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赤の空  作者: 岩
旅の終点
36/53

3.

――世界は終わるのかもしれない。

――お前は強くなっただろうか。



 そう、師匠の手紙は語りかけた。


 昨日の雨に濡れて、紙はすでによれていて、けれど捨てられなかったその手紙を、マナファナに見せるつもりなど欠片もなかった。

それならどうして、無人の町を後にするときになって、ここが故郷だったと告げてしまったのだろうか。無人の町は彼女を傷つけていて、そんなことは分かっていたのに、何故。



――世界は終わるのかもしれない。

――お前は強くなっただろうか。

――少なくともこの町は終わるのだろうな。

――誰も彼もが覇気をなくした。私もよく分からなくなった、何故終わってはならないのか、ここのところよく考える。


 師匠自身の癖のある文字で語られる言葉には、けれど違和感があった。


 何故終わってはならないのか、そんなことを考えるひとではなかった。



――町を守るのは壁ではなく炎。

――炎を守るのは守役の努力。

――誰も彼もが覇気をなくした。最後の守役はお前の兄だった。

――最初に消えたのは彼だった。



 現代はどの町も、ぐるりを囲む壁に絶やさない炎が燃えているものだ。そういえば辿り着いたとき、夕闇に沈んでいたなと手紙を読んで初めて気付いた。雨の日だろうが風が強かろうが、その炎が絶えることはない。そのために見回る人間が必ずいるもので、その役割はつまり町の全員を守ることだから、誇りを持って続けられるはずだった。



――世界は終わるのだろうか。

――そう漠然と思うたびにお前の道行きに想いを馳せる。

――お前は強くなっただろうか。

――この町は間もなく終わるが、最後の弟子がお前でよかった。



 あぁ、師匠。できればその言葉は、貴方の口から聞きたかった。




「もう、ミハシラは近いよ」


 囀るように軽く告げられたはずだったのに、目の前でマナファナは泣きそうに顔を歪めた。ソノリア自身は、つらいのかどうか正直よく分からなかった。昨晩は心が弱って思わず縋ってしまったのだけれど、今もつらいのかと訊かれればそれはどうだろうと思う。


「行くんでしょ、マナファナ」


「‥‥。あぁ‥‥」


 マナファナの背中を守ろう、と、何度でもソノリアは心に決めた。

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