってしまうのだけれど、決して嫌ではないのだった。
そんな己が一番不思議だ。マナファナは、まるで初めて出会うかのように、ソノリアの笑顔をまじまじと見つめた。




