7.
棺があった。
その黒い棺は、確かに荒野の真ん中に生えていた。直方体のその形が、何故生きてるように思えたかは分からない。けれど、確かに生きていた。
待っていた。
「‥‥100年‥‥」
その重さに、はじめて気付く。気付いた瞬間、自分がとてつもない大罪を犯したことが分かった。世界に憎まれるわけだ。祖母から脈々と受け継がれたものは、記憶と剣だけでなく、この罪でもあったのだ。
「‥‥行か、なきゃ‥‥」
待っていた。あの棺へ向かい、中へ入って、この身も血も心臓も、すべてをさらけ出さなければならない。自分を構成するすべてを世界の前にさらさなければ。早く、早く早く。
ふらり、と前に出かけて、右手の先に重みを感じた。
「‥‥」
無言で、何か言いた気に、けれど無言で自分を見つめる少女。いや、少年。本当は青年とも言えるか言えないかくらいの――
「‥‥ソノリア‥‥」
その名を口にして、その目が自分を責めていないことに気付いて、一気に身が軽くなった。
「‥‥マナファナは、罪人じゃない。だから、自分の意思で決めて、来たんでしょ。自分で、自分の気持ちで」
「‥‥うん。分かっ‥‥た」
そうだ。世界が自分を憎むから。そして待たせた時間の大きさを感じたから。
だからと言って、衝動的に死んではいけない。救うために来たのであって、罪滅ぼしのためではない。自分で、自分の意思で、罪を背負ったままこの身をささげよう、と。
いつの間にかつめていた息を吐いた。握り締めていた両手をほどく。彼の手が赤くなってしまっていた。
「‥‥ごめん。流されるところだった。ありがとう」
ソノリアは傷ついたように笑い、首を振る。
「‥‥いいんだ。僕が好きなマナファナを、戻したかっただけだから」
強くあれ。
気持ちを強く持て。
もう一度心の中でかみ締め、マナファナは前を見た。
「‥‥行こう。私が行くと決めた場所へ」
それが責任ではなく、義務だから。望むところだ。そのはずだ。




