6.
けれどそんなマナファナを、彼女はせせら笑った。
「わたしは知ってるわ。知ってるもの」
嘲笑するようなからかうような口調で、つぶさは言った。どこからどこまで狂っているのかマナファナにはもう分からなかった。
「世界は救われたがってなんかいない」
「‥‥」
「世界は何も言わないもの!ずっとずっと無言なの。言葉を吐くのは人間だけだもの。いつだってそう」
何故、それを今言う。
この感情は何だろう。この女性に対して、怒りのようなものを感じてもおかしくもないのに、哀れむような感情は。あるいは単に哀しい。
「そう言ったのはあなたなのに?」
「‥‥私が?」
「そうよ。志穂が言っていたもの。世界はただあるだけ、何も言わないし何もしない」
吐き捨てるようなのは、何故だろう。先ほど彼女は志穂が羨ましくて志穂に似ている自分を嫌いと言った。そのせいだろうか。マナファナは彼女を救いたいと思った、それは世界を救わなければならないと言う義務感とはまた少し違う、想いなのに。それが報われないのはつらいけれど、それよりも彼女自身が哀しいのだと思った。そして何より、彼女はマナファナを、シフォだと思っているのかそれとも違うと分かっているのか、それも曖昧で哀しかった。
「世界は救われたがってなんかいない。生きても死んでも変わらないのよ、それをずっと聞いていたの。わたしは」
救われたがってなどいないのは、本当に世界か?
「むしろただの物質に戻った方が楽だったかもしれない。そんな‥‥気もした。
でもそんなことわたしが思うわけないもの。きっとあれは世界の想い」
「‥‥」
彼女は矛盾に気付いているのだろうか。世界には言葉も感情もない、そう言ったばかりなのに。
「狂っているのは人間だけよ。世界は狂ったりしない。あんなもの、何の関係もないの。あれは人間の狂いよ、分かっているのでしょう?」
その言葉を聞いて、なにかが腑に落ちて、呆然と、する。まさか、本当に、それが真相なのだろうか。
「世界が裁いたのは分かっていた」
そう、あれは裁きで、あのひと月は執行猶予だった。そうだ。あの頃は、何も起こってはいなかった。ひとを襲うような怪異も何も、なかった。
「‥‥世界が、狂ったのは‥‥貴女の血をすすったせいか?」
それが本当だとしたら。その身を捧ぐためにこの場所まで歩いてきた、祖母も母もマナファナの人生も、無駄だったのだろうか?




