7.
翌朝も早くから起き出して、乾燥食料と塩のスープだけの朝食を済ませた。焚火は絶やさないようにしていたが、準備ができたところで火を消した。そして膨れ上がる、世界の意志。
「‥‥ずいぶんと堪え性がないな」
盛大に舌打ちして、マナファナは左手の剣を構えた。ソノリアも双剣こそ構えないものの、いつでもそれを出せるように体勢を低くした。出さないのは、彼の剣技が居合に似ているからだった。初手は鞘からが速い。
そして生まれたものは。
(やっぱりか‥‥)
嫌な予感はしていた。
マナファナは剣を構え、後ろにいるソノリアの背を温かく感じながら、周りを静かに見回した。
それは、ひとの形に似ていた。四肢があり、その内2本で身体を支えて、腕に当たる2本が握っているものは、多分、それは凶器だろう。感覚器官は必要ないからか、目鼻は見当たらないが、顔に当たる部分に横に裂け目が走り、そしてそれが開いた。
「――早ク。早く。助ケなさイ。世界ヲ助けナさイ。早く。早ク。死ニなサイ」
泥人形が言葉を発した。そんなことは初めてだった。
「死にナサい。世界ノたメに」
狂ったように、同じ調子で、何体もの泥人形がざわめく。
「助けられたいのはお前らだろう‥‥」
怒りをこめて呟く彼の声に、マナファナはおびえた。それは、そうだ。そして責任は彼女たちにあるのだ。
それでも。
「違う。私は――シフォは、そんな約束をしたんじゃない」
違ってきてしまっていたのは分かっていた。魔のものが生まれてしまった時点でおかしいとは分かっていた。
「死にナさい」
「――ここで死んでも意味がない!」
もう半ば悲鳴に近かった。
「違うだろう?!ここで死ねば無駄死にだ!そして母さんもお前らが、無意味に殺した!救えと言うなら救おう、けれど今は違うだろう!!」
世界を救えと言いながら、ここでマナファナの死を望むのは、それは致命的な間違いだと、なぜ世界は忘れてしまったのだろう。マナファナの目から涙が溢れた。こうまで狂わせてしまったことが、あぁ、それすら己らの罪だと思うから。
「私の死に場所はここではないだろう!!」




