5.
「わたしは、‥‥」
つぶさの顔色が、さ、と変わった。
「分かっていたわ‥‥こうなることは分かっていたの!でも、後に残ったのは志穂だったわ、こんなに時間がかかるとは思わなかった‥‥!志穂なら許してくれると思っていたのよ!」
泣き叫ぶような。己の悲哀を嘆くような。そんな悲痛な声を。
マナファナは信じられない気持ちで、叫ぶ彼女を見つめていた。彼女はあまりにも儚く弱い、けれどとてもしたたかでもある。
「‥‥祖母さんは‥‥ずっとこの場所を探していたんだ‥‥」
「あらどうして?あの時志穂だって、ここにいたのに!」
次に女は狂ったように笑う。
呆然として、目が離せない。
(‥‥こんなのは、つぶさじゃない‥‥)
その思考が自分のものなのか、それとも少しだけ残ったシフォのものなのかはよく分からなかった。分かっていたと彼女は言った、それが本当なのかどうなのか、もはやマナファナには分からない。失敗すれば世界がこうなると、果たしてシフォは知っていたのだろうか。知らなかった、気がする。
「志穂だって逃げたのよ!わたしだけが悪いんじゃないわ!」
分からない。
祖母が何を考えていたのかは分からない。思考と記憶は残っても感情だけはいつだってマナファナのものだった。思い出せることは、ただ、少しの空白のあと旅立った、あの遠い町の風景、それだけ。
やがて哄笑を聞いていたソノリアが、首を振った。
「‥‥もぅいいよ」
あまりにも静かで優しかった。いつの間に己がしゃがみこんでいたのか分からなかった。ソノリアがその肩をなだめるように叩いて、1歩、前に出る。
「‥‥もぅいいよ。マナファナを、もぅ苦しめないで。まだ言うなら、僕が貴女を消したくなる‥‥」
(苦しい?)
温かいものを感じながら、自分は苦しめられているのだろうかと思った。違うような気がする、胸に手を当てる。
「――わたしはもぅ死なないわ!」
違う。苦しいのとも、死にたくなるほど辛いのとも、違う。助けてあげたいような気もする。
「‥‥貴女は何を望むんだ?」
「‥‥
わたしはずっと生きたかった!死んだようなわたしは嫌だった!同じようでもちゃんと生きていた志穂がうらやましかった。わたしが死んで志穂が生き残るのは嫌だったのよ!
あんたも、志穂と似ているから嫌い。大っ嫌い!だから、死んでほしいわ!」
「‥‥言われなくても。
だがそうじゃない。貴女は、貴女自身で何を望んだんだ?」
マナファナは、つぶさを、この100年前の祖母の友人を、救いたいと思ったのだった。




