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赤の空  作者: 岩
100年の旅
30/53

7.

 翌朝も早くから起き出して、乾燥食料と塩のスープだけの朝食を済ませた。焚火は絶やさないようにしていたが、準備ができたところで火を消した。そして膨れ上がる、世界の意志。


「‥‥ずいぶんと堪え性がないな」


 盛大に舌打ちして、マナファナは左手の剣を構えた。ソノリアも双剣こそ構えないものの、いつでもそれを出せるように体勢を低くした。出さないのは、彼の剣技が居合に似ているからだった。初手は鞘からが速い。


 そして生まれたものは。


(やっぱりか‥‥)


 嫌な予感はしていた。


 マナファナは剣を構え、後ろにいるソノリアの背を温かく感じながら、周りを静かに見回した。


 それは、ひとの形に似ていた。四肢があり、その内2本で身体を支えて、腕に当たる2本が握っているものは、多分、それは凶器だろう。感覚器官は必要ないからか、目鼻は見当たらないが、顔に当たる部分に横に裂け目が走り、そしてそれが開いた。


「――早ク。早く。助ケなさイ。世界ヲ助けナさイ。早く。早ク。死ニなサイ」


 泥人形が言葉を発した。そんなことは初めてだった。


「死にナサい。世界ノたメに」


 狂ったように、同じ調子で、何体もの泥人形がざわめく。


「助けられたいのはお前らだろう‥‥」


 怒りをこめて呟く彼の声に、マナファナはおびえた。それは、そうだ。そして責任は彼女たちにあるのだ。


 それでも。


「違う。私は――シフォは、そんな約束をしたんじゃない」


 違ってきてしまっていたのは分かっていた。魔のものが生まれてしまった時点でおかしいとは分かっていた。


「死にナさい」


「――ここで死んでも意味がない!」


 もう半ば悲鳴に近かった。


「違うだろう?!ここで死ねば無駄死にだ!そして母さんもお前らが、無意味に殺した!救えと言うなら救おう、けれど今は違うだろう!!」


 世界を救えと言いながら、ここでマナファナの死を望むのは、それは致命的な間違いだと、なぜ世界は忘れてしまったのだろう。マナファナの目から涙が溢れた。こうまで狂わせてしまったことが、あぁ、それすら己らの罪だと思うから。


「私の死に場所はここではないだろう!!」

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