10.
しばらくそうやって、暗闇の中、二人抱き合っていた。暖かい。微睡みたくもなるくらい、けれど、それは自分に許せない。終わらせるためにここに来たのだから、終わらせる。それだけは心に決めていた。
抱き合う腕から力を抜いて、多分正面から向き合った。多分、というのは、暗くてまるで見えないからだ。でもきっと、自分の顔のすぐ前で、彼は真剣にこちらを見ている。
「‥‥ソノリア」
呼びかける声が震えなかったことに、ちっぽけな矜持が満足した。
「‥‥うん」
応える声は硬かったが、それには申し訳ないと思ったけれど、この決意だけは翻せない。翻さない。それだけを求めてここまでやってきて、そしてこの棺に包まれているのだから。
「‥‥それじゃ、」
「マナファナ」
遮られてむっとしなかったと言えば嘘だけれど、このくらいは彼に許さないと駄目なのだろうな、と思った。思ったが、冷静に考えられたのはそこまでだった。
「マナファナ、好きだよ」
そして、唇に柔らかな感触が、
「‥‥え」
触れて離れた、何故そんなにはっきり位置が分かったのだ、あぁそうか、吐息が触れる距離、いや問題はそこではなくて、
マナファナは混乱したが、じわじわと胸の奥から湧いてくる感情があった。
「‥‥あ、え、あ、そうか、‥‥」
一度だけ。一瞬だけ。それなのに分かってしまった。
口角が緩む。頭に血が上ったけれどそれは嫌な感覚ではなくて、気恥ずかしいのだけれどどうせ暗闇だから構わないのかと思った。
「‥‥私もだ」
「‥‥え」
今度絶句したのはソノリアの方だった。言い出したのは彼のほうだし、触れたのも彼からだったというのに、うろたえる空気にマナファナは。
「私もお前が好きなんだ。だから、」
誰より愛おしいお前に、青い空を贈る。
マナファナは生まれて初めて心の底から微笑んで告げて、
左手に生まれた剣で喉首を掻き切った。




