2.
歩きながら封書を開いた。やはり手紙は2枚あった。濡れるのも構わず、たたまれていた紙を開いて、ソノリアは苦笑した。
「‥‥あいっかわらずひどい字だねーまったく」
そういえば師匠はものすごい癖のある字を書くのだった。初めて見たときには別の大陸の言葉だと信じたくらいだ、数年ぶりに見ると読みにくいことこの上ない。
「‥‥本当暗号みたいだよね」
それでもかつては一番身近で親しんだ癖字だ。懐かしくなって、それでも内容はなんとなく嬉しいものではないだろうと感じながら、師匠の残した言葉を聞く。苦笑はすぐに消えた。
飾り気なく、ただ淡々と簡潔に、それはこの町の状況を伝えていた。
ふわり、と後ろから抱きこまれて、少し意識を飛ばしていたマナファナは目を覚ました。
「‥‥何の真似だ」
気付かなかったのが悔しい。
そういえばソノリアは、わざと音を立てなければとても静かに動く。暗殺をするかどうかはともかく、そういう静かな剣技を学んだのだろう。
「えー。たまにはいいじゃない少しくらい」
振り返って一瞬見えたその笑顔が、いつもより弱って見えたので、マナファナは振りほどくのをやめた。別に苦しくないし嫌でもない。しかし妙に恥ずかしい。
「あったかいねー」
「‥‥外に出ていたのか?」
すり寄るひらひらは少し湿っていた。いつもふわふわしている髪も、ちょっと大人しい。
マナファナは抱えていた膝をほどいて荷物を手繰り寄せると、布を取り出してソノリアの頭にかぶせた。そうして水分を取っていく間もソノリアは離れなかったので、マナファナの服も少し水を吸った。
まぁ、暖炉の前だしすぐに乾くだろう。と、実に不精なことを考えながらも手は休めない。
いつになく穏やかな時間が過ぎて行った。
マナファナは無言だった。ソノリアも何も言わない、ただ寄り添っているだけだ。
(‥‥そういえば、いつの間にこんなに気を許すようになったんだろうな)
ふと思い、少しおかしくなってマナファナは唇を歪めた。




