1.
――。
近付き来る者がいることを感じ取り、マナファナは静かに体を起こした。軽く伸びて、息を吐く。
スキップの音が聞こえた。といってもとても下手なので、何かの行進のようにしか聞こえない。それに加えてこれまた調子外れの歌声が混じった。
「‥‥」
おそろしく不機嫌な目で、マナファナはもうすぐに開けられるだろう扉を睨んだ。
だだんっ。がちゃ。
「おっはよーう!」
元気溌剌。
答えるヒマのないノックなど無意味だと思うが。
こちらが何を考えているのかはお構いなしで、扉を開けた小柄な人物が入ってくる。
「‥‥朝っぱらからやかましい‥‥」
寝起きなのでかすれる声。それでなくてもマナファナは無愛想だ。
「おはよう!起きたね?それじゃぁ今日も元気に、愛を育もうか!」
いつものことなので怒る気力も呆れる元気も失せて、マナファナはスリッパをはいてベッドから降りた。もう少し惰眠をむさぼりたくはあるのだが、それをやるとベッドの中にもぐりこんでくる。
「‥‥出ていけ」
にこにこしながら座り込んだのを見て、マナファナは言う。
「なんで?」
「‥‥着替える。出ていけソノリア」
「いいじゃない別に。邪魔はしないよ?」
だから気にせず、さぁ!
「‥‥」
もう何も言うことをあきらめ、マナファナは小柄な、少女と見まごう外見をした青年を外に蹴り飛ばした。
「ひどいよマナファナ!」
「デリカシーなさすぎだ。殺すぞ」
「いいじゃないか君と僕の仲だろう?!」
「‥‥入ってきたら本気で殺す」
言い捨て、素早くシャツを着る。何を言ってもあの男は、こりない。だから本気で来られる前に、素早い着替えばかりが身についている己に気付いて、深く深く息をついた。




