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赤の空  作者: 岩
旅の終点
40/53

7.

 棺があった。



 その黒い棺は、確かに荒野の真ん中に生えていた。直方体のその形が、何故生きてるように思えたかは分からない。けれど、確かに生きていた。


 待っていた。


「‥‥100年‥‥」


 その重さに、はじめて気付く。気付いた瞬間、自分がとてつもない大罪を犯したことが分かった。世界に憎まれるわけだ。祖母から脈々と受け継がれたものは、記憶と剣だけでなく、この罪でもあったのだ。


「‥‥行か、なきゃ‥‥」


 待っていた。あの棺へ向かい、中へ入って、この身も血も心臓も、すべてをさらけ出さなければならない。自分を構成するすべてを世界の前にさらさなければ。早く、早く早く。


 ふらり、と前に出かけて、右手の先に重みを感じた。


「‥‥」


 無言で、何か言いた気に、けれど無言で自分を見つめる少女。いや、少年。本当は青年とも言えるか言えないかくらいの――


「‥‥ソノリア‥‥」


 その名を口にして、その目が自分を責めていないことに気付いて、一気に身が軽くなった。


「‥‥マナファナは、罪人じゃない。だから、自分の意思で決めて、来たんでしょ。自分で、自分の気持ちで」


「‥‥うん。分かっ‥‥た」


 そうだ。世界が自分を憎むから。そして待たせた時間の大きさを感じたから。


 だからと言って、衝動的に死んではいけない。救うために来たのであって、罪滅ぼしのためではない。自分で、自分の意思で、罪を背負ったままこの身をささげよう、と。


 いつの間にかつめていた息を吐いた。握り締めていた両手をほどく。彼の手が赤くなってしまっていた。


「‥‥ごめん。流されるところだった。ありがとう」


 ソノリアは傷ついたように笑い、首を振る。


「‥‥いいんだ。僕が好きなマナファナを、戻したかっただけだから」


 強くあれ。


 気持ちを強く持て。


 もう一度心の中でかみ締め、マナファナは前を見た。


「‥‥行こう。私が行くと決めた場所へ」


 それが責任ではなく、義務だから。望むところだ。そのはずだ。

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