3.
――世界は終わるのかもしれない。
――お前は強くなっただろうか。
そう、師匠の手紙は語りかけた。
昨日の雨に濡れて、紙はすでによれていて、けれど捨てられなかったその手紙を、マナファナに見せるつもりなど欠片もなかった。
それならどうして、無人の町を後にするときになって、ここが故郷だったと告げてしまったのだろうか。無人の町は彼女を傷つけていて、そんなことは分かっていたのに、何故。
――世界は終わるのかもしれない。
――お前は強くなっただろうか。
――少なくともこの町は終わるのだろうな。
――誰も彼もが覇気をなくした。私もよく分からなくなった、何故終わってはならないのか、ここのところよく考える。
師匠自身の癖のある文字で語られる言葉には、けれど違和感があった。
何故終わってはならないのか、そんなことを考えるひとではなかった。
――町を守るのは壁ではなく炎。
――炎を守るのは守役の努力。
――誰も彼もが覇気をなくした。最後の守役はお前の兄だった。
――最初に消えたのは彼だった。
現代はどの町も、ぐるりを囲む壁に絶やさない炎が燃えているものだ。そういえば辿り着いたとき、夕闇に沈んでいたなと手紙を読んで初めて気付いた。雨の日だろうが風が強かろうが、その炎が絶えることはない。そのために見回る人間が必ずいるもので、その役割はつまり町の全員を守ることだから、誇りを持って続けられるはずだった。
――世界は終わるのだろうか。
――そう漠然と思うたびにお前の道行きに想いを馳せる。
――お前は強くなっただろうか。
――この町は間もなく終わるが、最後の弟子がお前でよかった。
あぁ、師匠。できればその言葉は、貴方の口から聞きたかった。
「もう、ミハシラは近いよ」
囀るように軽く告げられたはずだったのに、目の前でマナファナは泣きそうに顔を歪めた。ソノリア自身は、つらいのかどうか正直よく分からなかった。昨晩は心が弱って思わず縋ってしまったのだけれど、今もつらいのかと訊かれればそれはどうだろうと思う。
「行くんでしょ、マナファナ」
「‥‥。あぁ‥‥」
マナファナの背中を守ろう、と、何度でもソノリアは心に決めた。




