11.
目を、閉じても分からないほどの暗闇だったはずなのに、崩れ落ちたマナファナの姿が見えた気がして、ソノリアは硬く目を閉じた。
止められなかった。止められるとは思っていなかった。止めたかったのは確かだけれど、仮に止められたとして、生き延びたマナファナはきっと己を許せないだろうと分かっていたから、止められるはずもなかった。
「‥‥マ、ナファナ‥‥」
なんて、強い目をしたひとだろうと思ったのだ。
ソノリアはそのまま、じっと目を閉じ丸く小さくしゃがみこんで泣いた。
マナファナから噴き出した血潮が棺の内壁に飛び散ったとき、ようやく棺はその本来の役割を果たし始めた。
血潮を吸収し、空へと還す。最初は噴き出たそれらを拾っていたのに、それでは足りないというように、マナファナだったものを分解し始めた。崩れ落ちて触れた先から肉体が崩れていくのを、マナファナは他人事のように感じていた。そして空へ立ち上った、今度は血の赤ではなく白い光の柱とともに、マナファナだったものは空へ還る。そして世界に降っていった。
きらりきらりと、光の粒が降る。
まるで雲が晴れて行くように、赤い空の色が薄れて行くのを、人々は信じられないものを見るように見上げていた。それがマナファナの生命なのだと知るひとはいないが、それが生命そのものであることは、なぜか誰もが知っていた。赤い空はそれも生命の色だったが、それを駆逐するのもやはり生命なのだと、誰に教えられなくても知っていた。
マナファナを分解して空に還した棺は、それ自体もともに薄れて消えて行った。そうなっても、ソノリアはうずくまっていた。
白い光の柱は最後の赤い空とともに消えた。
そして大地には、ソノリアだけが残された。
「‥‥ひどいよ‥‥」
できることなら今からでも死にたい。けれど彼女だったものは、それをきっと許しはしない。
「‥‥ひどいよ‥‥マナファナ‥‥
‥‥一緒にいたかったのに‥‥」
こうして残されても、彼女が望んだように幸せにはなれない。1人で生きていくのは辛い。この場所を離れることもできない。
彼女は風になってしまった。世界になってしまった。
この世界のどこに行っても、もう彼女には会えないのに。この世界のどこに行っても、彼女は見守ってくれるのに。




