6.
そのタイミングを見計らったかのように湧き出した泥人形たちに、世界の悪意を感じるなとマナファナは思った。思ってから顔をしかめる。世界に悪意も善意もあるものか。世界はただただ自動的だ。受動的でそこに意志などない、はずだ。
「‥‥懲りないな」
しゃがみこんだままマナファナも左手の剣を構えるが、それよりソノリアが疾るほうが余程速くて正確だった。またあの、慣れない、ひやりとする目をしているのが分かった。分かったが、彼が見せるのは背中ばかりだ。温度のない目が、マナファナに向けられることは決してない。何故だろう、こんなに信じてしまうのは。
ものの5分と立たず、湧き出したものたちはすべて空気に解けた。
振り返ったソノリアは、一瞬だけは冷たさを纏っていたけれど、すぐに慣れた立ち姿に戻ってくれた。それにほっと息をついて、立ち上がる。いつの間にこんなに弱くなっていたのだろう。守られている、それを当然と思うような自分ではなかったはずなのに。
「‥‥行くの?マナファナ」
応えず、じっとソノリアを見る。戸惑ったように見返す彼の姿に、どうしてか羞恥を覚えて、始めたのと同じような唐突さと身勝手さで目を逸らせた。
「‥‥行くよ」
「‥‥そうだね」
不審な挙動に疑問を覚えただろうに、特にそれを口に出すことなく、ソノリアは町を背にするマナファナの隣に立った。同じ方向を見ている、そこにあるのは相変わらずの荒野だけれど、目的の地が近いことは、よくよく感じられた。
怖いのだ。
そこにあるべきものを、マナファナはよく知っている。
かつてシフォの目でそれを見て、結局背を向けて逃げ出してから、一度も見ることのできなかったその場所へ、マナファナは還ろうとしている。
「‥‥行くさ」
果たさなければならなかった約束を、果たすために、足を踏み出した。
怖いほど真剣な眼で、その横顔をソノリアが見つめていたことには、気付かないことにした。
ソノリアが無暗に強すぎて、マナファナが傷つかなくて話にならない‥‥




