↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤の空  作者: 岩
旅の道連れ
5/53

3.

 世界は一度滅びた。


 空が血のように赤く染まり、地震や雷やその他諸々のすべての厄災が降りそそいだ。


 息の詰まるひと月のあと、地面が割れた。何か常識を超えた力でもって、深い崖がすべての町、人の集まっていた場所に生まれた。最上級の地震のあと、人々を飲み込んで閉じた。


 残された人々が気付いたとき、世界は静かだった。空はいつまでも赤かったから、もしかしたら本当はまだ、滅亡への道の上にいるのかもしれない。


 長い時間をかけて残された人々は少しずつ集まった。いくつかの町がもう一度世界に生まれた。


 そして、あれから百と数年。今は4代目の支える世界である。



 ぱちぱちと、音をたてて火ははぜた。


 一度滅びた世界は、魔物のものなのか。百数年前のあの頃には、害なすものも益もたらすものも、ほとんどいなかった。やがて安定してくるうちに、いわゆる魔物と呼ばれる異形が現れはじめた。


 彼らは人の恐怖であった。立ち向かうすべはない。身を守るには肩を寄せ合い町の壁に隠れるか、こうして火を絶やさないことしかない。


 マナファナは火を見つめていた。彼女には、この安心感が不安だった。火の向こうから、ソノリアが馬鹿みたいに無邪気に笑いかけてくる。


「‥‥お前‥‥」


 呆れて、それから気を取り直す。


 結局ソノリアはついてきてしまった。その意味を彼は分かっているのか。町の中だって安全だとは言いがたいが、それでもこの外の危険は比べ物にならない。


「大丈夫だよ。だいたい、僕でなかったら誰が君を守るのさ?」


「‥‥自分の身だけなら自分で守れる。私だって、こんな所で死ぬ気はない」


 どうやら気付かないうちに目で問いかけていたらしかった。


「こんなところって。もしかして、どこか他の場所でなら死ぬ気とか?」


 にこにこと笑う、その目が笑っていないことに気付く。この男は。


 思わず身構えた。


「‥‥お前は‥‥」


 可愛い顔をしながら、無邪気な顔をしながら、この男は油断がならない。それは分かっていたつもりだったのだが。


「別に、今はそれでもいいんだけどね。やめてよ?せっかく出会えたのに。君を失うのは、僕、やだからね」


「‥‥何故、私なんだ‥‥?」


 無邪気なのか、すべてを知っているのか、素直なのか、心を隠しているのか。いまいち分からない。真顔でそういうセリフを吐けるあたりも信用ならない。それなのに、向ける気持ちが強いことは分かる。居心地は悪いが気持ちは温かい。


「やった!僕のこと気にしはじめたね?」


「‥・・知的好奇心だ」


「まったまた。照れなくてもいいんだよ?」


 なぜか、ホっとした。得体の知れなさが少しやわらいだ。


「‥‥お前は少しは恥らえ」


 変な奴だ。と思う。嫌いではないが、よく分からない。


 確かに今の時代、人口は絶対的に少ない。特になぜか女性は、嫌になるほど少ない。だから出会えた幸運から、ソノリアがつきまとうのも分からないでもなかった。けれど、彼はそういった生物学的打算とは無縁なように思われるのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。