2.
「それで、どこを目指してるの?」
マナファナは少しだけ目を向けた。頬杖を突きながらスパゲティを口に運んでいる姿は、年齢よりも幼く、マナファナのそれよりも女の子らしい。
「‥‥お前には関係ない」
サンドイッチを口に運ぶ。
「やぁだねもう。僕が君について行くと決めたんだから。関係なくはないでしょ?」
きゃらきゃらと笑う。
マナファナはこれ見よがしにため息をついた。初めて会った、一週間前からこの調子なのだ。
「‥‥それじゃあ勝手にしてろ。私も勝手にする。‥‥勝手にしてる」
もそもそと咀嚼する。あまり美味くはない。
「‥‥ふうん?」
ちょ、と首を傾ける。本気で可愛らしい仕草に、何だか情なくて泣きたくなった。
ふと、マナファナは自分の姿と目の前にいる彼の姿を比べてみた。少女みたいな顔立ちで、確かにどう見ても少女みたいな行動をするソノリア。彼はその服装も、やたらひらひらしていてスカートのように見える。よく見れば違うことが分かるが、よく見なければ気付かない。そして、自分。無愛想だという、自覚はある。旅に出ることに決めたこと、その出発にいきなり襲われかけたから、わざと女らしさは消した。だから本当に、彼の行動は理解できない。
「‥‥」
思わず渋面になる。
「‥‥お前、どうしてそんなに‥‥」
外界と比べれば安全な町の中で、精一杯着飾って笑う女性たちを見ていて、うらやましくなかったといえば嘘になる。
「何?」
「‥‥いや、なんでもない‥‥」
ふと見ると彼はすでに食事を終えていた。慌てて、食事に専念することにする。だいたいそんなことを訊いて自分はどうしたいのか。
自嘲したいがそれもやめて、口を動かすことに集中する。
ソノリアはそれをしばらく見ていたが、やがて立ち上がった。そして、なぜか頭に巻いていたバンダナを外す。男にしては長いが、その程度の猫っ毛が、ふわりと舞った。
(‥‥なんだ?)
よく分からない行動が気になりはしたが、目の前にはあと一個のサンドイッチ。
「‥‥マナファナ、これあげるね」
(‥‥なんで?)
手際よくバンダナをひねりながら、ソノリアはマナファナの後ろに回る。無造作にまとめた彼女の髪、その髪留めに巻きつけて、満足そうに頷いた。
「‥‥お前、何やってんの?」
水を飲み、ようやく一息ついたマナファナの前の席に座りなおし、ソノリアはまぶしいものでも見るように目を細めた。
「マナファナは、可愛いよ?」
一瞬何を言われたか分からずに目を瞬く。これは新手の『愛を育む』行動なのだろうか?
「‥‥は?」
「マナファナは、可愛い。本当は僕だけが知っていればよかったんだけどね」
ちょっと待てなんでそこでお前が照れるんだ。
からかわれた怒りだか恥ずかしいのか、さ、とマナファナの頬に朱がさす。ソノリアは笑う。笑いながら、慌てたように席を立つ。
「それあげるから」
逃げるように立ち去る後姿を見送って、マナファナは席に突っ伏した。
「な‥‥何なんだあいつは‥‥」
脱力した。わけが分からない。




