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赤の空  作者: 岩
旅の道連れ
3/53

1.

 ――。


 近付き来る者がいることを感じ取り、マナファナは静かに体を起こした。軽く伸びて、息を吐く。


 スキップの音が聞こえた。といってもとても下手なので、何かの行進のようにしか聞こえない。それに加えてこれまた調子外れの歌声が混じった。


「‥‥」


 おそろしく不機嫌な目で、マナファナはもうすぐに開けられるだろう扉を睨んだ。


 だだんっ。がちゃ。


「おっはよーう!」


 元気溌剌。


 答えるヒマのないノックなど無意味だと思うが。


 こちらが何を考えているのかはお構いなしで、扉を開けた小柄な人物が入ってくる。


「‥‥朝っぱらからやかましい‥‥」


 寝起きなのでかすれる声。それでなくてもマナファナは無愛想だ。


「おはよう!起きたね?それじゃぁ今日も元気に、愛を育もうか!」


 いつものことなので怒る気力も呆れる元気も失せて、マナファナはスリッパをはいてベッドから降りた。もう少し惰眠をむさぼりたくはあるのだが、それをやるとベッドの中にもぐりこんでくる。


「‥‥出ていけ」


 にこにこしながら座り込んだのを見て、マナファナは言う。


「なんで?」


「‥‥着替える。出ていけソノリア」


「いいじゃない別に。邪魔はしないよ?」


 だから気にせず、さぁ!


「‥‥」


 もう何も言うことをあきらめ、マナファナは小柄な、少女と見まごう外見をした青年を外に蹴り飛ばした。


「ひどいよマナファナ!」


「デリカシーなさすぎだ。殺すぞ」


「いいじゃないか君と僕の仲だろう?!」


「‥‥入ってきたら本気で殺す」


 言い捨て、素早くシャツを着る。何を言ってもあの男は、こりない。だから本気で来られる前に、素早い着替えばかりが身についている己に気付いて、深く深く息をついた。

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